真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「20世紀少年」(2008/ 主題歌:『20th Century Boy』T.REX)。時にはメインストリームの映画も観るよ。
 因みに、初めにお断りしておくと、浦沢直樹の原作は一コマも未読。監督の堤幸彦に関しては、「溺れる魚」(2000)を観た際に「二度とこいつの撮つた映画は観ん!」と激昂したものであつたが、ひとまづ当代きつてのポン画界(“日本映画界”の意)ビッグ・プロジェクトといふことで、いそいそとシネコンに足を運んでみた。
 とりあへず、今作は二つの大きな過ちを犯してゐる。何はともあれ第一には、毎度毎度一般映画の概評を書く度に同じことばかりいつてゐるやうな気もするが、といふか事実さうでもあるのだが、

 フィルムで撮れよ、タコ。

 クライマックス、東京を襲ふ“ともだち”の巨大ロボットに主人公らが敢然と立ち向かふ“血のおほみそか”。肝心の巨大ロボットの全景すら判然としない有様なのは、半分はキネコ品質の所為。小屋で観るよりDVDで見た方がよく見えるやうな代物を、当サイトも映画として評価しない。
 羽田空港や国会議事堂のロング・ショットCG爆破シーンは、それまでのドラマ部分が総じて病的にカメラが寄り過ぎてばかりなだけに、偶さか映画を観てゐる気分を錯覚出来もするが、ここは矢張りジョー・ダンテのいふ通りに、ミニチュアで出来ることは、ミニチュアで撮影するべきではなかつたか。そもそもがフィルムで映画を撮らない人間に、いふたとて詮ない方便でもあらうが。全体的には、あくまで全三部作中の一作目とはいへ、何処に製作費六十億も使ふたのか?といふ感が非常に強い。映像的スペクタクルとしてはほぼ皆無。六十億といふ数字は本当に正味の映画「20世紀少年」に費やした総額で、その半分は広告宣伝費、といふオチであるならばそれはそれとして肯けぬでもない。
 第二には、ラストで流れる「20th Century Boy」のボリュームが小さい!個人的に勝手に期待してゐたところでは、映像は完全に終り、エンド・クレジットが流れ始めたところで、劇場を吹き飛ばす勢ひの大音量でドカーンとあの馬鹿でも知つてゐる名リフが轟くといふものである。対して実際は、第二章への繋ぎのエピローグのBGMとして「20th Century Boy」を浪費しておいて、オーラスに流れるのは唐沢寿明歌ふ、かつてはロックを志してゐたといふ設定の主人公:ケンヂの劇中オリジナル曲といふ有様。一体どういふブラック・ジョークか。今作の一切合財を掻き集めたとて、「20th Century Boy」の一小節にも敵ひはしないのだ。音楽の富を奪取せよ。映画はぼちぼちだつたのに、主題歌の威力で何故か大感動に震へながら劇場を後にする、最早さういふ形の突破口しか残されてゐなかつたのではないか。

 だとか何とかはいひつつも、あれやこれやは兎も角最終的には強大な敵に主人公らがレジストする、といふシンプルでエモーショナルな物語なだけに、何だかんだで散発的、あるいは局部的には心を揺さぶられたのが正直なところでもある。第2章にも、矢張り多くは望まないままに、一応足を運んでみようかとは思ふ。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 変態熟女 発... 三十路兄嫁 ... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。