ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

高津駅(DT09)で東急9000系9012Fと東京メトロ08系08-103Fを

2023年08月31日 19時35分00秒 | 写真

今回は、高津駅で撮影した写真です。

2番線(ホームなし)を、大井町線G各停溝の口行きの東急9000系9012Fが通過します。

1番線に田園都市線各駅停車中央林間行きの東京メトロ08系08-103Fが到着します。

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北陸鉄道石川線の命運は その3

2023年08月30日 16時21分40秒 | 社会・経済

 北陸鉄道の石川線が鉄道路線として存続することが決定したようです。今日(2023年8月30日)の12時30分付で、NHKのサイトに「金沢市と白山市を結ぶ北陸鉄道石川線 鉄道として存続決まる」という記事(https://www3.nhk.or.jp/lnews/kanazawa/20230830/3020016313.html)が掲載されています(ニュース動画も視聴できます)。

 やはり、バスの運転士不足のため、バス転換は見送られたとのことです。

 ただ、石川線については、今後も存廃を巡る議論が行われる可能性があります。「その2」において扱った「抜本的な改革案」を検討し、長期的に取り組むべき時点に来ているのではないでしょうか。

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北陸鉄道石川線の命運は その2

2023年08月30日 13時45分00秒 | 社会・経済

 「北陸鉄道石川線の命運は その1」において、石川線のBRT化について記しました。今回は、石川線を鉄道路線として残すというもう一つの選択肢について記しておきます。但し、「その1」において記したように、現在のままでは常に存廃問題が伴い続けることとなります。

 そのことは協議会も認識しており、鉄道路線として残すという選択肢を採るには「抜本的な改革案」を実現し、石川線の姿を変えることが必要であるというのが、石川県や沿線自治体の理想あるいは意識なのでしょう。最大の問題は費用の捻出ですが、国、石川県、沿線自治体、北陸鉄道のそれぞれの立場はいかなるものでしょうか。

 北陸放送のサイトに掲載されている「日常の足はどうなる? 北陸鉄道石川線 存廃のゆくえは…」という記事(https://newsdig.tbs.co.jp/articles/mro/689561?display=1)には「抜本的な改革案」として「北陸本線に直接繋げる」および「野町駅から香林坊へ延伸させる」の二つが紹介されています。記事の表現からすれば、どちらを選んでも「利便性が高まることで利用者は現状の1日およそ3000人からおよそ4000人に増える予測もでています」とのことですが、甘い予測ではないのでしょうか。また、選択肢によって予測の内容も異なるはずですので、少々粗いという印象を受けます。

 まず、「北陸本線に直接繋げる」という案は、西金沢駅(北陸本線)・新西金沢駅(石川線)の接続を行った上で、石川線の車両を北陸本線に乗り入れさせ、金沢駅まで走らせるというものです。金沢駅には北陸新幹線の全列車が停車しますし、北陸鉄道浅野川線との乗り換えも可能となります(北鉄金沢駅という地下駅です)。場合によってはさらに浅野川線にも直通運転を行うことができるかもしれません。いずれにしても、金沢駅まで運転されるのであれば、利便性が高まることは否定できません。

 しかし、この案を実現するには、いくつかの課題を解決しなければなりません。

 第一に、北陸本線と石川線は、軌間(2本のレールの幅)が1067mmで共通しているものの、電圧が異なります。北陸本線は交流20000Vで60Hz、石川線は直流600Vです。北陸鉄道の側で交直流電車を製造するというのは非現実的ですし、JR西日本から譲渡を受けられるかどうかもわかりません。おそらく、JR西日本のほうでは石川線への直通運転を行う意思はないでしょうし、そもそも2024年3月に予定されている北陸新幹線の金沢駅・敦賀駅間の開業によって北陸本線の大聖寺駅から金沢駅までの区間はIRいしかわ鉄道に移管されることとなっており、IRいしかわ鉄道が石川線への直通運転を行う意向があるという話を聞いたことがありません。あるいは、IRいしかわ鉄道と石川線との直通運転についてはこれから検討されるべき事項であるのかもしれません。

 電圧の違いを克服するには、金沢駅から西金沢駅・新西金沢駅まで、北陸本線とは別に単線を敷いて延長させるという手も考えられますが、実際のところは無理でしょう。そうすると、交直流電車か気動車かということになります。IRいしかわ鉄道は、JR西日本から譲渡された521系という交直流電車を保有しており、気動車は保有していません。これに対し、北陸鉄道は交直流電車も気動車も保有していません。つまり、どちらを導入するとしても、北陸鉄道の側に何億円という費用が生じます。石川県や沿線自治体は補助を行うつもりなのでしょうか。

 第二に、直通運転を行うとする場合の車両使用料の負担です。これは上記北陸放送記事に書かれていない問題なのですが、無視はできません。IRいしかわ鉄道と石川線との相互直通運転が行われるならば、相互乗り入れ区間の設定やダイヤ作成によって、車両使用料を相殺することが可能です(首都圏などでよく行われている相互直通運転は車両使用料の相殺が前提となっています)。これに対し、石川線の車両がIRいしかわ鉄道の西金沢駅から金沢駅まで乗り入れるだけである、つまり片乗り入れであるならば、IRいしかわ鉄道の側のみに車両使用料の負担が生じます(例として京都市営地下鉄東西線があります。同線の車両は京阪京津線に乗り入れませんが、京阪京津線の車両は東西線の御陵駅から太秦天神川駅までの区間に乗り入れるので、京都市交通局の側に車両使用料が生じます)。IRいしかわ鉄道が片乗り入れを受け入れるのかどうかが問われることでしょう。なお、IRいしかわ鉄道に北陸鉄道が出資しているかどうかは不明ですが、少なくとも大株主でないことは確かです。

