真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「床屋の後家さん いぢられ好き!」(2000『未亡人理容室 痺れる指先』の2008年旧作改題版/製作:フィルム ハウス/提供:Xces Film/脚本・監督:坂本太/企画:稲山悌二/プロデューサー:伍代俊介/撮影:創優和/照明:小野弘文/編集:金子尚樹 ㈲フィルムクラフト/照明助手:藤塚正行・海沼秀悦/助監督:高田亮・城定秀夫・笠木望/制作担当:真弓学/ヘアメイク:パルティール/スチール:本田あきら/タイトル:道川昭/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:島田綾・村上ゆう・佐々木基子・やまきよ・前川勝典・久須美欽一)。
 未亡人の浅田晴海(島田)は遺影すら見切らせない亡夫を、半年前に腹上死で喪つた。夫の遺した理髪店「理容室アサダ」を女手ひとつで切り盛りするものの、常連客といへば共に若後家の晴海を狙ふ、八百屋でこちらは男寡の樋口真悟(やまきよ)か、度外れた妻・恭子(佐々木)の性欲に手を焼くお好み焼き屋の高田久志(前川)ばかり。店と家を担保に町内会長の佐々木宗太郎(久須美)から借りた借金の期限も迫り、晴海は厳しい日々を送つてゐた。そんな折、結婚して家を出た晴海の妹・麗奈(村上)が、離婚したと捨てた筈の町に不意に戻つて来る。
 朝昼晩一日三回、といふか要は終日の妻の求めに終に屈し、不能になつてしまつた高田が恭子を伴ひ晴海―の肉体―を頼つて来たりもしつつ、最終的には麗奈発案の殆ど理髪もそつちのけの本番違法サービスで晴海の店には行列が出来るとかいふ物語は、桃色人情喜劇としてあまりにも鉄板。鉄板過ぎて新味の欠片もないが、さういふ付き合ひの悪いことを言ひ出す御仁は、図書館が所蔵するアジア映画でも観に行かれてゐればよからう。近代的な一夫一妻制の欺瞞に攻撃を加へ、乱婚制を通して大いなる人間賛歌を謳ひ上げ、てゐたりなんかする訳でも無論ない   なら書くな
 詰まるところは新田栄とやつてゐることは殆ど、といふか全く変りはしないのだが、流石に幾分以上に、テンポ宜しく一息に観させる仕上がりにはなつてゐる。尤も、カウンター席の鉄板にお好みを焼き焼き客からは冷やかされながら、半裸の恭子に尺八を吹かれる高田、などといふシークエンス相手に一々立ち止まつてゐては逆にこちらの負けだ。馬鹿馬鹿し過ぎて却つて具はつた攻撃力を、おとなしく愉快に楽しむくらゐの大らかさも時には必要であらう。ルーチンワークとまでいふのは些か言葉が過ぎるかも知れないが、かといつて別にそれでも構はないのかも知れない。とはいへ定番の上へ下への大騒ぎ、といふか要は腰から下が大騒ぎ商店街映画としては、ほぼ過不足ない99点の快作。何もないといへば何もないが、これでいいといへば、これでもいい時もあるのではないか。
 樋口の父親、晴海・高田のそれぞれの店の客として若干名登場。樋口の父親役は、そのままロケ先八百屋のリアル大将かも。晴海に本当に丸坊主に刈られてみせるのは、城定秀夫でも笠木望でもないところを見ると、高田亮?心なしかションボリしてゐるやうにも見えるのは気の所為か。それと急激な瑣末ではあるが、高田が恭子に尺八を吹かれながら焼くお好み。関西風だからまだ為せる技か、といふのも兎も角、少々油が多過ぎるやうに映る。

 ところで、先に“ほぼ過不足ない99点の快作”と述べた、一点の減点材料とは。麗奈のファースト・カット、商店街の街並みにそぐはない華美な毛皮のコートで登場するや、「相変らずシケた町ね!」と容易に予想し得るお約束の台詞をキメる。そこで、残念ながら村上ゆうのアフレコが別人である。村上ゆうのお転婆ぶりに当て書きしたかの如きシークエンスだけに、出来れば本人の声で聞きたかつた。


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