真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「盗撮 レイプの瞬間」(1990『制服盗聴魔 激射・なぶる!』の2010年旧作改題版/製作:獅子プロダクション/提供:Xces Film/監督:佐藤寿保/脚本:五代響子/撮影:稲吉雅志/照明:小川満・牧哲也/編集:酒井正次/助監督:梶野考/製作担当:瀬々敬久/監督助手:榎本祥太/撮影助手:片山浩/照明助手:星野尾光/スチール:佐藤初太郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:森村あすか・滝沢薔・中村京子・上原奈々美・加賀恵子・今泉浩一・松村とおる)。インダストリアルな劇伴を鳴らす音楽担当を、ネイキッドシティー(もしくはネイキッド・シティ?)とする資料も存在するが、少なくとも、その旨本篇クレジットには載らない。
 この街には全てがある云々と、中途半端に思はせぶりなばかりで覚束ないモノローグを振り回しながら、制服姿の女子高生・皆川裕子(森村)が東京の雑踏にビデオカメラを向ける。それが裕子の、趣味ないし日常であつた。こゝで加賀恵子は、公衆トイレでの排尿を盗撮される女。場面変り、メディア露出で世間にも広く知られるカウンセラー・矢島美佳理(滝沢)が開設する「WOMAN'Sカウンセリング」。病的な潔癖症の人妻・村上ユミ(中村)が、早速部屋の空気に神経を尖らせつつ美佳理の相談援助を受ける。目の下の隈、扱けた頬。単なる当時そこら辺の若い娘にしか映らず、とてもではないが専門的素養を持つたプロフェッショナルには見えない滝沢薔に対し、中村京子の神経質な病人―に見え―ぶりが尋常ではない。一方、室内には隠しマイクが仕掛けられ、兼住居の別室では美佳理の弟で内向的な浪人生・海里(今泉)が、暗がりの中二人の遣り取りに耳を傾けてゐた。「WOMAN'Sカウンセリング」を辞すユミを、海里は尾行し、更にその後ろを、偶々居合はせた裕子がビデオを回し回しついて行く。海里が、捕獲したユミを御丁寧にもゴミ捨て場に連れ込んだ上で、こつ酷く陵辱する模様を裕子は撮影する。だから病的な潔癖症だといふ女に、わざわざ生ゴミをぶちまけ事に及ぶこの件が、作中最も壮絶。尤も、本来女の裸を楽しませるのを主眼とするピンク映画にしては、勃たせる勃たせないといふよりは、最早全く異なる領域に突入したエクストリームであつたりもする。犯されてゐることになのか、それとも生ゴミを浴びせかけられたことに対してなのか、兎も角両手で顔を覆ひ過呼吸の状態を予想させ狂乱する中村京子の姿に、性的興奮を覚えるのはとりあへず当サイト的には甚だ難い。帰宅する海里が「WOMAN'Sカウンセリング」に消えたのを確認した裕子は、話を聞いて欲しい風を装ひ、日を改め美佳理を訪ねる。当然それを察知した海里は、半ば待ち構へる裕子に接触。強姦男を相手に裕子は怯むでなく、犯行の証拠となるビデオテープを盾に、海里と一種の共犯関係を結ぶ。
 配役残り松村透、爆発村とおる、爆発村とをると時と場合により名義があちこち変るのが正直面倒臭い松村とおるは、美佳理に金で買はれ、好きなやうに蹂躙されるホスト・和彦。秘かに目撃した海里が未だ囚はれる、美佳理がレイプされた過去の呼び水ともなるとはいへ、以降本筋に絡まないどころか登場しすらしない和彦と美佳理との濡れ場は、正味な話どうしても必要なものにも別に思へない。女ならば兎も角、男の裸を余計に見せる必要はなからう。中村京子とは無造作に対照的に、特に悩みを抱へた様子にも清々しく見えない上原奈々美は、美佳理にオナニー狂ひを一応相談しはする女子大生・真理子。海里とともに真理子の後を追つた裕子は、海里に真理子をまるで犯させたかの如き凶行を、ビデオに収める。
 忌はしい事件に歪められた姉弟の織り成す複雑な渦の中を、街撮り好きの女子高生がキュートに駆け抜けて行く。大体はさういふ趣向の、屈折した青春映画ともいへるのだが。深くか浅くか、乾いた世界を切り取る裕子のビデオカメラ。レイプされた際に美佳理が履いてゐた、現在は実は海里が所有する血塗られた赤いハイヒール。そしてレイプ犯に切り裂かれた女の足首から、闇雲に流れ落ちる鮮血。あれこれモチーフはバラ撒かれるものの、全体的な一本の物語としての統合力は些かどころでなく弱い。そのためそれらしき雰囲気を漂はせはする程度で、最終的には踏み込みが足らず漫然とした印象に止(とど)まる。小憎らしいまでに自身の表情の作り方を熟知した、当代のAVアイドル・森村あすかには二十年後の現代の目からも、時代の移り変りを越え得る決定力が確かに輝く。反面、明るさなりポップさとは凡そ無縁の展開が、終盤に至るや無闇な流血量で静脈色に染められる様を眺めるにつけ、苦しいも何も、そもそも佐藤寿保にも初めから、アイドル映画なんぞを撮らうといふ気はさらさらあるまい。バイオレンスだスラッシュだと、よしんば形式的にでも佐藤寿保らしさが窺へれば満足出来る向きにならば兎も角、さうでなければ、直截に捉へ処に欠いた一作ではある。

 新東宝ならば兎も角エクセスにしては珍しく、実は今作、1997年に同じ改題で、既に一度旧作改題されてゐたりもする。旧新題ママによる二度目の新版公開―徒にやゝこしいな―といふのも、あまり聞かない話のやうな気がする。


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