 (ちなみに、片乗り入れの場合、北陸鉄道の運転士がそのまま西金沢駅から金沢駅までの区間にも乗務するというのが最も現実的ではないかと思われます。)

 第三に、上記北陸放送記事において「新幹線橋脚間の線路敷設」があげられています。具体的なことがよくわからないのですが、北陸本線の西金沢駅と石川線の新西金沢駅との間に北陸新幹線の高架橋があり、その橋脚の間に石川線と北陸本線とを結びつける線路を敷設する必要があるということでしょう。おそらく単線でということになりますが、敷設場所、費用負担の問題ということになるはずです。

 第四に、上記北陸放送記事において「JR側のダイヤ受け入れ余地の有無」があげられています。ただ、この問題は、北陸新幹線の延伸開業を考慮すると、JR側ではなく、IRいしかわ鉄道の側と考えるべきです。現在のJR西日本北陸本線には特急「サンダーバード」や「しらさぎ」が走っていますが、これらはIRいしかわ鉄道(およびハピラインふくい)への移管によって運行区間が大阪駅・敦賀駅または名古屋駅・敦賀駅に短縮されるものと考えられます(現に、北陸新幹線の長野駅から金沢駅までの区間が開業したことにより、「サンダーバード」や「しらさぎ」の運行区間が短縮され、富山駅までは走らなくなりました)。そうなれば、IRいしかわ鉄道は普通列車主体のローカル輸送線になり、ダイヤ受入の余地は広がるものと考えられます(あとは貨物輸送との調整でしょう)。金沢駅の時刻表を見ると、平日の朝7時台には普通列車の本数が5本と多くなっていますが、8時台には3本、9時台および10時台には1本、11時台以降は2本か3本(18時台のみ4本)となっています。朝ラッシュ時が最も調整に難航するところでしょうが、それ以外の時間帯であればJR西日本北陸本線時代よりも調整が容易になると考えるのは楽観的に過ぎるでしょうか。

 第五に、これは上記北陸放送記事に書かれていないのですが、北陸本線への乗り入れが実現した場合に、石川線の野町駅から新西金沢駅までの区間をどうするのかという問題があります。この区間を完全に切り捨てるということも考えられますが、野町駅にはバスターミナルも併設されており、香林坊、片町などに向かうには野町駅のほうが近いので(にし茶屋街も野町にあります)、野町駅および西泉駅を存続させるという手もあります。第四の課題との関連もあって、野町駅から新西金沢駅までの区間は存続させることが想定されているのかもしれません。

 ここまで、「北陸本線に直接繋げる」という案について述べてきました。ようやく、もう一つの「野町駅から香林坊へ延伸させる」という案について記していきます。

 何時のことか覚えていませんが、たしか、浅野川線の北鉄金沢駅から石川線の野町駅までの鉄道路線を建設するという構想があったはずです。北鉄金沢駅が地下化された理由も、この構想に関係があったのかもしれません。具体的なルートはわかりませんが、香林坊などに地下駅を設置するというものではなかったでしょうか。実現していれば、石川線の利便性はかなり高くなったはずですが、やはり会社の収益、地方自治体の財政状況などによって構想のままで終わったものであろうと考えられます。

 「野町駅から香林坊へ延伸させる」という案は、北陸新幹線などとの接続がなされないままであるという点において中途半端ではありますが、中心街活性化策との関係があるのかもしれません。金沢駅まで新線を建設するよりも現実的ではあります。ただ、石川県や沿線自治体などで構成する協議会において示された案を見ると、少なくとも野町駅から香林坊駅(勝手に仮称を付けます)まではLRTとすることが前提になっているようです。

 上記北陸放送記事においては「野町〜香林坊間延伸の主な課題」として、「犀川大橋の単線敷設による運行本数制限」、「一般車両への影響」、「低床車両導入に伴うホームの改修など」があげられています。3番目の課題は明らかにLRTを想定したものです。現在の石川線には元東急7000系(東横線、田園都市線などで運用されていた)および元京王3000系(井の頭線で運用されていた)が在籍していますから、将来的にはこれらを全て廃車し、LRTに置き換えることが考えられているのでしょうか。そうなると、福井鉄道福武線、富山ライトレール(JR西日本富山港線をLRT化した)と同様の路線になるということなのかもしれません。ただ、そうなると、野町駅から鶴来駅までの各駅もLRT用としてホームを改修することになるはずですが、これもかなりの費用がかかります。

 LRT化が想定されていると考えられるのは、1番目の課題として「犀川大橋の単線敷設による運行本数制限」があげられているところからもうかがわれます。仮に現在の石川線をそのまま延伸させるのであれば、敢えて「単線敷設」や「運行本数制限」を記す必要がないからです。鉄道車両を道路の上に走らせることも不可能ではないですが、橋梁の耐荷重性を考えるならば道路とは別に鉄道専用の橋梁を作ればよく、運行本数の制限などを設ける必要もないからです。LRT化して犀川大橋の道路の上に単線で線路を敷設することが想定されているのでしょう。ただ、そうなると、犀川大橋を含めて道路の拡幅が必要になるのではないでしょうか。

 2番目の課題としてあげられている「一般車両への影響」の意味はよくわかりません。自動車のことなのか電車のことなのかもわかりませんし、上記北陸放送記事にも何ら説明は書かれていません。

 以上は「抜本的な改革案」でした。これらは長期的な取り組みを必要としますが、今後の地域公共交通の維持などのためには、真剣な検討を行うことが求められるでしょう。

 それでは、さしあたりの改善策は何でしょうか。

 上記北陸記事には「まず利便性を高めることができることは増便や石川線とバスの乗継割引を行うことです」と書かれていますが、増便したところで利用客が増えるとは限りませんから、鉄道とバスの乗り継ぎ割引のほうが現実的です。乗り継ぎ割引にも様々な方法がありますが、容易であるのは定期券およびICカード(Suica、PASMOなど)の利用です。

 北陸鉄道はICaというICカードを発行しており、少なくとも金沢市内で運行されている路線バスで使用することができます。一方、北陸鉄道のサイトによると「鉄道は、鶴来駅・野町駅(以上、石川線) 内灘駅・北鉄金沢駅(以上、浅野川線)においてICa定期のみご利用可能です。鶴来駅・野町駅、内灘駅・北鉄金沢駅以外で降車する場合は、係員に提示ください」とのことです。定期券でなければ、鉄道でICカードは使えない訳です。無人駅に簡易改札機を設けるための費用の問題などがあると思われるのですが、乗り継ぎ割引を定期券利用以外で適用したりするには、ICカードの利用を可能にする必要があるでしょう。ICaで北陸鉄道のバスを利用するとエコポイントが貯まる、複数回乗車割引が適用される、などのサービスを受けられるようです。こうしたサービスを石川線および浅野川線でも受けられるようにすることが、改善の一つではないでしょうか。

 ここまであれこれと書いて参りましたが、石川線がどのようになるのか、注目していこうと考えています。

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北陸鉄道石川線の命運は その1

2023年08月30日 01時35分40秒 | 社会・経済

 北陸鉄道の鉄道路線については、2023年3月9日12時20分00秒付の「北陸鉄道の石川線と浅野川線 上限分離方式に移行するか」において取り上げておきました。特に石川線については、鉄道路線として存続するのか、それともバス路線に転換するのかが問題となっています。どうなるのかと経緯を見ていたところ、北陸放送のサイトに「日常の足はどうなる? 北陸鉄道石川線 存廃のゆくえは…」という記事(https://newsdig.tbs.co.jp/articles/mro/689561?display=1)が、昨日(2023年8月29日)の20時39分付で掲載されているのを見つけました。

 正直なところ、YouTubeでは有名な鐵坊主さんの暇坊主チャンネルにアップされている動画「【暇坊主の動画です】北陸鉄道石川線はBRTではなく鉄道維持が濃厚。ただ、その先にあるLRT化、北陸本線乗り入れはどうなるのか?」(https://www.youtube.com/watch?v=BOgfUfYukDI)のほうが詳しく解説されている部分が多く、そちらのほうを参考にされたほうがよいのですが、とりあえず、北陸放送の記事を基にすることとします。

 石川線については、今日、つまり2023年8月30日に、沿線自治体(金沢市など)の首長と知事が話し合うこととしているようです。北陸放送の記事によれば「年間の利用者数はおよそ89万人で、そのうち49万人が通勤、通学で利用しています。実に半数以上の人が日常的に利用しているのです」とのことですが、ここで年間というのが具体的に何時のことかが書かれていません。2022年度ということなのでしょうか。また、一日平均の輸送人員がどの程度であるのか、ということも書かれていなければならないでしょう。

 北陸鉄道の鉄道事業は20年度連続で赤字が続いているとのことで、2022年度には1億8000万円ほどでした。2014年度から2017年度までは1億円未満でしたが、2018年度に1億円を超え、2020年度には2億円を超えました。2021年度も2億円程度であったようです。この2箇年度はCOVID-19の影響によるものであろうと考えられますが、2022年度も1億8000万円ほどですから、回復は遅いとも思われますが、その辺りについては詳しい検討が必要でしょう。

 多くの地方私鉄に見られる傾向として、鉄道事業の赤字をバス事業、とくに高速バスの黒字で補塡する、いわゆる内部補助によって維持することがあげられます。北陸鉄道もその一つです。内部補助がCOVID-19によって崩壊したことは多くの鉄道会社に見られる現象で、御存知の方も多いでしょう。また、バス事業の場合は燃料費に左右されるところがあり、このところのガソリンや軽油の価格の上昇(私も近所のガソリンスタンドを見て驚いています)によって収益が減少していることから、内部補助はますます機能しなくなっている訳です。もっとも、内部補助が機能しないのは昨今に限られた話でもない点には注意を要します。

 ただ、単純に石川線を廃止すればよいという話にもならないようです。私が一度だけ、起点の野町駅から終点の鶴来駅まで利用した(実際には往復しました)時は真夏の土曜日であったのでよくわからなかったのですが、この辺りは降雪地帯であり、バスよりも鉄道のほうが安定的に運行できるのです。いや、一般的に、バスより鉄道のほうが時間に正確ですから、通学客にとっては鉄道路線が残ったほうがありがたい訳です。石川県や沿線自治体による議論でも「石川線を廃止して路線バスに転換した場合、所要時間はおよそ2倍、利用者数も鉄道の半分に落ち込み、社会が被る不利益は年間6億円にもなると推計されたことなどから『石川線の廃止は好ましくない』、すなわち大量輸送手段は残すと結論付けました」とのことです。

