真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「揉んで揉乳《もにゆ》~む 萌えつ娘魔界へ行く」(2017/制作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:増田貴彦/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:西村翔・岡村浩代/照明助手:広瀬寛巳/スチール:津田一郎/録音:シネキャビン/効果:梅沢身知子/仕上げ:東映ラボ・テック/カラリスト:石井良太/出演:佐倉絆・里美まゆ・桜ちなみ・ケイチャン・小滝正大・津田篤)。クレジットにもポスターにもないものの、中野貴雄が小道具協力してゐる筈。
 ファンタジー系のエロ漫画でレディースコミック作家を目指す女子大生の和智みくる(佐倉)が、“ぴいういず”とプリントされた謎のジャージの上に、どてらを羽織つてマンガの制作中。顔自体小さいのもあらうが、馬鹿みたいにデカいいはゆるアラレちやんメガネも装着し見るから地味な造形ながら、後にその件を揶揄されると、「ジャージは私の戦闘服よ」といつてのける姿勢は清々しい。俺も二十代までは、ジージャンがダメ人間の戦闘服だと思つてた。作業の手を止めたみくるは、自らの原点たる原典ともいふべき、祖母の代より伝はる飛び出す絵本「まほふ王子の花よめ」を取り出す。王子と花よめの小指が赤い糸で結ばれた絵が飛び出したタイミングで、目覚まし時計が。「行かなくちや」と、慌ててみくるが出撃してタイトル・イン。みくるが向かつた先は、丑三つ時、には見えない薄明るさのカラスノ公園。その時間大きな木の鳥の巣箱に白い花を入れると、魔法講座の通信教育を受けられるとかいふ都市伝説がネット上に流れ、現にみくるは添削を受講中であつた。その日も百点をゲットしたみくるの前に、白馬は潔くオミットしたタキシードに仮面の津田篤が現れる、コスプレか。魔法界「マジカルワールド」の王位継承者を名乗るディラン(津田)は、みくるに「魔法使ひにならないか?」と最短距離の内側を抉る素頓狂さで持ちかける。マジカルワールドから人間界を観察、みくるの左尻にある星型の黒子に注目してゐたディランと、みくるがいい雰囲気になりかけたところに、ディランに要はヤリ逃げされた魔女・アザリア(里美)が来襲。魔法でディランを先つぽに張形のついたバトンに変へ、持ち去つてしまふ。夢オチ風に目覚めたみくるの前に、今度は魔法学校の教師・キャサリン(桜)が現れる。ディランの筆も卸したキャサリンは、チンコに星型の黒子のあるディランに、“星型の黒子を持つ者同士は最高に具合がいい”との伝承を吹き込む。一見節操のないディランの女漁りは、運命の人捜しでもあつた。ディランを元に戻すにしても、キャサリンは魔力が衰へる齢につき、みくるがアザリアと対決する格好となる。ところで中野貴雄が協力してゐる筈の小道具といふのは、ディランが星黒子の伝承を知る、キャサリンに見せられた多分魔法大辞典的なハードカバーが、ピンサロ病院シリーズ第三弾「ピンサロ病院3 ノーパン診察室」(2000/脚本:中野貴雄/主演:黒田詩織)で登場したマグレアのベアトリス写本、物持ちいいな。
 キャサリン曰く魔力を得るには男の性的エネルギーを取り込む必要があるとの如何にも、狂ほしく如何にもピンク映画的な方便で、みくるに三つの課題を課す。配役残りケイチャンは、みくるが一つめの課題で飛ばされた山中の修験場にて修行中の、真言ならぬチン言宗(大絶賛仮称)僧侶・珍念、性的エネルギーを抑へ込んでゐる人。小滝正大はみくるが続いて自宅に飛ばされる、今世紀このかたインポの引きこもり・新保俊春、こつちは性的エネルギーを溜め込んでゐる人。
 確かにGARAKU(exウィズ)の名前が何処にも見当たらない、渡邊元嗣2017年第一作。もしかしたら、ぴいういずジャージは昔何かで観てたかな?凡そ二十年続いた山崎浩治とのコンビは残念ながら解消したのか、脚本は前作に引き続き、「未来H日記 いつぱいしようよ」(2001/監督の田尻裕司と共同脚本/主演:川瀬陽太・高梨ゆきえ)以来の超復帰を果たした増田貴彦。尤も更に次作の脚本はといふと、平柳益実の変名ともこの期には何となく思ひ難い、波路遥であつたりもする。
 混同するほどではないにせよ、髪型も体型も似通つた二三番手のキャラが被る点にはバラエティ面での不足も軽く覚えつつ、デジタルの果実もふんだんに享受した愉快な濡れ場の乱打は楽しく見させる。殊に、全盛期、もとい暗黒面に頭頂部まで沈んでゐた時期の清原和博ばりの顔面圧力で、チープか陳腐なギャグも底の抜けたシークエンスをも、異様な説得力で圧着せしめるケイチャン(ex.けーすけ)の働きは出色。古くはジミー土田なり十日市秀悦といつた、三枚目の不器用な純情を感動的に放ち得るタレントの不在は地味でなく厳しいとしても、飛び道具としては捨て難い。一欠片の中身もない展開から、今時二人の小指を結ぶ運命の赤い糸だなどと、苔生したモチーフを臆することなく撃ち込んで来ての、無理から捻じ込むナベモーションにはそれでもグッと来る。さうはいへ、ナベシネマは一見何時も通りのナベシネマなのだが、軽いといふか薄いといふか、些か雑な印象はなくもない。エクストリームに撮りあげた締めの絡みを経ての、チョロいオチに突つ込みを入れて終る軽妙なラストには、師匠である深町章のテイストも透けて見える。ここいらの円熟の境地でファンタ要素を一切排した、コッテコテの艶笑譚も見てみたい気持ちも過りかけたが、ところがさうなると流石に、今時の七十分は幾分長過ぎる。


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