真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「淫臭パンティー 味は十人十色」(1995『使用済み下着』の2011年旧作改題版/製作:シネマアーク/提供:Xces Film/脚本・監督:北沢幸雄/企画:業沖球太/製作:奥田幸一/撮影:守屋保久/照明:渡波洋雪/音楽:TAOKA/編集:北沢幸雄/助監督:瀧島弘義・小谷内郁代/撮影助手:有賀久雄・松井勇剛/照明助手:藤森玄一郎/メイク:鷲野早苗/ネガ編集:酒井正次/効果:東京スクリーンサービス/出演:河名麻衣・池島ゆたか・小川真実・渡辺茜・小林節彦・佐瀬佳明・野上正義)。各種資料にある照明の渡波洋雪とは、洋行の誤記ではないのかとも思つたが、本篇クレジットにあつても洋雪。そこから既に仕出かしてゐるのかも知れないが。
 テレクラを介して知り合つた、家出女子高生の松本理沙子(河名)と、川辺肇(池島)がホテルに入る。理沙子がシャワーを浴びる隙に、川辺は脱ぎたてのパンティーをくすねる。それは川辺の抑へきれぬ性癖で、なほかつ下着偏愛が妻・冴子(小川)の逆鱗に触れた為に追ひ出され、カプセルホテル住まひをしてゐる身だつた。対して理沙子は過干渉な父親と、そんな夫のいひなりな母親とに嫌気が差し、家を出て来てゐた。所変り冴子一人の川辺家、居間のゴミ箱には、大量のスナック菓子の包装が散乱する。離婚も見据ゑ肇を叩き出したまではいいものの、欲求不満と精神的ショックとから、冴子は過食症の症状に陥ゐつてゐた。その夜はそのままホテルで明かした理沙子と出勤する川辺は、再会を約し一旦別れる。一方、冴子は大学時代の恩師である、奥水女子大心理学教授・松本邦雄(野上)に接触、目下悩まされる肇との騒動を包み隠さず相談する。ここまで、キュートでアクティブな女子高生ヒロインに河名麻衣。相手役を努める、幾分以上の屈折も抱えへつつ、心優しき中年男に池島ゆたか。男を排斥した鋭角の陰に、弱さも併せ持つ妻に小川真実。そしてかつての教へ子に頼られる、鉄壁のロマンス・グレーぶりを誇るインテリ老紳士に野上正義。滑らかな序盤の推移に気付かされることもなく通り過ぎかねないが、ここまで四本柱の配役は、感動的なまでの完成度を誇る。仕事終りの川辺と、理沙子は二夜続けて合流する。ところがしがないサラリーマンにホテル暮らしは矢張り厳しく、川辺には最早持ち合はせが無い。仕方がないので、理沙子が川辺も伴なひ転がり込むのは、元々世話になつてゐた、高級コールガール・山野愛(渡辺)が住居兼仕事部屋とするシティ・ホテルの一室。ここで初めて、ほぼ磐石の出演陣に、僅かな穴が開く。首から下は兎も角、渡辺茜の洗練度を明確に欠く容貌は、役柄上少々厳しい。ここは岸加奈子か沢田夏子といつた、超絶美人を連れて来て貰へればいよいよ完璧であつたのだが。話を戻して、ところが折悪しく客の来訪予定があり、二人は再び夜の街に放り出される。そこで小林節彦が、愛の部屋に現れる客。愛を“スケベな社長の奥さん”に模した頓珍漢なプレイ内容の、薮蛇ぶりは御愛嬌である。そんな中、冴子に乞はれ自宅を訪れた松本教授は、求められるままに一線を越えてしまふ。
 北沢幸雄の精緻なメガホン捌きが冴えるスマートな、寧ろスマート過ぎるくらゐの一作。二組の男女がホテル街で交錯し、二つの因縁が十字砲火を華麗に轟かせる中盤の強度は圧巻。但し、あくまで尺をそこから先にそれなりに残す以上、起承転結の方法論に即していへば、その輝く頂はされども転部に止まる筈だ。以降に更なる決定的なもう一手間を設けることもなく、いはば長いエピローグを費やしながらなだらかな着陸を果たす終盤には、物足りなさを覚えなくもない。北沢幸雄の都会的な円熟を深く味はふことのみによつて良しとするや、あるいは標準的な物語構造を有した劇映画を求めるのかによつて、大きく評価も分かれようか。

 キャスト残る佐瀬佳明は、一件がひとまづ収束してからの数ヶ月後、家には戻つたとはいへ相変らず奔放な日々を送る理沙子の、援助交際相手。俳優部からの濡れ場要員を、全くそつなく務める。


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