 もっとも、「石川線の廃止は好ましくない」ということから、直ちに鉄道路線が残るということにはなりません。昨日(2023年8月28日)に開業した「ひこぼしライン」のようにBRT化するという選択肢もあるのです。「ひこぼしライン」は日田彦山線の添田駅から夜明駅までの区間を鉄道からBRTに転換した路線で、JR九州のサイトにも時刻表が掲載されています。

 赤字鉄道ローカル線の対応策としてBRTは有望な選択肢の一つと考えられることが多く、実際に「ひこぼしライン」の他にJR東日本の気仙沼線BRT・大船渡線BRTの例もあるのですが、道路交通法による規制を緩和して最高速度を上げる、バス専用道路の割合を増やす、などの方策を採らなければ、あまり意味はないものと思われます。バスが道路渋滞に巻き込まれて何十分も遅延するというのではBRTの意味がないからです。

 そればかりでなく、昨今ではバス運転手の不足がよく言われるようになりました。新潟交通が2023年4月に行ったダイヤ改正では、運転士の不足による減便が行われています。今月には、函館市と札幌市を結ぶ高速バスの減便が発表されていますし、十勝バスも運転士の不足が理由となる減便、さらには路線の廃止を実施しています。北陸鉄道のバス部門も運転士の不足状態にあり、新潟交通と同様に2023年4月に行われた「ダイヤ改正では、平日でおよそ160便、土日でおよそ200便の大幅な減便が行われて」います。本来であれば346人の運転士が必要ですが、30人が不足しているというのです。そのような状況にあるのに石川線をBRT化するならば、一層の運転士不足になり、BRTのために多くのバス路線の減便、それどころか廃止も行われなければなりません。そうなると、金沢市内も含めて大幅な路線の統廃合が行われ、公共交通機関空白地帯が多くなる可能性が高くなります。

 ここで石川線に話を戻しますと、鉄道路線を維持するならば2両編成を1人で運転することとなりますが、バスに置き換えると5台、つまり5人の運転士が必要になります。どういうことかと言えば、電車の場合は1両あたりの定員が140人から150人ほどであり(石川線を走る元東急7000系の定員がその程度であるはずです)、2両であれば300人を乗せることができます。実際には250人くらいが利用するそうですが、バス1台では50人くらいが定員であるため、5台が必要になるという訳です。勿論、ギュウギュウ詰めにすればもっとお客を乗せることはできますが、それではかなり危険なことになります。2011年3月11日に私が国際興業バスで西台中学校バス停から池袋駅まで乗った時には途中での乗り降りができないほどの超満員状態で、バス停によっては運転士が乗車拒否をせざるをえないほどでしたが、これは緊急事態であったから許されたのでしょう。いずれにしても、バスでは大量輸送ができないということです。

 それでは、運転士の不足の問題があるから鉄道路線を維持すればよいかというと、そう簡単にはいきません。

 何しろ、石川線には縮小を重ねてきた歴史があります。石川線の鶴来駅から加賀一の宮駅までの区間が廃止されたのが2009年11月1日であり、その加賀一の宮駅から白山下駅までの路線であった金名線が廃止されたのは1987年4月29日(但し、1984年12月中旬から営業休止)、鶴来駅から新寺井駅までの路線であった能美線が廃止されたのは1980年9月14日です。それぞれの路線・区間で廃止(休止)の理由は異なるのですが、やはり乗客の減少が根本にあります。さらにたどれば沿線の人口の減少とモータリゼイションの進行という、多くの地方に共通する問題があります。鉄道を利用するのは主に通学客ということになり、学校(主に高等学校)を卒業したら鉄道を利用しなくなるという人が少なくありません。これでは、石川線が鉄道として存続する限り、常に存廃問題も残ることとなってしまいます。

 また、上記北陸放送記事には書かれていませんが、実は鉄道についても運転士の不足という問題があります。たとえば、2023年5月に長崎電気軌道が減便ダイヤ改正を行っていますし、10月には福井鉄道が減便ダイヤ改正を行います。いずれも運転士の不足が理由(少なくとも一つの)となっています。また、とさでん交通の軌道路線でも、8月中旬から平日でも土休日ダイヤで運行されています。これも運転士の不足が理由です。北陸鉄道の石川線および浅野川線がどうであるのかわかりませんが、運転士の養成、運転士に必要な免許の取得のことなどを考えると、運転士不足はむしろ鉄道のほうが深刻になるとも予想されます。

 以上とは別に、石川線に特有の事情としてあげられるのが起点の野町駅です。鐵坊主さんによる上記動画においても言及されていますが、私もこのブログの「北陸鉄道石川線野町駅」で記したように、野町駅は鉄道路線の起点としては不便な場所にあります。歴史的な背景もあるので簡単には片付けられませんが、1967年2月に北陸鉄道金沢市内線という軌道線、言い換えれば路面電車が廃止されてから、他の鉄道とは接続しない駅となったのです。同様の例として、熊本電気鉄道藤崎線の藤崎宮前駅(本来は藤崎線の終点ですが、実際には藤崎宮前駅から御代志駅までの運行系統において起点駅となります)、名古屋市営地下鉄上飯田線開業前の名鉄小牧線の上飯田駅があります。

