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「真犯人」翔田寛

2019年07月28日 08時43分40秒 | 読書
「真犯人」翔田寛

中古車販売店を経営する初老の男性が殺される.
場所は東名高速道路にある高速バスのバス停近くの植え込み.

捜査が進むうち,被害者は,40年も前に起きた幼児誘拐殺人事件の被害者(当時5歳)の父親であったことが判明する.
そして,その幼児誘拐事件は警察の懸命の捜査にも拘らず犯人が上がらず,ついに20年以上も前に時効を迎えていた.
担当刑事の日下悟警部補は,幼児誘拐殺人事件の管理官だった重藤元警視から当時の詳しい話を聞きに行き,このことから物語が展開していく.

本格的な警察小説だが,話の骨格が太くて重厚かつ味わい深い名作だ.

人の心理も丁寧に描かれ,ついつい登場人物に感情移入してしまう.
読み手が誰の味方をしていいのか分からなくなってしまうというか...

ミステリー小説としてのこの本の特徴だが,様々な状況証拠があり,それらを繋ぎ得る1本の筋書きを,各捜査官一人一人が組み立てようとする.
つまり仮説から事実を導こうとするわけ.
結果的に,同一の事実群から,様々な筋書きが出来てしまう.
でも,警察の捜査は,本当はそうであってはいけない.
事実から,その事実が起こり得るのは,この原因でしかありえない,という論理でなければ,立証したことにはならない,ということを主人公がつぶやく.
探偵ものに対する著者の不満が吐露されているのかも.

主人公の日下悟警部補は,翔田寛さんの他の小説にも登場するらしいので,そっちも読んでみたいですね.

読みごたえたっぷり,フルコースのイタリアンを食べたような満足感ある1冊でした.


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