真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「人妻と愛人 不倫ハメ覗き」(1998/製作:国映/配給:新東宝映画/監督:橋口卓明/脚本:荒留源/企画:朝倉大介/撮影:中尾正人/照明:井和手健/編集:酒井正次/音楽:遊林/助監督:石川二郎/監督助手:大西裕/撮影助手:田宮健彦・奥野英雄/制作応援:根本強史・佐々木直也・牧田重臣/キャスティング:寺西正己《アクトレスワールド》/協力:上野俊哉・坂本礼・榎本敏郎・今岡信治・新里猛作、他総勢二十数名・《有》ライトブレーン・《有》ペンジュラム/出演:里見瑶子・富山敦史・瀬戸恵子・青山円・横塚明・隆西凌)。脚本の荒留源が、ポスターには何流布缶暴盃。一体全体、何がどう転んだらかういふ出鱈目なことになるのか、どう読ませたいのか教へて頂きたい。本来の荒留源も、判らんといへば確かに判らないが。
 ジッポーの点火で開巻、炎で車のナンバー・プレートを照らしてタイトル・イン。養老乃瀧店員の安岡マキ(里見)宅にて、会社社長令嬢と結婚した城戸もしくは木戸祐二(横塚)の不倫の逢瀬。妻から雇はれた探偵の小島(隆西)が、表に停めた車からその様子を窺ふ一方、開かれた窓を覗く望遠レンズ越しに、通りと線路を隔てた一室でマキと祐二の情事をつぶさにモニタリングする、北村一輝を少し小粒にした感じのイケメン・トシアキ(富山)の姿もあつた。音声までは拾へてないのか、トシアキはマキの唇を読む。妻を懼れる祐二は事後早々に帰宅、その喪失感に黄昏るマキの部屋に、トシアキから電話が入る。トシアキはどうやら耳が聞こえないらしく、マキに対しては普通に携帯電話で発話し、応答には矢張り読唇で対応した。トシアキは元々、社長令嬢の朋子(瀬戸)を祐二と争ひ、なほかつほぼ結婚も決めてゐた。因みに、瀬戸恵子にとつて、今作がピンク映画初陣に当たる。引退作「四十路寮母 男の夜這ひ床」(2006/監督:新田栄)と比しても、意外と印象は全般的に変らない。話を戻して、ところが、ミュージシャンと思しきトシアキはブース内で下拵へ中のスタジオ、朋子のハンドバッグに蹴躓いた祐二がボリュームを触り、激越な爆音がトシアキを襲ふ。観た感じには、正直結構以上に間抜けな状況と演出ではあるが、兎も角その結果聴覚を失つたトシアキを手の平を返すかのやうに見限つた朋子は、結局祐二を選んだものだつた。ところでそもそも、祐二・朋子と斯様な因縁にあるトシアキが、マキと如何にして現在の複雑かつ親密な交際を築き上げ得たのかに関しては、清々しいまでに完全に通り過ぎられる。
 良くも悪くも国映作らしいといへば国映作らしい、直截に片付けると青臭い変則恋愛映画。凝つたのかプリミティブなのかよく判らないしがらみを、不安定で不思議な擬似恋愛関係で味つけした仰々しい物語は、やがて無闇にアンニュイなマキにトシアキが無造作に投げた死と暴力の匂ひと、底の浅い小島の両天秤とに加速され、粗雑な修羅場へと雪崩れ込む。徒に思はせぶりなばかりの、モノとダイアの別を問はずローグに仔細の推移は基本頼りきりの反面、各々のシークエンス単位の強度には、ビリング頭二人、主役男女の表情以外には特段恵まれない。殊に、妙に尺を喰ふところまで含めて、朋子が居酒屋店内に泥棒猫たるマキを強襲する件の、鬱陶しい蛇足感は比類ない。大体が、トシアキの聾者設定自体が、展開の実勢には実は馬鹿馬鹿しいほどに絡まない。万事が右から一昨日へと上滑る中で、終にマキがトシアキと結ばれる締めの濡れ場すらが、決定力を掴み損ねた印象は否めず。女の裸を、半ば初めから等閑視したプロットではない分国映近作よりはまだましともいへ、お門違ひにも商業娯楽映画を求めるならば、相当に力なく物足りない一作ではある。

 配役残り青山円は、泥酔した挙句に藪から棒な強姦衝動を持て余す小島の前を、脱がしにくいパンツ姿の女(不明)に続きうつてつけに通りかかり、まんまと犯されてしまふ軽装の女。“まんまと”といふのも、自分で筆を滑らせておいて如何なものかといふ話だが。本筋には全力で一切関らず、しかも実質的には殆ど脱がないどころか、決してカメラが寄りはしない夜道のショットの中、首から上さへ満足には捉へられない。ここまで乱暴な三番手の放り込み方といふのにも、滅多にお目にかゝれない妙な感動は、確かに残らぬでもない。その他、踏切を待つマキの傍らに、ギターケースを抱へた今岡信治が見切れるのだけは確認出来た。
 最後に、今回は旧題ママによる二度目の新版公開で、2002年一度目の旧作改題時の新題が、「裏窓 妻と愛人の痴態」。通りに面したマキ宅の窓は、別に裏窓ではない件につき(´・ω・`)


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