 野町駅から電車に乗り、二つ目の駅が新西金沢駅です。ここが北陸本線との乗換駅であり(北陸本線は西金沢駅)、現在の石川線では他の鉄道路線との接続がある唯一の駅です。ただ、北陸本線の西金沢駅には普通電車しか止まりませんので、利便性の点では疑問も残るところでしょう。

 ここから、鉄道路線として残す場合の選択肢が二つ登場します。一つが西金沢駅・新西金沢駅から北陸本線の金沢駅に乗り入れるというものであり、もう一つが、野町駅から香林坊へ路線を延伸するというものです。長くなってしまいましたので、これらについては機会を改めることとします。

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東急9000系9009F

2023年08月29日 23時32分20秒 | 写真

 今年(2023年)1月に8500系が引退してから、1986年にデビューした9000系が東急で最古参の営業車両となりました。当初から大井町線用として5両編成で運用され続けている9007Fを除き、長らく8両編成として東横線で運用されていましたが、2009年から徐々に5両編成化されて大井町線に移り、2013年から全編成が大井町線の各駅停車用として運用されています。

 

 既に、9000系に代わる新系列の製造が東急から発表されています。9000系も、これから10年以内に東急線から姿を消すことも予想されます。ただ、中小私鉄への譲渡が行われるかどうかはわかりません。

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思い付いた言葉

2023年08月28日 23時55分05秒 | 日記・エッセイ・コラム

 踊る阿呆に踊らぬ利口。

 実は「思い付いた言葉」ではなく、以前から思っていることです。

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石橋湛山研究会

2023年08月27日 00時00分00秒 | 国際・政治

 「これを機に、石橋湛山のことを勉強してみようかな」と思いました。昨日(2023年8月26日)付の朝日新聞朝刊13面13版に、「多事奏論」として、原真人氏による「今こそ小日本主義 閉塞する政治、湛山なら?」という記事が掲載されており、なかなか興味深いものであったからです。

 石橋湛山は、短期間〔1956(昭和31)年12月23日~1957(昭和32)年2月25日〕ではありますが第55代の内閣総理大臣を務めた人物です。それだけでなく、ジャーナリストなどとしても活躍していました。私も、学部生時代かその少し前から名前は知っており、彼のことについて書かれたものを読んだりはしていましたが、本格的に石橋湛山の著作などを読んだことがなかったのです。

 原氏によると、「湛山思想を再評価する動きがいま政界でにわかに広がっている」とのことで、「通常国会が終盤を迎えていた6月初め、与野党の国会議員44人が議員連盟『超党派石橋湛山研究会』を発足させた。党の枠を超えてこれほど多くの議員が政治思想を論じ合う議連は珍しい。しかも、ちょうど解散風がそろり吹いて衆院議員たちが気が気でなかった時期にもかかわらずである」とのことです。

 先日、原真人『アベノミクスは何を殺したか 日本の知性13人との闘論』(2023年、朝日新聞出版)を購入し、読んでいました。これはなかなかの好書で、あれこれと考えさせられるものでしたが、同書に湛山は登場しません。ただ、どこかでつながっているのかもしれない。そう考えられるので、関心がある訳です。

 研究会の端緒は篠原孝氏(立憲民主党)です。同氏は1985年に、農林水産省課長補佐の立場で週刊東洋経済にて「新・小日本主義の勧め」を発表しています。それから40年近くが経過しようとしていますが、原氏は「いま読み返すと、篠原提言は青臭いけれど、その後の日本が突き当たる経済摩擦やエネルギー環境問題などを的確に予見もしていた。経済大国のおごりに警鐘も鳴らしている。それに比べ、経済論客たちの意見は成長や人口増、貿易黒字など経済大国を構成する諸要素がどれも永遠に続くという思い込みに支配されていたように思える」と書かれています。

 或る意味において、この内容は現在にも当てはまるものかもしれません。異なるのは、アベノミクスを支配していると考えられる「成長や人口増、貿易黒字など」が時代に逆らわないものではなくなったというところでしょうか。つまり、時代背景などが異なっているということです。1980年代後半の日本はバブル景気を追い風とする形で世界第2位の経済大国であったのに対し、2020年代前半の日本は人口減少など衰退の一途をたどっているということです。原氏も「これは現代にも地続きの問題だ。政府や日本銀行による無謀なバラマキ策が財政破綻や通貨円の暴落リスクを著しく高めていると言うのに、『もういちど経済大国の復権を』という安倍政権で始まった拡張路線を岸田政権も止めようとはしていない」、「理にかなわない政策を止められないむなしさ、財政も規律も壊れつつあることへの閉塞感」と述べています。

 ただ、超党派の研究会が今の日本政治に波風を立て、さらに状況を変えることができるかどうかについては、私は懐疑的にならざるをえません。与党、野党の別を問わず、湛山の思想、あるいはその湛山に共感した人々の数は、おそらく多くはないであろうと考えられるからです。

 しかし、点滴石をも穿つ、と言います。徐々に状況が変化していけばよいものであるかもしれません。急激な変化が望ましいとは言えませんから。

 今回、記事を読んでいて想起したのが、内村鑑三のことです。何時のことであったかよく覚えていないのですが、岩波文庫の『後世への最大遺物 デンマルク国の話』を買い、読んでいました。内村が述べていたことは、大国主義の真反対である小国主義であり、その小国主義にこそ立脚すべきであるという趣旨です。大日本帝国憲法施行下において、彼の思想は多くに受け入れられ難いものであったはずですが、重要な選択肢であったはずです。

