書く仕事

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「どんなに上手にかくれても」岡嶋二人

2006年08月14日 18時32分09秒 | 読書
著者名は共作の筆名です.
たぶん「おかしなふたり」からもじったのかな?
既にコンビは解消されているようですが,各々,井上夢人,田奈純一として二人とも活躍中.
「クラインの壷」を読んだのが十数年前,この「どんなに上手にかくれても」が2作目です.
歌番組のリハーサル中に,新人歌手がテレビ局から誘拐されるという事件が起きます.
しばらくして,犯人から身代金1億円の要求の電話,ベテラン刑事の登場と,事件が進んでいきます.
次に,これもよくあることですが,身代金の引渡しについては,警察が隠れていることに気付かれて引渡しを2度も失敗します.3度目にはようやく成功し,幸いにも人質は無事解放されます.
ここで,この事件は一段落し,読者も一旦はホッとさせられます.しかし,本当の事件はこれからなんです.この事件,一見身代金目的の誘拐事件のように見えますが,どうも変なのです.
というのは,通常どんな事件の犯人も,できるだけ目立たないように,つまり捕まりにくいように工夫して犯行にいたるものです.
しかし,この事件の犯人は,歌番組のリハーサル中に歌手を誘拐なんて,思い切り派手に,人目に付くことを意識して行っている.
しかも,本当にお金がほしければ,不動産屋とか大病院の院長とか政治家とか,大金持ちの家のこどもを通学途中に誘拐するとか言うのが相場でしょう.
しかし,この犯人は,大金を持っているとは思えない新人歌手をターゲットにしているのです.
身代金の引渡しも,「警察には絶対に連絡するな」と言いながら,どうも警察が看視していることを意識した行動をしているんです.ぜったいおかしい.
じゃあ,なぜか?...というのが,この小説の面白いところです.
人質を心から心配する家族とマネージャーの心情も丁寧に描かれますが,むしろマスコミ,テレビ局,スポンサーの三者の思惑と,彼らに翻弄される警察の苦悩ときまじめな推理がこの小説の骨組と言えるでしょう.
ストーリーの展開がスピーディーですし,いわゆる業界の裏話的なエピソードもたっぷりあって,その業界にうとい私としては,大変楽しめました.一気読みです.
もちろん,最後は読者が「ほぼ」納得する形で,収拾されますが,最後の**事件は無くてもよかったんじゃないかな?というのが私の正直な感想です.**事件とは読み進むうちにわかると思いますが,ここでは,ネタばれにならぬよう伏せておくとしましょう.
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