真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ホテトル嬢 癒しの手ほどき」(2006/製作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:小松公典/撮影監督:創優和/助監督:山口大輔/編集:フィルムクラフト/録音:シネキャビン/監督助手:絹張寛征/撮影助手:柴田潤/照明助手:宮永昭典/音楽:菅原ようこ・與語一平/スチール:佐藤初太郎/現像:東映ラボテック/協力:加藤映像工房・K.H.Y/出演:青山えりな・今野由愛・倖田李梨・萌みゅう・佐倉萌・柳之内たくま・サーモン鮭山・吉岡睦雄・松浦祐也・吉田祐健)。製作が、これまでの小川企画プロダクションではない、竹洞哲也は自前の製作プロダクションを立ち上げたのか。因みに東京での封切りは一月三十一日、正月映画といふ訳でもないのであらうが、その割には俳優部が頭数から妙に豪華だ。
 くどいやうだが、2005年の三作は全て惨敗の三連敗の竹洞哲也。掲示板にても軽く触れたが、PG誌主催によるピンク映画ベスト10の監督賞受賞は何の冗談か。ともあれ、続く今作に関しては、幾分以上に持ち直した。
 コスプレとストーリープレイが売りの、熱海のデリヘル「竜宮城」。ラブホでは、常連客の赤木修司(吉田)とナンバーワンの亜希、こと源氏名ヒラメ(今野)が理科教室の先生プレイの真最中。インポの赤木は、傲慢な亜希の接客態度に腹を立て、苦情の電話を入れる。店長の山内旭(サーモン)は仕方ないなとばかりに、ちやうど面接を受けに来てゐた、東京から流れて来た訳アリ風情の田野中美空(青山)に急遽トビウオといふ源氏名をつけ、赤木の下に向かはせる。明るく人当たりの好い美空は赤木に暖かく接し、赤木はインポを克服する。
 最初にハッキリいつてのけるが、脚本は全く纏まらない。美空は、みるみるナンバーワンの座に上り詰める。一方東京では終にナンバーワンになれずに熱海に都落ちした亜希は、美空に激しいジェラシーを燃やす。
 吉岡睦雄は「竜宮城」の―但し事務所の表には「竜ノ巣」とある―従業員・三島順平、三次の女には性欲を抱けないオタク青年。倖田李梨は、源氏名・アワビの小百合。占ひ狂で、竜宮城の待機部屋にも訳の判らない神棚を拵へてゐる。占ひで男を選んでは裏切られ、運気回復にはこれがイチバン♪とか山内の男根を貪る。ここに中盤、唐突に更に新人の玲奈(源氏名・ハニー/演:萌みゅう>凄い芸名だ)が絡んで来る。実施面接とばかりに、山内が玲奈を抱いてゐるところに出勤して来た小百合は山内の男根は私のモノだと、玲奈と争ふ。
 美空の訳アリとは一体何なのか?脱がない佐倉萌は、熱海で小料理屋だかスナックを営む、美空の母親・桃子。美空は不意に桃子を訪問し、久方振りの再会を果たす。ある日美空が客の下に出向くと、客は東京で美空がヘルス嬢をしてゐた頃の、店の呼び込み・詫助(松浦)であつた。
 斯様にプロットは乱立し登場人物は徒に豪華なのだが、その何れもが消化不良のまゝ流れ過ぎ去つてしまふ。例へば脇役とはいへ亜希も美空に対する劣等感を克服しつつ、亜希なりに成長を遂げて行く、といつた娯楽映画的な常道が、一瞥だにされるでない。要は一幕限りの単なる濡れ場要員に過ぎない、といふかですら殆どない詫助が、一々美空の過去を知る人物である理由も薄い。
 中盤までの登場人物を全て投げ出しておいて、不意に客として登場して来た詐欺師の遠藤勝(柳之内)と、美空は出し抜けに懇ろになる。二人で天気のポカポカと好い日に、熱海をプラプラとデート。例によつて騙すだの騙されないだのと、埒の明かぬ遣り取りをグダグダ交してゐる内に美空は腹を決める。次の日、美空が“訳アリ”に蹴りをつけに行くのがフィニッシュである。
 繰り返しになるが亜希と美空の相克―亜希からの一方通行ではあるが―は、亜希がヤケクソ気味に順平を強チンするところまで。殆どギャグ担当の小百合はまあこんなものでもいいとして、玲奈も玲奈で一幕限りのヒット・アンド・アウェイで殆ど無駄に登場して来る。松浦祐也のぞんざいな起用法は矢張り勿体なく、結婚詐欺師だとかいふ遠藤にしても、キャラクター造型としては本人の口から台詞でそれと語られるだけ。物語の鍵を握らされる筈のキャラクターの割には、要はやつてゐることはといへば、ブラブラしてグダグダするばかり。
 等々言ひ募つてみると、また今回も始末に終へぬ失敗作であつたかのやうにも思へても来るが、今回映画を救つたのは、青山えりなの輝く魅力はダメ男の鼻の下を伸ばした目線といふ次第でさて措くとして、本来ならば個人的には嫌ひな役者でもあつたのだが、「竜宮城」店長・山内役のサーモン鮭山。相手を突き放しながらも最終的には温かく見守る、といふキャラクターが形になつてゐる。雨の降りさうなラスト、(ネタバレにつき伏字)<預けてあつた息子を迎へに行く>腹を固めた美空に、<子供用の傘>をほらよ訳アリと無造作に手渡すシーンは綺麗に決まる。
 美空と遠藤との店外デート―デリヘルで“店外”とはいはないのか?―の件、要は自然光そのまんま撮つてゐるだけでもあれ、天候に恵まれキラキラと輝く熱海の風情が、美しくフィルムに刻み込まれてある。これは私の感傷的な気の所為か、ここ(福岡オークラ)で観る映画が、最も美しく見えるやうな気がする。二人の遣り取りに中身はてんでなくどうでもいいのだが、美しい画面をつらつらと眺めてゐるだけで、ウットリと幸せな気分になれる。それもまた、今作を救つてゐようか。


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