真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「痴漢の指2 不倫妻みだらな挑発」(1999/製作:新東宝映画株式会社、ジャパン・ホーム・ビデオ株式会社/配給:新東宝映画/監督:神野太/脚本:竹橋民也/プロデューサー:黒須功/撮影:茂呂高志/照明:加藤孝信/録音:福島音響/美術:西村徹/編集:大永昌弘/音楽:中西一八/助監督:村田啓一郎・菊川誠/制作:平原大志・有国浩/撮影助手:渡辺純一/照明助手:宮城任/美術助手:立花芳理/編集助手:佐藤崇/衣装:宮田弘子/ヘア・メイク:国信幸子/スチール:佐藤初太郎/キャスティング:綿引近人/ネガ編集:三陽編集室/現像所:東映化学/タイトル:道川昭/出演:勝虎未来・江原修・佐々木麻由子・山下真広・港雄一・南けい子・野上正義・森羅万象・和田智・野々内雄・工藤強・梅田宏)。
 「SCORE」(1996/監督・共同脚本:室賀厚/編集:室賀厚・鵜飼邦彦)軍団テキーラこと江原修がショッポに火を点ける。数人通行人を遣り過ごして同じく「SCORE」軍団ダックこと山下真広の姿を確認した、興信所「浜田総合調査」の調査員・次郎(江原)は行動開始、「九月二十九日尾行三日目、調査対象野崎浩介《山下》十七時十一分に退社、銀座線青山一丁目駅へ」。地下鉄の駅に下りる、地下鉄で痴漢電車やらかすのか?といふのは早とちり、左から電車が来ると暗転して右隅にタイトル・イン。地下鉄を降りた野崎は、自宅の方向とは異なるJRの路線に乗り換へる、次郎が振り回され気味に追ひつつ、調査依頼の様子がインサート。浮気を度重ねる野崎に対し、後々の段取りもつけてゐるらしき妻・ゆきえ(佐々木)は、決定的な証拠を求めてゐた。港雄一は「浜田総合調査」所長の多分浜田、普段はコーラのロング缶を常飲する。車輌を移動した野崎は、合図を交した二人の仲間(和田智・野々内雄・工藤強の中から二人)と合流、スーツ姿の勝虎未来に集団痴漢を敢行し、女をイカせると悠然と電車を降りる。報告を受けた浜田はその現場の写真を押さへてゆきえにせよ野崎にせよ、高い値をつけた方に売ればいいと節操のない皮算用を膨らませる。尾行十日目、相変らずJRに寄り道した野崎を苦笑気味に尾行する次郎は絶句する、三人組が再び勝虎未来を嬲つてゐたからだ。心を奪はれた次郎は野崎もホッぽり出し勝虎未来をストーク、勝虎未来は北多摩女子大の学生寮に暮らす女子大生・由美子であつた。
 後述する裏もしくは真主役の一人除き配役残り、和田智・野々内雄・工藤強の内誰か一人が、ゆきえが慰謝料をタップリふんだくつて新しい生活を送るつもりの、正しくツバメ感が迸る若い間男・ヒロキ。野上正義は野崎が由美子を宛がふ、助平専務。南けい子は野崎のミッションが失敗する形で終了した次の調査対象、単身赴任中の夫から不貞を疑はれる北川リエで、森羅万象がそのお相手氏。南けい子V.S.森羅万象戦の大層な重量感と、三番手の濡れ場で終盤を軌道に乗せる構成の堅実さは地味に光る。台詞ひとつなく通り過ぎるだけの登場ではガミさんと被る混同は否めない梅田宏は、森羅万象を追跡中次郎が出くはす、由美子の新しいボス。「北多摩女子学生会館」管理人と、由美子の同級生要員二名、運よく夢の島を切り抜けた次郎を助ける男は不明。
 「本気汁たれ流し」(1995/エクセス/脚本:上野由比/主演:宏岡みらい)から三年空いた、「痴漢の指 背徳の美人秘書」(1998/脚本:竹橋民也/主演:里見瑶子)挿んでの神野太ピンク映画第五作。因みに次作は四年後のPINK‐Xプロジェクト第六弾「痴漢電車2003 さはられたい女」(2003/主演:中谷友美)で、更にその二年後エクセスに帰還する。現状、沈黙は五年目に突入する。中途半端な仕上がりの多かつたPINK‐Xプロジェクトを先取るかのやうに、普請はパッと見にも常ならざる潤沢さを窺はせ、驚くなかれ、尺も六十分を堂々と七分も跨ぐ。尤も、リアルタイムではテキーラが出て来ただけで喜んで大騒ぎして観てゐたものの、改めて再見してみるとビリング頭二人が然程どころでもなく強くはなく、標準的からより直接には平板な仕上がりのよくある探偵物語といふ印象が強い。野崎の痴漢現場を如何に撮影するかに関し、丸投げな浜田と現場担当の次郎とで口論になる件があるのだが、最終的に次郎が思ひきり普通に顔の前に構へたカメラを向けてみせる無造作さには、それは笑かせたいのかと呆れさせられた。尤も尤も、今作の主眼は兎も角見所は案外初心な探偵が、ミステリアスな女に翻弄される本筋にはない。“東京都清掃局”を自称し、由美子に一杯喰はされた格好の次郎を襲撃する文字通りの強面役。御本人様より伺つたところによると事務所を通してゐない故のポスター・クレジットとも黙らせた鬼出電入のカメオ出演にて、チャンスこと我等が「SCORE」軍団総帥・小沢仁志が飛び込んで来るのだ!度派手なジャケットに黒の革パンを合はせ蛇革のブーツをキメた小沢仁志が、情容赦ない戦闘力で次郎を圧倒、夢の島に放棄したかと思へば、ラストのひとつ前に再登場しては美味しいところを根こそぎ持つて行く。かうなつてはピンクもへつたくれもない、小沢仁志が出張つて来た以上、これはもう小沢仁志の映画だ。それでそれだけで俺は全然満足だし、今作をラインナップに加へて呉れてゐたDMMのピンク映画chには心から感謝した。

 映画の中身とは清々しく関係ないが、難敵・コブラ(宮坂ひろし)といよいよケリをつける段にチャンスが吐く、日本アクション映画史上一番カッコいい名台詞「どんなクソヤローにも、必ずチャンスは来るもんさ」。


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