真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「痴漢通勤快楽 みだらな車内」(2000『痴漢電車 ゆれて絶頂5秒前』の2003年旧作改題版/製作:関根プロダクション/配給:大蔵映画/監督:関根和美/脚本:金泥駒・関根和美/企画:桜井文昭/撮影監督:柳田友貴/助監督:竹洞哲也/編集:《有》フィルムクラフト/音楽:ザ・リハビリテーションズ/監督助手:森角威之/撮影助手:村田博志/照明助手:松島秀征/タイトル:ハセガワタイトル/効果:東京スクリーンサービス/出演:彩香《新人》・中村杏里・浅丘由実《新人》・達花和妃・飯島大介・やまきよ・町田政則・山内健嗣・岡田謙一郎・熊本輝生・亜希いずみ・城春樹/友情出演:上野太・佐々木基子・佐藤樹菜子・篠原さゆり・村井智丸・山田荘太郎)。出演者中、ポスターに名前が載るのは山内健嗣までと城春樹。
 テレビ局に勤める―この設定にはほんの掠つた程度しか意味はない―武男(城)には妄想癖があり、同僚の由美(彩香)が痴漢の被害に悩んでゐることを知ると、勝手に彼女をガードすることを決意する。と一々粗筋を掻い摘んでみることも特にはないやうな、十打数の内の九打席の、関根和美が肩の力を抜いて、といふか抜け切つて。腰まで砕けてしまつたのではないかといふくらゐに、あへて最大限好意的に評するならばフランクな映画である、フランクな映画といふのは何なんだよ。
 武男が痴漢と間違へ取り押さへた二人組・太(町田)と郁雄(山内)は実はゲイ・カップル、憤慨し武男を殴り飛ばさうとする郁雄を太が抑へる。「誰にでも間違ひはある」、と太は武男を許す。但し、二回目は「掘つちやふよ」と耳をペロリ、別れ際の台詞は「ハスタラビスタ・ベイビー」。
 由美は電車通勤を断念、初日は朝五時に起きて自転車で通勤。も、自転車に乗れなくて遅刻(非道過ぎる・・・)。次の日は四時に起き走つて通勤、今度は途中で足が攣つてしまひ矢張り遅刻。く、下らないにもほどがある。平素世の中でバカ映画と称されてゐる、どんな映画にも劣るとも勝らない。その癖に、あれれ?どうして俺はそれを案外普通に楽しんで観てゐるのだ?そこまで疲れきつてゐるのであらうか。仕方がない、是非を確かめるべく、後日もう一度観に来よう。と、リアルタイム公開時に既に数回は観てゐる。そんな何度も何度も観る映画では決して全くないことは、力強く爽やかな笑顔でいふまでもなからう。 
 この映画―に限らないが―撮影の柳田友貴大先生も凄い。平気で登場人物の顔がフレームから切れてしまつたり、突然ピントが合はなくなつてしまつたりする。ある意味凄い、別の方向でのみ凄い。ファインダーを覗かずにキャメラを回してゐる、とすら囁かれる所以である。
 痴漢電車といふことで、セットを使用しての車内パートが―当然―設けられるが、乗客要員のカメオが徒に豪華。佐々木基子や篠原さゆりがすぐ側に居るといふのに、どうして浅丘由実を痴漢しなくてはならないのか、といふ疑問には敢て触れない。

 ところで今作は2000年の、恒例大蔵正月痴漢電車。今作封切りの約三ヶ月後、監督:関根和美&脚本:金泥駒(=小松公典)のコンビはピンク史上、ではない。アーネスト・ボーグナインとベッツィー・ブレアの「マーティー」よりももどかしく、ティム・バートンとジョニー・デップの「シザーハンズ」よりも切ない、そして全てを超えて美しい。日本映画で最も美しい映画、「淫行タクシー ひわいな女たち」を世に送り出す。更にその二ヶ月後には林由美香版「ナースのお仕事」、「エッチな天使 ねっちゃり白衣」を発表する。

 以下は2014年のこの期に及ぶ再見に際しての付記< 単にシリアスなドラマならば時に当たることもあるものの、下手の横好きのサスペンスより、関根和美はグッダグダの脱力コメディが矢張り面白いと再確認した次第。スッ飛ばした配役を加筆すると、浅丘由実は、篠原さゆりと佐々木基子に挟撃された格好の武男が痴漢する羽目になる久美、瑣末な蓋然性なんぞ気にするな。亜希いずみと熊本輝生は、妄想の中で武男が御厄介となる婦警と刑事。飯島大介は武男とは同期の部長・健治で、達花和妃は由美の大分年上の同僚・良江。中村杏里は武男の細君・葉子、やまきよは武男が頻繁に金を借りる後輩・幸長。山田荘太郎が特定出来ないが、岡謙と友情出演勢は乗客要員、全員潤沢に見切れる。


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