 湛山と鑑三の接点が存在したのかどうか、存在したとすればどの点においてであったのか、私は知りません。しかし、何処かに共通の根があるのではないかと考えることもできるのではないでしょうか。

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日本の所得格差

2023年08月26日 00時00分00秒 | 社会・経済

 朝日新聞2023年8月23日付朝刊23面13版S◎に「所得格差が過去最高水準 21年調査 ジニ係数、14年に次ぐ」という記事が掲載されていました。やはり、非常に気になるニュースです。COVID-19のために、日本で、あるいは世界的に所得格差が拡大しているという話を耳にしますが、それが裏付けられる結果となったと言えるのではないでしょうか。

 厚生労働省のサイトには、2011(平成23)年、2014(平成26)年、2017(平成29)年および2021(令和3)年に行われた所得再分配調査の報告書が掲載されています。この調査は、同省によると「社会保障制度における給付と負担、租税制度における負担が、所得の分配にどのような影響を与えているかを明らかにし、今後の施策立案の基礎資料を得ることを目的として、昭和37年度以降、概ね3年ごとに実施してい」るものです。本来であれば、2017年の次は2020年に調査が行われるべきところですが、COVID-19のために2021年に行われたとのことです。

 2021年に行われた調査の結果は2023年8月22日に公表されました。厚生労働省は「『令和3年所得再分配調査』の結果を公表します〜社会保障や税による再分配後のジニ係数は、横ばいで推移〜」という文書(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/96-1/R03press.pdf)において、次のようにまとめています(役所の文書に見られる悪しき体言止めに修正を加えています)。

 まず、「世帯単位でみたジニ係数」についてです。

 ・「年金等の社会保障や税による再分配後の所得のジニ係数は0.381 となり、平成11 年調査以降0.38前後と横ばいで推移」している。

 ・「再分配前の当初所得のジニ係数は0.570 となり、平成26年調査以降0.57前後と横ばいで推移」している。

 ・「再分配による改善度は33.1%となり、社会保障・税の再分配機能に一定の効果がある結果となっている。」

 次に、「世帯員単位(等価所得)でみたジニ係数」についてです。

 ・「年金等の社会保障や税による再分配後の所得のジニ係数は0.314 となり、集計を開始した平成14年調査以降横ばいで推移」している。「また、再分配による改善度は36.0%となり、世帯単位でみた時と同様に、社会保障・税の再分配機能に一定の効果がある結果となっている」。

 〔ここで、当初所得とは「雇用者所得、事業所得、農耕・畜産所得、財産所得、家内労働所得、雑収入、私的給付(仕送り、企業年金、生命保険金などの合計額)の合計額」をいうものとされており、「公的年金などの社会保障給付は含まない」とされます。次に、再分配所得とは「当初所得から税金、社会保険料を控除し、社会保障給付(公的年金などの現金給付、医療・ 介護・保育の現物給付を含む。)を加えたもの」です。そして、等価所得とは「世帯の所得を世帯人員の平方根で割ったもの」と定義されています。〕

 調査の時期や概要などについては「報告書」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/96-1/R03hou.pdf)1頁に書かれていますので、そちらを御覧いただくとしましょう。基本的には2020年1月1日から同年12月31日までに稼得された所得を土台としていると考えていただければよいのです。

 私が気になるのは、調査の結果そのものよりも、厚生労働省による評価です。横ばい、「社会保障・税の再分配機能に一定の効果がある結果」と記されているのですが、楽観的に過ぎないかと疑いたくならないでしょうか。数値の変化などについては後に概観するとして、再分配による改善度が或る水準に達していなければならないのは当然であり、例えば改善度が10%以下であったり、マイナスになっていたりしたら、再分配の意味がありません。また、ジニ係数が0.1も上昇したら、これまた大問題です(ジニ係数は0から1の間の数値を示します)。

 上記朝日新聞記事には、一橋大学経済研究所の小塩隆士教授によるコメントも掲載されています。小塩教授は「大きな数値の変化はないが、いずれの指標も格差が拡大していることを示したと言える」、「所得や雇用環境がよくない非正規で働く人たちがコロナ禍でより大きな影響を受けたことを反映している可能性がある」、「就職氷河期世代が高齢層の仲間入りをすると、年金をもらえる人ともらえない人の区別がはっきりしてくる。これから格差が小さくなっていくとは期待できず、『貧困の高齢化』について注視が必要だ」という趣旨を語っています。私は、小塩教授の意見が妥当であると考えるのですが、いかがでしょうか。

 上記朝日新聞記事には1987年以降のジニ係数の推移を示すグラフが掲載されており、それを見ると、1987年の当初所得のジニ係数は0.4程度で、1990年、1993年と高まっていく一方であり、2002年か2005年には0.5の大台を超えていき(2005年には0.5263となっています)、2014年に最高の数値を叩き出しました。残念ながら上記朝日新聞記事には具体的な数値が書かれていませんが、「報告書」には0.5704と書かれています。

 「報告書」には2005年以降の推移が書かれていますので、紹介しておきましょう。

 ①2005年

 当初所得0.5265→可処分所得0.3930→再分配所得0.3873

 再分配による改善度は26.4%(社会保障による改善度は24.0%、租税による改善度は3.2%)

