真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「暴行・トイレの中で」(昭和59『好奇心レイプ』の多分VHS題/製作・配給:新東宝映画/監督:稲尾実/脚本:池田正一/企画:伊能竜/撮影:志賀葉一/照明:守田芳彦/編集:酒井正次/助監督:渡辺元嗣/監督助手:笠井雅裕/撮影助手:片山浩/照明助手:中野智春/編集助手:岡野弘美/録音:東音スタジオ/現像:東映化学/出演:河井憂樹・田口あゆみ・藤冴子・花日米子・大貫百子・ジミー土田・池島ゆたか)。監督の稲尾実は深町章の前名義、企画の伊能竜は向井寛の変名で、撮影の志賀葉一はa.k.a.清水正二。池田正一ものちの高竜也らしいけれど、まだ活動してるのかな?近作が出てゐる形跡が見当たらない。昔エグみを気に入つて、砂戸増造をよく読んでゐた。胸一杯の、知らんがな(´・ω・`)感。
 閑話休題―午後―八時過ぎの目覚まし時計、双眼鏡のアップにタイトル・イン。寝室の窓越しにセックスする河井憂樹×池島ゆたかと、その模様を窺ふ双眼鏡を行つたり来たり。濡れ場は中途で九時過ぎ、多分浪人生か何かその辺りぽい、双眼鏡氏の部屋。薄明るいのは、翌日の早朝か。赤いショートカットのコンバースが、獲物を探し彷徨ふ。双眼鏡氏といふか双眼鏡クン(ジミー)が、笠井雅裕と抱擁を交し別れた黄色いワンピースの女(花日米子か大貫百子)を襲ふ。白昼、クソよりダサいトレーナーでぶらぶらする双眼鏡クンは、常日頃池島ゆたかとの情事を覗いてゐる河井憂樹を街中で目撃、津田スタの自宅まで尾ける。近所のタバコ屋兼「高野文房具店」と電話帳を頼りに、双眼鏡クンは河井憂樹の個人情報を特定。荒井英吉(影ひとつ登場せず)の妻・怜子(河井)が、英吉が毎週泊りがけのゴルフで家を空ける土曜日、池島ゆたか宅に通ひ逢瀬する外堀まで埋める。双眼鏡クン・ミーツ・怜子の件で一点通り過ぎられないほどに衝撃的なのが、改めて爆裂するジミ土の短足。
 池島家(仮称)を出歯亀しては、発奮して強姦するのが双眼鏡クンのエクストリームな日常なのか、配役残り田口あゆみは、劇中二人目となるチャリンコの女。大貫百子か花日米子が、ナベとのドライブの最中尿意を覚え墓地で野ションしてゐると、ダイナミックな構図で飛びかゝる双眼鏡クンに襲撃される女。そんなところで用を足してゐるからだ、藤冴子は四人目の赤いワンピースの女。
 何故お気に入りに入れてゐたのか自分でも謎な、稲尾実昭和59年、案外少ない最終第五作。河井憂樹の濡れ場は腰を据ゑて見せる反面、残りは早朝なのかもしかするとほぼ二十四時間経過した夕暮れ時なのか、どちらにせよ薄暗いのと激しく動くか表情を苦悶に歪めるに終始するゆゑ、女優部の特定にも困難を覚える。とまれ二番手以降の絡みは何れもハードで、深町章かと思ふとなほさら予想外に、乾いたカットを意図的に叙情を廃して繋ぐソリッドな裸映画。正しく勝利の美酒に酔ふ双眼鏡クンが迎へる、スカッと呆気ない最期も全く以て類型的なものながら、それなりの綺麗さで形になつてゐる。

 とこ、ろで。双眼鏡クンが女を犯すのは、そこら辺の野外か物置風の小屋か廃車?の車内。と、遂に乗り込んだ荒井家。即ちトイレの中で、暴行するシークエンスなんて一欠片たりとて存在しない件、何を考へてこんなタイトルつけたんだ。ジャケにはエレベーターといふ単語も躍るが、普通に乗るエレベーターさへ出て来ない、自由気儘すぎる。


コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )