真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「美熟女姉妹スワッピング 貞淑な姉と淫乱な妹」(2010/製作:株式会社高澤/脚本・監督・編集:山内大輔/企画:豊田晋平/プロデューサー:伍代俊介/撮影監督:田宮健彦/録音:高城英司/助監督:小山悟/監督助手:安達守/美術:ミルクマン/音響・効果:AKASAKA音効/メイク:はなちゃんず/制作協力:《有》コウワクリエイティブ/出演:友田真希・月島悠里・佐々木共輔・岡本純治)。
 視聴者の集中力に対する不信、とでもいふ以外には、一体どのやうな効果なり意図があるのだか軽やかに理解に苦しむものの、第1話「罠に嵌められた貞淑な姉」、第2話「淫乱な妹が企む背徳の宴」と、傍目には正直無駄に章立てされる。よくよく調べてみると、坂本太が四番打者として大絶賛量産体制に入りもする、同社のR-18枠Vシネに共通して採用される構成でもあるやうだ。
 専業主婦の山田由里子(友田)は夫の利春(佐々木)とは長く疎遠の状態にあり、ローンが数十年残る戸建の新居に、囚はれてゐるかのやうな焦燥を抱へてゐた。入念に指先をアルコール消毒するディテールも噛ませての、宅配業者を装つた男に玄関先で陵辱される、といふコンセプトで、由里子が日中度々耽る自慰。但し男は利春しか知らない由里子にとつて、妄想の中で犯される男も、矢張り佐々木共輔であつた。ところで、今作の佐々木共輔は、何故だか尋常ではない目張りを入れてゐる。そんな山田家に、第2話冒頭に漸く語られるが夫・譲二(岡本)が派遣先工場の上司を殴り路頭に迷つてしまつたとのことで、由里子の妹・真由子(月島)が、夫婦で転がり込んで来る。結構歳の離れた姉妹は、会ふのは五年ぶりでもあつた。案外アッサリ首を縦に振る利春に対し、元々真由子とは不仲の由里子は、傍若無人に飲み食ひすれば自分の気も知らず憚らぬ夜の営みに励みもする、妹夫婦に苛立ちの火に油を注がれる。そんな由里子は望まぬ新生活、定例のイマジンに、登場する宅配業者が図らずも岡本純治にスイッチした義姉の痴態に他でもない譲二が遭遇、二人はそのままの勢ひで事に及ぶ。しかもその現場は、したり顔の真由子に目撃されてゐた。
 鬼畜系、あるいは残虐V シネで名前を売り、その後高水準のピンク映画を連発した山内大輔の、2010年新作徹頭徹尾エロティックVシネである。2007年第三作「性執事 私を、イカして!」(主演:中島佑里・岡田智宏)以来、エクセス側の都合もあつてか山内大輔はピンクから離れてゐる。問題作らしい三年ぶりの新作「色恋沙汰貞子の冒険 私の愛した性具たちよ…」―然し、タイトルから猛烈にオッカナイ―にその内相見える予習がてらにと、現在の山内大輔を知るべく、純然たるVシネではありながらプロジェク太上映の地元駅前ロマンにて、普通に小屋の客席から観戦したものである。数度繰り返される朝の出勤風景に際して、終に夫を見送ることを由里子が止めることに、山田夫婦の間に静かにではあれど確実に拡がる溝の存在を観客に指し示すと同時に、利春もそのことに直面するカットには、確かに山内大輔らしい丹念な細やかさが窺へる。とはいへ、他に光る点はといへばさりげなく平衡を失した様を匂はせもする、由里子が指先を消毒するアルコールの積み重ね方と、ヒロインの想像力に乏しい御数が、無意識の内に夫から義弟に交代してゐた瞬間の強度くらゐか。逆の意味で壮絶な、平板極まりない撮影に概観が支配されることも已むを得まい残る始終は、最終的には限りなくAVに近いVシネといふよりも寧ろ、横好きのドラマ要素が淫らに強いAVとすらいつた印象がより強い。妙に尺が割かれもする、実は利春はリストラされてゐたといふ事実に関しても、そのことを結局家人に対しては劇中伏せたままで物語の中には回収されないとあつては、そもそも何の為に斯様な要素を持ち込んだのかにも、まるで釈然とはしない。端的に片付けるならば、山内大輔が手を抜いてゐたことを望むばかりの、貧しい一作ではある。


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