真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「壺姫ソープ ぬる肌で裏責め」(2009/製作:加藤映像工房/提供:オーピー映画/監督:加藤義一/脚本:城定秀夫/原題:『うたかたの日々』/撮影監督:創優和/編集:有馬潜/音楽:レインボーサウンド/録音:シネキャビン/助監督:永井卓爾/監督助手:江尻大/撮影助手:丸山秀人・平林真実・瀬名波尚太/スチール:佐藤初太郎/音響効果:山田案山子/現像:東映ラボ・テック/漫画提供:駕籠真太郎/協力:竹洞♀哲也・小川隆史・大西裕・新居あゆみ・田辺悠樹・山口大輔・荏原妙子・伊藤一平・広瀬寛巳・田山雅也/出演:持田茜・津田篤・藍山みなみ・岡田智宏・合沢萌・THUNDER杉山・サーモン鮭山・なかみつせいじ⦅友情出演⦆)。出演者中、なかみつせいじのカメオ特記は本篇クレジットのみ。
 大学を五回生で中退したエロマンガ家の柳潤一(津田)は、同棲する現役女子大生の彼女・麻理子(藍山)の部屋にて、マンガを描いたり何もしなかつたりするモラトリアムな日々を過ごしてゐる。開巻は潤一が徹夜で一本描き上げた一方、世間並みの生活を送る麻理子の目覚まし時計が鳴る一幕から始まるのだが、些か原稿用紙が軽いやうに映るのは気の所為か、あるいはコピーであるのやも知れぬ。ところでそのマンガ原稿を実際に製作したのが、クレジットに漫画提供でキチンと名前も載る、奇想漫画家の駕籠真太郎。「義母の寝室 淫熟のよろめき」(2004/脚本:岡輝男/主演:須田静香)の挿入歌を担当したハードコア・パンク・バンド「猟奇ハンター」は、加藤義一自身が元々そのバンドのファンであつたといふし、加藤義一といふ人は穏当な作風に反してといふか何といふか、受け手としては中々尖つた感性の持ち主なのであらうか。もひとつところで、時に病的とさへ思へかねない目方の増減を仕出かす藍山みなみであるが、今回は麗しいほぼベスト・ウェイトを披露して下さる。
 麻理子は潤一の、生活者としての意識の希薄をしばしば難じ、家賃と生活費を入れるやう強く求める。だといふにも関らず、麻理子がバイトする喫茶店で打ち合はせた、エロマンガの芸術志向を強く排する編集者・原口(なかみつ)から受け取つたばかりの原稿料を、潤一はパチンコでスッた挙句に、七回生の先輩・藤木(岡田)から話を聞いた、駅前のソープランド「violence」で使ひ切つてしまふ。潤一はそこでユウカといふ源氏名のソープ嬢にして、筆卸も済ませて貰つた高校時代の彼女・三原知美(持田)と驚きの再会を果たしつつ、終に堪忍袋の尾を切らした、麻理子からは家を追ひ出される。ウイスキーを手土産に藤木の部屋を訪ねてはみたものの、折悪しく藤木は、ハクい彼女・裕子(合沢)と事の真最中であつた。真理子の部屋から持ち出した唯一の荷物であるマンガ原稿も未練もなく捨て、自棄酒をあふる潤一は「violence」表で出待ちした、今度は知美の部屋に転がり込む。
 足し算によるキャスティングを展開するTHUNDER杉山は、潤一と知美が通ふ高校のトップ(が)シークレット教師・内山。サーモン鮭山は、既婚者でありながらユウカの常連客。プレイ後、抜け毛の多さに愕然とするサーモン鮭山に対して、ユウカは禿げた男が好きであると励ます。
 2007年の「痴漢電車 びんかん指先案内人」(主演:荒川美姫・なかみつせいじ)と同様、脚本には加藤義一にとつて盟友といふべき城定秀夫を迎へた、且つともにPG誌主催による年度別ピンク映画ベストテン作品部門第一位を獲得した一作。その上で、「びんかん指先案内人」の際には特にさういふ感触を覚えはしなかつたが、今作に関して端的にいふならば、知美の口跡に殊に顕著な全体的にフワフワとした肌触りは、まるで加藤義一が城定秀夫を真似てゐるかのやうな印象を受けた。逆をいふなら加藤義一にしては地に足が着いてゐないといふいひ方も出来るのもあり、盗んだ内山の原チャリで二人辿り着いた過去と、心境に変化を生じた現在との二つの海辺の件に象徴される、オフ・ビートでナイーブな青春映画はいつそ、城定秀夫が自分で撮ればいゝのにとすらいつてのけるのは、流石に出鱈目に過ぎるとの誹りも免れ得まいか。かうではなく、加藤義一の真価はヒロインのファースト・カットに際し、電車の中だといふのに髪を風でそよがせてみせるやうなグルッと一周してアグレッシブなポップ・センスや、もつと泥臭くも誠実で、古めかしくもオーソドックスな娯楽映画にこそあるのではなからうか。面白いか詰まらないのかといへば迷ふことなく面白いのだが、同時に 2009年のピンク映画並びに、加藤義一にとつても代表する一本であるとは、当サイトは決して思はない。重ねて、空気の欠片も読まずに筆を無造作に滑らせてみせるが、「だつて城定秀夫は、ピンクは一本きりしか撮らなかつたぢやないか」といふのが、今この時点での最終的な城定秀夫評である。小さいのも通り越し尻の穴をクソで詰まらせたガキか、俺は。
 それもさて措き、潤一を麻理子の下に帰らせる段取り、といふ形で消極的にならば理解せぬでもないが、禿男が好きといふ属性以外に、知美が内山との元鞘に納まらうとするエモーションは、正直共有し難い。内山が、潤一も同席する上で呼ばれもしないのに知美の部屋を急襲した一種の修羅場に於ける、知美のリアクションを見た限りでは、二人の関係は完全に終了したやうにしか見えない。大体、<堕胎>も踏まへるならそれでは都合が良過ぎはしないか。ただやゝもすると三番手濡れ場要員に止(とど)まりかねなかつた裕子、と藤木先輩をも、オーラスに向けての潤一の背中を押す存在として再登板させる起用法の適確な論理性は、ピンク映画としても、青春物語的にも全く以て素晴らしい。

 その他劇中に見切れるのが、パチンコ店内潤一の隣で打つ、台詞もガンガン与へられる特徴的なイイ感じのハチマキ男が広瀬寛巳。麻理子バイト先の喫茶店のマスターと客が、誰だか判りさうな気もしたのだが、天珍のプロジェク太画質が芳しくなく判別までには至らず。
 付記< ex.DMMで確認してみると、茶店の店長は目を疑ふほど痩せてゐたEJD、客の方は矢張り判らん


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 愛液ドールズ... 人妻痴女 変... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。