ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

地方拠点強化税制の延長希望

2019年09月06日 06時00分00秒 | 国際・政治

 先週の金曜日、つまり2019年8月30日の朝日新聞朝刊4面14版に「企業の地方移転促す税制 内閣府 利用想定1417件→9件に」という記事が掲載されていました(https://digital.asahi.com/articles/DA3S14157802.html)。

 地方拠点強化税制については内閣府地方創生推進事務局の「地方拠点強化税制(地方活力向上地域等特定業務施設整備計画の作成等)」を御覧いただきたいのですが、主なものとしては設備投資減税(法人税)、雇用促進税制(法人税)および地方税(不動産取得税、固定資産税、事業税)の免除または減免があります。いずれも、東京23区地区内に本社を置く企業が他の地方に本社を移転する場合、同じく東京23区地区内に本社を置く企業が他の地方における機能を拡充する場合、東京23区地区外に本社を置く企業が他の地方(東京23区内でない所)に本社を移転する場合などに適用されます。

 ところが、と記しても実は当たり前のことかもしれませんが、利用件数が少なすぎるのです。2017年度の実績見込みは6件でした。同年度の実績および2018年度の実績は上記記事に書かれていませんが、2018年度の想定利用件数は1417とされていました。実に約236倍です。さすがに、2018年度の税制改正要望をチェックした総務省も乖離を指摘せざるをえなかったようですが、内閣府は修正もせずに要望を出したようです。結局、財務省との折衝で取り下げざるをえなくなったそうです。

 そこで、内閣府は、2020年度税制改正に向けての税制改正要望において想定利用件数を9件とし、その上で2年の延長も盛り込んだとのことです(現行の制度は2019年度末に終了するため)。

 それにしても、想定利用件数が9件とは、どの程度の規模の企業を対象として想定したのかと問わざるをえません。東京23区内にいくつの企業があるのか知りませんが、東京証券市場一部上場企業に限定してもかなりの数になるでしょう。大企業、有名企業でも非上場企業はたくさんありますし、中小企業を含めたら何万社となるでしょう。

 むしろ、何故に東京23区内に本社機能が集中したのかをまずは考える必要があるでしょう。21世紀に入って間もない頃、IT革命だの何だのと騒がれていた時に、本社機能の集中、支店の統合などは言われていたはずです。勿論、高速道路網の整備、新幹線路線網の整備なども原因としてあげられていました。ストロー現象という言葉も度々登場していたのです。

 税制に限らず、地方創生という政策には場当たり的としか言いようがない部分が目立ちます。

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