真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「理容店の女房 夜這ひ床間」(2007/製作:サカエ企画/提供:Xces Film/監督:新田栄/脚本:岡輝男/撮影:千葉幸男/照明:高原賢一/編集:酒井正次/音楽:レインボーサウンド/助監督:小川隆史/監督助手:北村隆/撮影助手:池宮直弘/選曲効果:梅沢身知子/制作進行:阿佐ヶ谷兄弟舎/出演:瀬能司・平沢里菜子・風間今日子・本多菊次朗・丘尚輝・樹かず・津田篤)。
 夫婦で経営する理髪店、女房の星野夕子(瀬能)に髪を切つて貰ふと、運がツクといふ噂が広まつてゐた。噂は、実は夕子とは夜這ひの不倫関係にある、酒屋の岡本進也(本多)が広めたものだつた。主人の文夫(丘)がけふも女房を放たらかしにして夜釣りに出かけた隙に、岡本は夕子に夜這ひをかける。
 いはゆるエクセス不美人なのかさうでもないのかよく判らない、主演女優の瀬能司。プロジェク太の塩梅にもよるものなのかも知れないが、理髪店室内の明るい照明の下と、夜這ひシーンの抑へ目の照明の下ではまるで別人のやうに見える。抑へた照明の下では何故だか異様に色黒に見えて、冒頭の夢オチの夜這ひシーン、エラが張つてゐることもあり、第一印象は野村貴浩かと思つた。
 風間今日子は正確な立ち位地は紹介されないものの、台詞から夕子とは付き合ひの長い仲良しであらうことも窺へる亀崎晴子。三十回目の(!)見合ひに臨むに当たり、髪を切つて貰ふと運がツクといふ噂を頼り悲壮な決意で夕子を訪ねる。とはいふものの、晴子の髪は既に美容院でセット済み。ならばどうして欲しいのかといふと、下の毛をカットして呉れといふのである。如何にもピンク映画然としたシークエンスである、天晴と万歳で讃へたい。いざ陰毛のカットに関しては、画が際どい領域に及ぶや、白黒を反転させて回避するといふ荒技を見せる。
 齢の取り方を間違へてゐるのではないか、とすら思へて来てしまふくらゐに何時までも若い樹かずは、晴子の見合ひ相手・鶴田剛。風間今日子と樹かずの、非濡れ場含む絡みの安定感が素晴らしい。今作最も、といふか殆ど唯一充実してゐる件である。登場順を前後して津田篤は、進也の田舎の親戚の子供で、司法試験の受験に際して上京する松尾哲平。進也に促され試験合格の運をツケる為と、実は童貞だといふことで、進也の代りに夕子に夜這ひをかけさせられる。
 かういふ、仕事を選ばない姿勢はひとまづ評価したい平沢里菜子は、進也の女房・一枝。夕子の下には哲平を向はせ、進也はひとまづその晩は早目に帰宅する。さうしたところがあらうことか、一枝は夜釣りに出てゐる筈の文夫と、クロスカウンターな不貞を働いてゐた。アクロバティックな体位で平沢里菜子を責める丘尚輝。自分でも何を言つてゐるのかよく判らないが、無性に腹が立つて腹が立つて仕方がない。
 結局双方の夫が改心して、鞘が納まるべきところに何とはなくも納まる作劇は兎も角、正直なところラストの瀬能司と丘尚輝の絡みなんてどうでもいいので、平沢里菜子と本多菊次朗との濡れ場が観られなかつたことは残念。とはいへ、ああ見えて新田栄といふ人は微妙な堅実さも持ち合はせてゐるので、さういふ(一枝と進也との濡れ場で映画を締めて)映画の軸足をずらすやうな真似は仕出かさないとも思ふが。
 もう一名、髪を切つて貰ひながら頻りに夕子を口説く若い客役が床屋内に見切れる、定石からいふと小川隆史辺りか?回想の非濡れ場繋ぎのシーンで、二箇所激劣悪キネコを使用。大した長尺でもなく、削れるものも高が知れてゐるやうにしか、素人目には見えなくもあるのだが。

 最後に瑣末。独り眠る夕子に夜這ひをかけながら、進也は旦那はどうしたのかと聞かずもがなな問ひをぶつける。すると夕子、「あの人は釣りのことばかり。釣つた魚には、餌はやらないと思つてゐるのよ」。日本語が些か足らなくはあるまいか、“餌はやらなくていいと思つてゐる”ではないのか?


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