コンビニ無法地帯 人妻を狩れ

　「コンビニ無法地帯　人妻を狩れ」（2009/製作：フリーク・アウト/提供：オーピー映画/監督：国沢☆実/脚本：内藤忠司/撮影：宮川幸三/照明：小林敦/助監督：小川隆史/監督助手：桑島岳大/撮影助手：清水康宏/緊縛：藤つかさ/音響効果：山田案山子/編集：有馬潜/協力：吉行由実・広瀬寛巳、他・小林徹哉・マジックアワー・グリフィス/出演：成田愛・かわのすみれ・佐々木基子・まんたのりお・久保隆・間宮結・金村英明・村田頼俊・白木努・太田始・ＴＨＵＮＤＥＲ杉山・内藤忠司・宝田雅資）。出演者中、白木努以降は本篇クレジットのみ。音響効果の山田案山子は、ポスターには効果で梅沢身知子。
　この手のソフトに於いては、割と御馴染みのセット・コンビニエンスストア。店長の金村（まんた）が表を掃除してゐると、仕事を捌けたバンドマンの店員・吉井（金村）が、迫るライブも控へた練習へと向かふ。その場ではチケットを何枚か買つてあげることを朗らかに約束しながらも、吉井の姿が消えるや、金村は表情を憎々しげに正しく豹変させ痰を吐き捨てる。心に隙間を抱へた風情で万引き行為によろめく人妻・志村涼子（佐々木）の姿を、防犯モニター越しに捉へた金村は指を鳴らすと同時に「ビンゴ！」と叫び、店を出たところで涼子の身柄を捕獲。連れ込んだ妙に雑然とした別室で、犯罪心理学の入門書を振り回し何やかんや底の浅い因縁をつけつつ陵辱する。一方光岡舞（成田）は、万事に於いて一方的な夫・登（久保）との、心の通はない日々にこちらも精神の軸足を失ふ。常習犯の女子高生・浮田薫（かわの）が、口紅を胸元に忍ばせる犯行現場を金村がキャッチした直後に、薫の背後ではつられた舞が商品を手提げバッグの中に潜り込ませてしまふ。金村は薫のことなど何処吹く風、舞に対して「ビンゴ！」と指を鳴らす。
　よくある万引き女ものの単なる一類型かと思ひきや、登との満たされぬ夫婦生活からのカウンターも込み込みで、葱を背負つて猟師を仕留めに来た鴨の如く、俄然入れ揚げて来た舞に金村が逆に狼狽させられる展開はなかなか秀逸だと、一旦は唸らされかけた。ところがそこから、三番手の裸要員と思しきかわのすみれの濡れ場を、その期に持つて来る順序に際しては、映画全体の段取りを根本的に間違へてゐるのではないかと、早とちりで今度は呆れかけた。ところがところが、心を壊してゐる以上最終的には脆弱な舞や金村、ついでに自信、あるいは自身を喪失した涼子や身勝手なばかりで根本的には孤独であらう登らに対して、劇中唯一健康で逞しい生活者として薫が一暴れしてみせる対照は実に鮮やかで綺麗に形になつてゐると、本気で感心させられた。恐らくは内藤忠司の頑丈な脚本に国沢実持ち前のダメ人間風味が上手く加味されると、まるでマイルドな山邦紀ともいふべき、癖がありつつ意外とカッチリした娯楽映画として仕上がつてゐる。改めて遡つてみるならば、前回まんたのりおを男主演に据ゑた「欲情喪服妻　うづく」（2005/脚本：樫原辰郎/主演：橘瑠璃・葵しいな）以降、今となつては突発的なラッキー・パンチとしか思へないアイドル映画の大傑作「新婚性教育　制服の花嫁」（2006/脚本：樫原新辰郎・国沢☆実/主演：星月まゆら・小峰由衣）を除いては、概ねにも何も沈降し続けてゐた国沢実にあつて、久方振りに手応へを感じた充実作である。唯一つ注文をつけるとすると、金村に淫具を装着させられ店内に羞恥放置された舞が達してしまふ場面に於いては、もう少し失禁する様子を明示的にハッキリ押さへておくべきではないか。それが非現実的なクリシェであれ何であれ、かういふシークエンスに際して最も肝要な勘所であらうことは、矢張り否めまい。

　残る配役から間宮結は、オーラスの端緒を切るスレンダーな、劇中に限定しても金村の店通産四人目の万引き女。村田頼俊は吉井ともう一人のコンビニ店員。白木努以降の他に、広瀬寛巳やグラサンの国沢実らを加へた面々は、快楽の果てに堕ちた白日夢の中では、舞の体にも群がるコンビニ客の皆さん。

　以下は2012年新版を再見しての付記＜　オーラスの緊縛ショット初めて観たぞ。