 ②2008年

 当初所得0.5318→可処分所得0.3873→再分配所得0.3758

 再分配による改善度は29.3%(社会保障による改善度は26.6%、租税による改善度は3.7%)

 ③2011年 

 当初所得0.5536→可処分所得0.3885→再分配所得0.3791

 再分配による改善度は31.5%(社会保障による改善度は28.3%、租税による改善度は4.5%)

 ④2014年

 当初所得0.5704→可処分所得0.3873→再分配所得0.3759

 再分配による改善度は34.1%(社会保障による改善度は31.0%、租税による改善度は4.5%)

 ⑤2017年

 当初所得0.5594→可処分所得0.3822→再分配所得0.3721

 再分配による改善度は33.5%(社会保障による改善度は30.1%、租税による改善度は4.8%)

 ⑥2021年

 当初所得0.5700→可処分所得0.3890→再分配所得0.3813

 再分配による改善度は33.1%(社会保障による改善度は29.8%、租税による改善度は4.7%)

 たしかに、当初所得を見ると2014年のジニ係数が最も高いのですが、それ以上に気になるのは再分配による改善度の低下です。2014年までは改善度が上昇しているのに対し、2017年、2021年と低下しています。2008年までは30%を下回っていましたから、2021年においても格差を縮小させる効果が存在するとも評価できます。とは言え、当初所得についても格差の拡大傾向が止まった訳でもなく、可処分所得のジニ係数も2017年までは低下していたのに2021年には上昇に転じています。

 COVID-19の影響がどこまで及んでいるのか、それともCOVID-19とは無関係に格差の拡大傾向が存在するのか。

 パンデミックと全く無関係であるということはないでしょう。しかし、全てがパンデミックのためであるとも言えません。

 格差の拡大は、民主主義の地盤を掘り崩します。民主主義の衰退と権威主義の増大というような趣旨のことが叫ばれますが、格差が広がればそのように主張されてもおかしくありません。

 あるいは、世界的に見れば、所詮、民主主義は地域的な現象に過ぎず、権威主義などのほうが普遍的であるということでしょうか。

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国土交通省による2024年度税制改正要望で気になるところ(続)

2023年08月25日 07時00分00秒 | 国際・政治

 昨日(2023年8月24日)に「令和6年度国土交通省税制改正要望事項」(以下、「要望事項」)が公表されました。

 要望として掲げられている事項は非常に多いのですが、「地域交通ネットワークの構築」に関してあげられているのは、「① 地方航空ネットワークの維持・拡大を図るための国内線航空機に係る特例措置の延長(固定資産税)」、「② 鉄道事業再構築事業を実施したローカル鉄道の資産取得に係る税制の特例措置の創設(登録免許税・不動産取得税)」、「③ 鉄道・運輸機構がJR北海道、JR四国、JR貨物から引き取る不要土地に係る特例措置の延長(不動産取得税)」および「④ ノンステップバスやUDタクシー等のバリアフリー車両に係る特例措置の拡充・延長(自動車重量税・自動車税)」です。一昨日(2023年8月23日)の20時44分30秒付で掲載した「国土交通省による2024年度税制改正要望で気になるところ」においては上記のうちの②をあげました。

 ②については「危機的状況にあるローカル鉄道について、事業構造の見直しを進めつつ鉄道輸送の高度化を図り、鉄道を徹底的に活用して競争力を回復する取組みを支援するため、登録免許税及び不動産取得税の特例措置を創設する」と書かれています。

 共同通信社の記事「鉄道駅譲渡時の税減免要望 地域交通再編で国交省」という記事(https://www.47news.jp/9757510.html)ではわかりにくかったのですが、「要望事項」では「ローカル鉄道については、人口減少やマイカーへの転移等が進む中で、利用者の大幅な減少により、大量輸送機関としての特性を十分に発揮できず、存続は危機的状況」にあること、「 地域の足を守るためには、事業構造の変化が必要であるとともに、人口減少社会に相応しい、コンパクトでしなやかな地域公共交通の再構築が急務」であることから「令和5年度に地域交通法を改正し、事業構造の見直しを進めつつ鉄道輸送の高度化を図る再構築事業に関する取組への支援を強化したところであるが、事業構造の見直しを促進するためには、鉄道資産譲渡時の負担軽減が必要」である、とされているのです。

 通常、鉄道会社は、線路、駅舎などの鉄道施設を保有するとともに、車両の運行も行います。しかし、1980年代にJR法や鉄道営業法が制定されることにより、(いずれも大まかな表現となりますが)鉄道施設の保有と車両の運行を共に行う第一種鉄道事業者、車両の運行のみを行う第二種鉄道事業者、鉄道施設の保有のみを行う第三種鉄道事業者とに大別されました。これはJR貨物のためと言ってよいでしょう。JR貨物は基本的に第二種鉄道事業者であり、JR東日本などの第一種鉄道事業者による路線において貨物列車を運行しているのです(但し、JR貨物が第一種鉄道事業者となる路線もあります)。こうすることにより、いわゆる上下分離方式を採用することは可能です。

 (実は、上下分離方式の定義については問題があるようですが、ここでは煩雑さを避けるため、詳細な説明は避けます。)

