真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「秘技四十八手 枕絵のをんな」(1994/製作:プロデュース文花・小川企画プロダクション/配給:大蔵映画株式会社/監督:小川和久/脚本:高山銀之助/プロデューサー:林孝/監修:青木信光/撮影:伊東英男/照明:内田清/美術:佐藤昭介/助監督:石崎雅幸/衣裳:大和衣裳/美粧・結髪:奥松かつら/編集:㈲フィルム・クラフト/音楽:OK企画/スチール:津田一郎/監督助手:井戸田秀行/撮影助手:郷弘美/照明助手:佐野良介/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学/出演:水鳥川彩・岸加奈子・藤崎あやか・久須美欽一・杉本まこと・野上正義)。
 江戸の泰平を文化方面から適当に素描する岸加奈子のナレーションを経て、一分過ぎにタイトル・イン。ここでの背景の異常に豪華な映像は、何処から引張つて来たバンクなのか。札差の蓑屋波衛門か浪衛門(野上)と、人妻であつたのを蓑屋が強引に金の力で妾にしたおまき(岸)の絡みをタップリと通過した上で、浮世絵師の喜多川歌国(久須美)は、娘(一切登場せず)の嫁入り道具にと蓑屋から枕絵の注文を受ける。浮世絵師にとつて大物パトロンである蓑屋を喜ばせるべく、逆からいへば万が一にも機嫌を損なはぬやう枕絵のアイデアに悩む歌国は、弟子の歌吉か歌良か歌由、歌好かも(杉本)が純情交際する、初物確定の町娘・おえい(水鳥川)に目をつける。歌国が思ひ至つたのは、男を知らぬ生娘が次第にその味を覚えて行く過程。師匠におえいを女にすることを仰天要求されるも、逡巡した歌吉は情けなくも逃走。仕方なくといふか何といふか、兎に角歌国が自ら一肌脱ぐ一方、懇意の遊女・おみよ(藤崎)の下に転がり込んだ歌吉は、おみよが得意とすると豪語する四十八手にヒントを得、絵筆を執る。だから、それどころぢやないだろ。
 何故かといつては何だが、ここに来てDMMのピンク映画chが続々と小川和久を新規投入してゐる椿事に素直に釣られてみた、1994年全十作中第一作。となるとピンク映画chさんには、関根和美の拡充もお願ひしたいものである。見たところで腰しか砕けないのは承知ないしは覚悟の上で、「未来性紀2050 吸ひ尽す女」(1998)と「制服淫ら天使 吸ひ尽す」(1999)の、「ターミネーチャン」シリーズを是非とも改めてキチンと通つておきたいのだ。それと小川和久に話を戻すと、この期に及んで間が抜けるにもほどがあるが、欽也と和久の関係は、要は現在欽也がex.和久といふ把握で正しいのであらうか。
 大量の編纂ポルノで御馴染みの、青木信光大先生―山Pこと山下智久の祖父であることには驚いた―の御名をも監修に戴いた、繚乱の江戸を舞台とした本格時代劇ピンク大作、本格?大作!?好き者の富商に依頼された浮世絵師が、趣向を凝らした枕絵に挑む。直球勝負の素直な物語まではいいとして、和服を着せた六人の、髪も綺麗に結ふまでが正しく関の山。日本家屋と数室の和室のほかには、最低限無駄なあれこれが映り込まない何処ぞの海岸のみ。清々しいまでに貧弱なロケーションはバジェットの然程でもなさを正直に白状し、鬼畜な歌国が弟子の女を手篭めにし、一方歌吉は女郎相手に試行錯誤を勝手に同時進行させる。までが展開上も関の山で、考証的な枝葉ばかりは徒に饒舌な反面―この辺りに、青木先生の影が窺へるのか―本筋はスッカスカに物足りない脚本を、ひたすらな濡れ場で繋ぐ水増しに終始する始終には、ある意味での潔さならば濃厚に漂ふ。尤も、三番手の覚束ない口跡に耳を塞げば超強力な三本柱と、細疵も見当たらぬ安定した男優部。布陣はほぼ完璧であるだけに、細かい贅沢をいはなければマッタリとそれなりには心豊かに楽しませる。

 因みに、小川欽也2006年第一作「美人セールスレディ 後ろから汚せ」(主演:@YOU)に於いて、平川直大に求婚された@YOUが映画丸ごとを放り投げ手放しで喜ぶクライマックス。@YOU宅を訪れた平川直大が指輪ともうひとつ持参するのが、今作のVHSである。パッケージにボカシがかけられる大人の事情はよく判らないのでさて措き、使用されるのはおみよV.S.歌吉戦と、まぐはゝせたおえいと歌吉に、歌国が筆を走らせる二幕。


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