ミュージカルな日々

ミュージカル好きの私が、観劇・映画・ドラマ・音楽・本の感想を書きつづるブログ、になる予定。

「乱紋」(永井路子著) 感想

2010-10-03 | 
来年の大河ドラマ、「江」の予習、と思って読んでみました
(ごく最近になって新装版が出たのも、この大河に先駆けて、という意味合いがあったのだろうと思われます。)

でも、この小説の中でのおごうは、かなり変わったイメージで描かれています。
ひたすら無口で、動きは緩慢、運命に対して常に受け身だが、一方で底知れない存在、
というのが、永井版おごうのキャラクター。

上野樹里さん&篤姫の脚本家のコンビで、こんな主人公が生まれる訳はないので(笑)、
当然のことながら、別物として読むべき小説です (当然、原作でもなんでもありません。)

で、あくまで別物として読んだ感想ですが、
まあまあ、面白かったです
永井さんの他の作品をいくつか読んだ中では、まあ普通の部類かな、と。
(ちなみに、私が一番好きなのは「炎環」です

この小説では、
戦国時代の人間の生き方を無理に現代人の感覚に引き寄せるのではなく、
現代人には計り知れない思考と感情で行動する人々として描いています。

考えてみれば、現代人には想像もつかないような過酷な状況で人々、例えば、浅井三姉妹は生きていた訳ですから、
その三人が仲良しこよしの姉妹ではなく、常に腹の探り合いをしているような緊張関係にあったことは、当然のことだと思うのです

最近の大河ドラマは、その辺を全く考慮せずに、
(もしくは意図的に無視して)、
現代人の想像の及ぶ範囲の感情しか描いていないのが、リアリティのなさの一因なのかなぁと思ったり

私が一番好きな大河ドラマ「太平記」や、最近の唯一の例外作「風林火山」では、
現代人にはついていけないような感情をきちんと描いていて、それもすごく面白かったのに…

ちなみに、私が好きな作品として上に挙げた「炎環」などは、感情の激しさは「乱紋」の比ではないです。
中世・鎌倉時代初期、という時代も影響していると思いますが、恐ろしいほどの感情の「濃さ」を味わうことができます。

「乱紋」は、他方で、侍女の目線から描くことで、
秀吉やお茶々、おごうなど為政者側の人間の感情を、現代人が理解しやすいように解釈・解説してしまっているところが、
ちょっと中途半端な感じを覚えさせる原因だったかもしれません。

あとは、知っている話のオンパレードだったことも、すごく面白いと思えなかった一因
織豊時代を扱った小説・ドラマはどうしてもここをクリアしないといけないのが大変ですね

「江」が使い古された時代をどうドラマ化するのか、今から楽しみです