 「要望事項」において地域交通法と略されている「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」第2条第9号および同第23条以下には鉄道事業再構築事業が定められており、同一の鉄道路線について車両の運行と鉄道施設の保有とを分離し、それぞれを別会社に担わせることができることとなっています。その実例として、北近畿タンゴ鉄道が第三種鉄道事業者、WILLER TRAINSが第二種鉄道事業者となっている宮津線および宮福線があります。

 今後、JR各社や中小私鉄の赤字路線(とくに、営業係数が高く、輸送密度が低い路線)を存続させるためには、上下分離方式をさらに進める必要があるということなのでしょう。そのためには、税制による支援の必要であるということで、国土交通省が要望を出したということなのです。

 特例措置は令和6年4月1日から令和8年3月31日までの2年間とされており、次の通りとされています。

 1.土地・家屋の所有権の移転登記について、登録免許税の税率を2%から0.8%に軽減する。

 2.土地に設定された地上権および賃借権の移転登記について、登録免許税の税率を1%から0.4%に軽減する。

 3.鉄道事業者が取得した土地・家屋に係る不動産取得税については非課税とする。

 これらの内容が妥当であるか否かについては、議論の余地があるものと考えられます。政策減税なり特別措置なりが多くなるのは、税制として望ましいことではありません。また、不動産取得税は都道府県税(地方税法では道府県税)であるので、地方税源の確保などの要請とは真っ向から矛盾します。他方、税率の軽減または非課税がどこまで効果的であるのかという問題も考えられます。地方財政審議会の意見も読んでみたいものですが、最終的には11月から12月にかけて開かれる自由民主党の税制調査会が何回かの会合で決定されることでしょう。おそらく、いずれも採用され、12月に発表されるはずの令和6年度税制改正大綱に盛り込まれることでしょう。

 この他、「JR貨物が取得した新規製造車両に係る特例措置の延長(固定資産税)」として「JR貨物が取得した機関車に係る課税標準の特例措置を2年間延長する」ことも要望としてあげられています。その理由として、JR貨物が保有する機関車のうち「国鉄から承継した老朽機関車は、依然、機関車全体の約2割を占めて」おり、「環境に優しい鉄道貨物へのモーダルシフトを推進することによりCO2排出量の削減を図るためには、大量牽引・高速走行が可能な高性能機関車への更新を推進する必要がある」ことがあげられています。公表されている要望書には、国鉄時代の代表的ディーゼル機関車であるDD51とJR貨物になってから増備されているディーゼル機関車のDF200とが並べられており、新型機関車への更新を進めなければならない旨が示されている訳です。

 たしかに、DD51など国鉄時代のディーゼル機関車は車齢が50年を超えていたりしますから、車両の置き換えは必要です。ただ、実際のところ、どこまでモーダルシフトが進んでいるのか、また、進めようとしているのかという点が重要でしょう。何年か前からトラック運転手の不足が言われていますし、最近ではバスの運転士の不足が理由となって路線バスの減便が行われるようになっています。そのような点からすれば、モーダルシフトの推進には意味があります。しかし、鉄道路線であればどこでも貨物列車を走らせることができるという訳でもなく、運転士の不足は鉄道についても該当しうることでもあるため、固定資産税に関する特別措置の延長が妥当であるのか、議論が生じないとも言えないでしょう。

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ようやく、デジタル版が官報の正本(的なもの)に

2023年08月24日 00時00分00秒 | 国際・政治

 現在、官報は紙版が正本(的なもの)として扱われています。1999年からインターネットでも公開されており、私も時折参照していますが、デジタル版は正本ではないとされています。

 しかし、その官報について扱いが変更されることになりそうです。時事通信社が、昨日(2023年8月23日)の20時37分付で「官報『デジタル版』が正本に 政府、臨時国会に法案提出へ」(https://www.jiji.com/jc/article?k=2023082300567&g=pol)として報じています。

 官報については、国会法、最高裁判所裁判官国民審査法、国家公務員法など規定があり、「官報及び法令全書に関する内閣府令」(昭和24年総理府・大蔵省令第1号)の第1条には「官報は、憲法改正、詔書、法律、政令、条約、内閣官房令、内閣府令、デジタル庁令、省令、規則、庁令、訓令、告示、国会事項、裁判所事項、人事異動、叙位・叙勲、褒賞、皇室事項、官庁報告、資料、地方自治事項及び公告等を掲載するものとする」と定められています。

 デジタル版、つまりインターネット版を正本(的なもの)として扱う方針は、5月30日に行われたデジタル臨時行政調査会において岸田文雄内閣総理大臣が表明し、検討加速を指示したものであり、紙版の廃止も見込まれているようです。臨時国会が何月何日に召集されるのかは不明ですが、その折に関連法律案の提出、2024年中に法律の施行を目指すとのことです。

 御存知の方も多いと思いますが、紙版の官報は、官報販売所において購入することができます。ただ、その販売所の数が非常に少なく、一般紙と比較して格段に実物を手に取ることができる店は限られます(購読する場合は話が変わりますが、その場合でも申込ができるところは限定されます。また、図書館で読む場合も話が違ってきます)。これに対し、デジタル版であれば、パソコン、スマートフォンなどで、インターネットにつながってさえすればどこでも読むことができる訳ですから、読む機会は格段に増えてきます。

 紙版の廃止が妥当であるかどうかは議論の余地があると思われますが、デジタル版が正本的な扱いを受けるようになるのは、やはり時代の趨勢というところでしょうか。

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