真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「貪欲な人妻たち -うづうづする-」(2002『いぢめる熟女たち 淫乱調教』の2010年旧作改題版/製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/監督:佐倉萌/脚本:佐倉萌/企画:稲山悌二/プロデューサー:伍代俊介/撮影:加藤孝信/照明:倉橋靖/編集:フィルムクラフト/助監督:竹洞哲也/監督助手:斎藤勲・上乗直子/撮影助手:茂呂高志/照明助手:小林卓実/録音:シネキャビン/スチール:本田あきら・伊藤久裕/タイトル:道川昭/現像:東映化学/協力:Mr.SEN/出演:鷲亮子・翔見磨子・鈴木敦子・風間今日子・藤岡太郎・渡辺力・森羅万象《特別出演》)。出演者中、カメオの森羅万象は本篇クレジットのみ。
 結婚七年、伊藤沙弥香(鷲)と夫の修二(渡辺)は清々しく倦怠期にあつた。求めるも夫には拒まれた翌朝、沙弥香は修二を送り出すと、いそいそと身支度を済ませ浮気相手・仙道崇(藤岡)の単身赴任宅へと向かふ。よくよく考へてみると、ここで躓いても別に構はなかつたのだが、少なくともこの時点に於いては、未だピンク映画的には進行も円滑であつた。仙道が仕事はどうしたのか、午前中から沙弥香と一戦交へるところに、厳密にはそれを“帰宅”とはいはないのだらうが、兎も角ホステスの京香(風間)が、まるで自分の家かのやうな勢ひで仙道宅に戻つて来る。あまりに堂々とした京香の風情に妻かと勘違ひした沙弥香は一旦身を隠し、連戦の隙を見て脱出する。その一件について、結婚前からの親友・奥野尚美(翔見)に愚痴を零す沙弥香ではあつたが、何のことはない、開始時期こそ明示されないものの、尚美は修二と現在進行形の不倫関係にあつた。一方、仙道も仙道でとことんお盛んな男で、業者として出入りする病院の看護婦・浜田律子(鈴木)とも更に関係を持つてゐた。特別出演の森羅万象は、院内に登場するガッハッハ系医師。もう一人抜かれる、屋上で一服する入院患者役は不明。もしかして、この人がSEN氏?とまれ後日、京香は呑気にシャワーを浴びる仙道の家を、沙弥香が再び訪れる。京香はとりあへず隠れたものの、時間差で訪ねて来た律子と、沙弥香が鉢合はせる事態に。脊髄で折り返した修羅場に京香もバツが悪さうに顔を出し、マンコ・シスターズ、もとい棹姉妹ともいふべき三人は仙道に呆れ果てる。挙句に何故かそこに尚美も顔を並べ、女達は女を弄ぶ男達に一泡吹かせるべく、逆襲の気炎を上げる。
 しのざきさとみ・小川真実とオムニバスの一篇づつをそれぞれ監督した、1/3デビュー作「人妻不倫痴態 義母・未亡人・不倫妻」(2001)に続く、佐倉萌の長篇第一作である。尤も、その後の監督作は七ヶ月後の第二作「貪る年増たち サセ頃・シ盛り・ゴザ掻き」(2002)以降、依然途絶えてもゐるのだが。それはさて措き今作単体に話を絞ると、不誠実な男達を懲らしめる女達の爽快な活躍を描かうとした、相談など通りはするかと机も叩かんばかりに、まあ事こゝに至ると逆に感動的なほど瓦解した物語がまるで体を成さない、強ひてよくいへば噴飯作である。下手糞な繋ぎで沙弥香と律子が揉み合ふ現場に、京香も仕方なく姿を現すまでは百歩譲つていゝとしても、そこに何時の間にか、元来無関係の筈の尚美も割り込んで来る辺りからが完全にへべれけ。順に鈴木敦子・風間今日子・鷲亮子を嘗めた画の最後に、シレッと翔見磨子も出てきた瞬間には素面で我が目を疑つた。インター・UN・PWFならぬ鷲亮子・鈴木敦子・風間今日子の、藤岡太郎の女優三冠だけでも既に十分に豪快な話だが、ビリング後ろ二人との―濡れ場に限定せずとも―絡みは以前にワン・カットたりとて置きもせず、火に油を注いで何時の間にか渡辺力が女優陣総嘗めの四冠を達成してゐたりもするのは全く以て滅茶苦茶。そもそも、これでは沙弥香と律子と京香はともに―少なくとも―修二と仙道の二股をかけ、尚美に関しても、自ら白状したとはいへ悪びれるでなく、堂々と親友の旦那を寝取つてゐた訳である。斬つて捨てるが、彼女達の誰一人すら、修二や仙道を非難する謂れなどなからう。仙道との不貞は棚に上げ、修二に離婚届を突きつける沙弥香の憎たらしいしかめ面には、久し振りに銀幕の向かう側に本気で腹が立つた。重ねてその上でなほ、存続する沙弥香と尚子の女の友情とやらで映画を畳むなどといふのも、一体佐倉萌は何を血迷ふてこんな頓珍漢な脚本を書いたのか、巨大な世話の男目線では画期的に不自然としか映らない。男同士でも、斯様に珍奇な友情などあるものか。仮に、この状況で同性間の交友関係がその後も成立し得るとして、そのやうなものは友情の名には値すまい、打算でなければ単なる自堕落である。加へて、ビリング前二人の素材にさへ難があり、如何なる場面にあつても求められた自分の仕事だけは頑丈に完遂する森羅万象の逞しさ以外には、探してみても見るべき点が俄には見当たらぬ。人妻たちは貪欲かも知れないが観てゐるこちらはうづうづしない、直截にいふと相当に凶悪なデビュー本戦である。


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