真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「痴漢電車 いぢわるな視線」(1999/製作・配給:大蔵映画/監督:渡邊元嗣/脚本:五代暁子/撮影:清水正二/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:佐藤吏/監督助手:田中康文/撮影助手:岡宮裕/照明助手:小田求/スチール:津田一郎/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:黒田誌織・西藤尚・しのざきさとみ・新崎貢治・やまきよ・十日市秀悦)。
 林の中から制服姿の黒田詩織がプラップラ出て来るけれど、感動的に女子高生には見えない。佐伯明衣(下の名前の読みはメイ/黒田詩織)が幼馴染の太田か大田和巳(新崎)にポップにオーイすると、劇伴起動して初めてのデート。適当にキャッキャウフフする二人に、明衣に横恋慕する体育教師の胡桃沢健二(十日市)と、そんな胡桃沢に岡惚れするこずえ(西藤)が穏やかでない視線を送る。ところで幾らポジショニング的な要請にしても、こずえのヴィジュアルがいはゆる瓶底メガネにマジックでそばかすを描いた、あんまりな造形。和巳がモジモジ告白しては、みたけれど。明衣は和巳が照れ隠しに石を蹴つた川の波紋と、口にした“可愛い”の単語に何故か過剰に反応して昏倒。送られた自宅の津田スタでも、プレゼントの中身が可愛いカタツムリのブローチ―実物蝸牛にリボンをつけただけの代物は、別にも何も全然可愛くはない―で、渦巻模様と“可愛い”の単語に止めを刺された明衣は、アイシャドウもバッキバキに直線的な淫語を乱打する淫乱女に変貌、を通り越して殆ど変身する。兎も角突入する―どうせ和巳も―初体験に、胡桃沢は笛の音で蛇を操り介入、煌びやかなまでの藪蛇ぶりにクラクラ来る。和巳のキンタマに噛みついた蛇を、明衣は引き千切つた電気コードの電流で引き離さうとする、また無茶な娘だ。となると当然、黒焦げアフロで煙を吹くところまで完遂する感電オチ。瓶底×そばかす、アイシャドウで淫乱女、藪蛇な蛇使ひ、そして何も足さなければ何も引かない感電オチ。チープ・ポップの権化たる渡邊元嗣こと我等がナベ怒涛の連打を前に、まだその陳腐の才もとい天賦の才を疑ふものがあるであらうか、いや、ない
 とも、かく。明衣が両親と渡米する出し抜けな別離の五年後、ウィンドウ・ディスプレイの職に就いた和巳と、何時の間にか単身帰国してゐた明衣が背中合はせで電車に揺られるものの、くたびれてるのか和巳は立つたまゝ居眠り。和巳の手荷物から飛び出すマネキンの指先が、器用に明衣の尻にちよつかい。その他乗客が提げるドリキャス―の渦巻―と、中吊り広告に躍る“かはいい”の単語に点火された明衣は、遂には弾みでマネキンの指も折るほど自ら腰を使ふ大ハッスル。降車際に漸く明衣の存在に気づいた和巳は、今は探偵に転職してゐた胡桃沢に明衣捜しを依頼する。
 配役残りしのざきさとみは、明衣に百合の花香らせる隣人・弥生。やまきよは徹頭徹尾明衣に電車痴漢を仕掛けるためにのみ出て来て用が済むと潔く捌ける、純然たる男優部濡れ場要員。その他、明衣を挟んで和巳と胡桃沢が巴戦を展開するところにこずえが介入するラストの痴漢電車に、佐藤吏がさりげなくでもなく見切れる。
 捜査官はまだしもチン機軸の海水浴と、全六作中の半分痴漢づく渡邊元嗣1999年第四作。恐怖の大王、何処吹く風。これてつきり、胡桃沢が車内で痴漢にうつゝを抜かしながら明衣を捜す、兄弟子・滝田洋二郎の黒田一平シリーズに渡邊元嗣が挑んだものかと、思ひきや。二番手の筈の西藤尚が最終盤に至つて漸く導入程度の電車痴漢を被弾するばかりで、脱がない横紙をさりげなく破りつつ、始終は如何にもこの時期のナベと面子から容易に予想し得る水準のグダグダしたコメディに終始。劇中ただ一点明確に弾ける、そこかしこでアコギを爪弾き倒す十日市秀悦によるオリジナル主題歌を完奏して漸く、今作が明衣ならぬ「メリーに首つたけ」のリメイクであつた驚愕の事実が発覚する。これ、途中で気づいた人どれだけゐたんだろ?

 最後まで聴かせないと趣向が成立しないゆゑか、タイトル・インは主題歌を完奏したオーラス中のオーラス。それでも、監督クレジットが出た辺りで、切つてしまふ小屋は容赦なく切つてゐたにさうゐない気もする。


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