真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ワクワク温泉 極楽へ連れてつて」(2002『小悪魔デヴィ とろけ湯穴覗き』の2005年旧作改題版/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:五代暁子/撮影:飯岡聖英/照明:岡宮裕/編集:酒井正次/助監督:小川隆史/出演:デヴィ・山咲小春・風間今日子・今野元志・ささきまこと・秀)。
 TV番組「あいのり」(見たことないけど)出演からAV嬢に転進、といふ清々しく世の中に後ろ足で砂をかける素敵な経歴を持つデヴィ、のピンク映画初出演作。話は逸れるが、今稿を書くに当たり少し調べてみたところ、このデヴィ嬢、今でも活動してゐるやうだ、公式ブログまで出て来た。
 そんなデヴィ扮する今作の主人公は、判り易過ぎるカウガールのコスプレをした流れ者の風俗嬢、人呼んで「昇天の昇子」(下らないにもほどがある)。母親の墓参りの為に久方振りに山間の故郷を訪れた昇子は、今将に橋から川に飛び込まんとしてゐた男を助ける。男は、昇子の幼馴染で初恋相手でもある功一(今野)であつた。功一は亡き両親から旅館(御馴染み水上荘)を継いだものの、経営難から借金に行き詰まり、自殺しようとしてゐたのだ。大学で植物学を学んだ功一は、山草を―適当に―調合して催淫効果のある“セクシー湯の元”の開発を目指してゐたが、どうしても研究は上手く行かず、その為に客足も遠のき借金ばかりが膨らんで行つたものだつた。昇子も加はり、功一はもう一度改めて“セクシー湯の元”の完成を目指す。
 山咲小春とささきまことは、絵に描いたやうな不倫カップルのエミと村山。どうでもいいが、撮影の飯岡聖英はもう少しささきまことの頭頂部を思ひ遣つた撮り方は出来なかつたものか。風間今日子は、失恋の傷心旅行中のかおり。秀(=十日市秀悦)は、金貸しの柿本。功一の借金の取立てに向かつた柿本が、途中川でボンヤリしてゐたかおりを拾つて来る。また川か、昇子と功一の再会とほぼ同一のシークエンスである、少しは工夫して呉れよ>五代暁子
 御都合的に万事が丸く収まつた後、昇子と功一が結ばれてメデタシメデタシ。とはならないで、流れ者には男は要らぬ、と昇子は軽トラの荷台に乗ると水上荘を後にする。もしかすると、渡邊元嗣は「男はつらいよ」よろしく「昇天の昇子」をシリーズ化するつもりもあつたのやも知れないが、デヴィはこの後、全く違ふ話の渡邊元嗣の別の映画に一本主演したきりで、以降他の組でもピンクでは仕事をしてゐない。
 脚本の中身が例によつてどんなに温(ぬる)くても、演出のキレが何時もの通りどんなに緩くとも、ひとまづ主演女優が可愛らしく撮られてはあつたので、体調に拠るものかその日の気分か、映画と馬が合へば愛ほしい一本になつてゐた―それが過分に甘い、映画の観方であることは先刻承知の上である―のかも知れないが、残念ながら今回はさうはならなかつた。単に小生の女の好みにデヴィが合致しなかつた、などと腹を割つてしまへばそれこそ実も蓋もないが。

 「とろけ湯穴覗き」、ピンク色にロマンティック過ぎるフレーズに、デヴィ主演作であることもしつかりとフィーチャーされてある。今回の改題に関しては、旧題の方が勝つてゐるやうに思はれる。


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