ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

実施1か月前を切って混乱が続く

2019年09月02日 20時07分10秒 | 国際・政治

 昨日(2019年9月1日)付の朝日新聞朝刊1面14版△のトップ記事「消費増税まで1カ月 大丈夫?」にも書かれていますが、10月1日からの消費税・地方消費税の税率引き上げおよび軽減税率の導入を前にして、今も混乱が続いています。とてもではないが間に合わない、と言わざるをえない状況にあるようです。

 その原因を二度にわたる再延期に求める意見もあるでしょう。しかし、それは当たっている部分もあり、当たっていない部分もあります。そもそも軽減税率自体が混乱の原因であると考えるべきです。2015年12月12日0時31分28秒付の「軽減税率の議論」において記したように、日本の税制には世界から取り残されていると言ってよいほど遅れている面があります。軽減税率は最たる例ですが、インボイス方式を採用していないのも日本だけです。

 何度も書きます。日本の政府も国民も、消費税に関する能力はありません。そのために、軽減税率の導入を前にして混乱が続いているのです。ヨーロッパ諸国で軽減税率が導入された当時の経緯がわからないので何とも言えませんが、日本ほど混乱したのでしょうか。

 しかも、日本の場合、軽減税率を導入するのみならず、9か月限定ながらキャッシュレス決済へのポイント還元まで行うこととなっています。こんなことをやるなら増税も軽減税率の導入もせず、むしろ減税すればよいだけの話だと思うのですが、ともあれ、現金払いではポイント還元を受けられないこととなるので、(様々な理由で)クレジットカードを作ることができない人にとっては何ら意味のないものです。電子マネーやスマートフォンのQRコード決済についても、似たようなことが言えるでしょう。SuicaやPASMO(私は後者のみを10年以上使い続けています)などについても、JRや私鉄の中にはICカード非対応の路線または区間もあります。

 それだけでなく、中小企業、中小店舗では、ポイント還元策に参加したくともできないところがあるでしょう。実際、対象となっている店舗の4分の1ほどしか参加申請をしていないそうです。

 また、軽減税率ということでは、決済端末、レジスターの問題があります。機種によっては製造が追いついていないというのです。つまり、実施に間に合わない店舗が続出するということになります。また、経済産業省が上限20万円という補助金を、軽減税率対応レジの導入について設けているのですが、7月末の時点で申請は11.8万件であり、これや予算で見込んでいる件数(30万件)の39%ほどにしかなりません。この点だけについては二度にわたる再延期が原因の一つとなっているとも言えます。

 外食産業の中には、商品を持ち帰る場合(軽減税率適用)も商品を店舗内で消費する場合(軽減税率非適用)も同じ値段とするところもあります。これができるのは多数の店舗を抱えてPOSシステムなどを導入している企業でしょう。

 以上のような状況では、10月1日以降のしばらくの間、消費者は買い控えをするほうが賢明であるようです。買い物の際に揉め事が多発するのは目に見えているからです。

 軽減税率については、以下の記事もお読みいただければ幸いです。

 「大晦日に青葉台で買った本から、消費税の正当性を訴える本を取り上げてみました。」(2012年1月3日21時13分38秒付)

 「消費税に軽減税率を導入するなら、まずはインボイス方式に改めよ!」(2013年1月15日10時0分39秒付)

 「軽減税率見送りは当たり前、なんだけど……」(2013年1月20日9時30分22秒付)

 「地方税法等の一部を改正する等の法律(平成28年3月31日法律第13号)〜法人課税および軽減税率の導入を中心に〜」(自治総研454号=2016年8月号68頁)

 「この法律案の行く末は?」(2017年2月15日20時14分15秒付)

 「日本版ベーシックインカム導入法案(?) その1」(2017年2月24日11時58分18秒付)

 「日本版ベーシックインカム導入法案(?) その3」(2017年2月24日11時58分18秒付)

 「二度あることは三度ある? やる気がないならきっぱりとやめろ」(2017年6月10日22時15分47秒付)

 「『だったらやるな』」(2018年11月27日21時49分40秒付)

 「本当にやる気なのか?」(2019年3月19日0時6分20秒付)

 

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