書く仕事

ご訪問ありがとう!!ミステリー小説の感想を中心に,読書,日々の雑感,映画の感想等を書き散らかしています.

「Tの衝撃」安生正

2024年02月19日 15時23分15秒 | 読書
「Tの衝撃」安生正



久しぶりの読書感想文の投稿です.

岐阜県の山奥での地震データを採集に行く地震学専門の八神准教授が途中地滑りに巻き込まれ,九死に一生を得るところから物語はスタートします.
病院で目覚めると,八神は大した怪我でもないことから,すぐに実験所に行こうと思うのですが,どうも,病院内の雰囲気がおかしい.
警察官や中央省庁の課長補佐とかいう,威圧的な態度を取る,怪しげな人物からまるで犯罪者相手のような尋問を受ける.
いったい,何があったのか.

どうも,彼の研究内容や彼が書いた論文に関係しそうということはわかってきたが,それ以上は何が何だかわからない.

さ,どうする八神.

この本の感想を一言でいうなら,タイトルどおり,まさに「衝撃」
日本の平和は,日米安全保障条約によって守られているという事実はあるのでしょうが,それはアメリカ,中国,ロシア,北朝鮮などの危うい軍事バランスの上に奇跡的に成り立っている平和でしかないという現実もある.
てことは,そのバランスが崩れれば,中国や北朝鮮がすぐにでも動き出す可能性があるだけでなく,日本が安保に反するようなことをすれば,同盟国アメリカでさえ,日本に牙を剥きかねないのか.

まあ,実際はそんなことはなくて,この小説が言っているような内容については,本当の意味でのリアリティは無いと思うけどね.

ただ,凄いのは物語の展開のスピードの速さと登場人物の魅力ですね.ぐいぐいと引き込まれます.
登場人物は大学で地震学を研究する八神准教授と,彼以外は,ほぼほぼ自衛官です.こういうキャスティングの小説も珍しい.

自衛官の中で,一人正義のために気を吐くのが,溝口三佐. 彼は情報部門の幹部なんだけど,上記の事故に関るいろいろな状況が自衛隊内部の腐敗に関係していることを感じ取って,いろいろと調査するものの,行く先々で妨害や危険が待ち受けている.
さ,どうする溝口.

彼ら,八神と溝口をダブル主演として,自衛隊内部にはびこる陰謀が徐々に明らかになっていきます.

平和って何だろう.
平和と戦争の分岐点はどこにあるのか?

戦争は,ダメ,絶対.という気持ちを改めて確認できる小説でした.
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする