真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 中程度以上にくたびれ果ててゐたところ、寝耳に濃硫酸でもブッカケられたかの如き衝撃情報に慌てて、取る物もとりあへず緊急出撃したのも束の間、とつとと止めを刺されてしまつた。ピンクスとしての私のフランチャイズ、福岡オークラ劇場は来月の末をもつて閉館してしまふ、これはノー・エスケープな事実である。福岡オークラで観ることの出来るピンクも、残り十五本。話は反れ気味になるが、かうして吹かれなくても消し飛んでしまふやうな駄サイトを細々とシコシコ続けてゐると、偶に掲示板に見ず知らずの方からの書き込みが、殊にそれがピンクに関するものであつたりすると、柄にもなく嬉しくなつてもしまふものである。が、流石に今回ばかりはネタがネタだけにちつとも嬉しくなれない。
 正直なところ、「危ないな」といふ危機感ならば兎も角、「大丈夫か?」といつた心配に毛を生やした程度の、漠然とした不安ならば無い訳でもなかつた。とはいへ、唐突過ぎる、早過ぎる。今は、少なくとも今は未だ、俺にはピンクが必要だ。
 私がかうして、ピンクは観ただけ全部感想を書く、と小川欽也にも珠瑠美にも新田栄の映画にも一々感想を書いてゐるのは、何も放つておけば消え行き、あるいは逝きつつあるピンクを憂へてでも、このサイトを通してお一人でも多くの方々にピンクを観て貰ひたい、だなどといつた大それたことでもひとまづない。そもそもきつかけが何であつたのかは今となつては定かではないが、前世紀末頃から他に何もすることがない私がどういふ訳でだか首をドップリ突つ込んで、最早ほぼ抜けなくなつてしまつたピンク映画といふジャンルは、放つておかれなくても殆ど誰からも省みられずに、通り過ぎ忘れ去られて行つてしまふジャンルではあらう。現に、私が最も愛した映画「淫行タクシー ひわいな女たち」(2000/監督:関根和美/脚本:金泥駒/主演:佐々木基子・町田政則)は、その憂き目にドンピシャで遭つてゐる。ならば、金も力も、序に色男もありはしないのだが、暇だけは作れば何とかなるので、どうせならば国映勢だけ掻い摘むやうな洒落臭い真似などせずに、十本中八、九本の関根の凡作にもエクセスの単なるエロ映画にも最早苔すら生えないやうな旧作改題にも、かうして一々感想を書いてゐる次第である。己の人生の面倒も満足に見れないやうなドロップアウトの分際で、どの面下げて状況に関心を持てようか。小生はそこまでおこがましくも厚顔無恥、無知でもない。
 これで、六月からは奇跡が起つて新しい小屋でも出来ない限り、私が住む街に遺されるのはm@stervision大哥仰るところの“民生機に毛のはえた数十万円の液晶プロジェクター”上映の、加へて三本立ての内通常二本はVシネを掛ける小屋のみとなつてしまふ。まともに銀幕にフィルムで上映されるピンクは、残り十五本。が然し、いふぞ。これで何もかもが終つてしまつた訳ではないからな。“おはりのはじまり”?確かにさうかも知れないが、冗談ぢやないぜ。堂々と筆を滑らせると、時に名のある小屋の閉館がニュースとして伝へられることがある。さういふ際に姿を現すのが、「いやあ残念ですねえ、昔は通つたものなんですけどねえ」なんて寝言を、ちつとも残念さうには見えないしたり顔で吐きやがるクズ供である。いいか、再びいふぞ。潰れて惜しい小屋ならば、潰れぬ内に、潰れないやうに足繁く通へ。「昔は良かつた」、そんなことはバカにもクズにでもいへる。繰り返すが、幸か不幸か当方ドロップアウトは貧しい人生を送つてゐる人間なので、懐かし気に振り返る来し方なんぞ欠片も持ち合はせはしない。ピンクス・ノット・ラスト・ギグ。負け戦上等、後退戦ならばお手の物。柄にもなく、俄然ヤル気が出て来た。へこたれても、挫けはせんからな。


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