書く仕事

ご訪問ありがとう!!ミステリー小説の感想を中心に,読書,日々の雑感,映画の感想等を書き散らかしています.

「路地裏のほたる食堂」大沼紀子

2017年02月14日 09時57分23秒 | 読書
「路地裏のほたる食堂」大沼紀子



この作者の小説は初読ですが,うれしい発見でした.

タイトルからは、「深夜食道」的なこころ暖まるちょっといい話、を想像して読み始めましたが、、、

まず、食堂と言いつつ、実は「屋台」です。
しかも、毎日メニューが変わる。
昨日はお好み焼き、今日はカレー、明日はおでん、、、

店主は大男でこわもて、閻魔様のような偉丈夫。
しかし、ちょっと困った過去を持ち、流浪の旅ならぬ、屋台を引いて各地を旅している。
そんな彼が、岐阜で出会った 2組4人の若者達との交流。

物語は4人の内の1人、亘(わたる)の立場で語られる。
岐阜のある町で起きた「捨て猫事件」にまつわるストーリーである。

いなか世界の閉鎖性の中で、亘が小さい頃から受けたいじめのエピソードはもちろん痛いのだか、そこから彼が学んだ生き方というか、考え方は、ある意味教訓的でもある。
いじめ自体がなくなるのが一番だが,もしそれが叶わないのなら,次善の策として,亘のような考え方ができれば,少なくとも、いじめによる自殺はなくなるような気がする。

人の心に潜む闇,それは誰の心にもある.
その闇に気付くことから,光が生まれるのだと思う.

深刻なパンドラの箱の底に見つかる「希望」を感じさせる物語.

シリーズ化されるようなので、続きを読んでみたいです。

「水の柩」道尾秀介

2017年02月08日 00時11分13秒 | 読書
「水の柩」道尾秀介




道尾秀介の小説は結構読んでます.
「光媒の花」,「カラスの親指」,「鬼の足音」,「龍神の雨」, 「ラットマン」,「staph スタフ」,「笑うハーレキン」

7冊読んでますね.
東野圭吾を抜く日も近いでしょう.

伏線のち密さ,どんでん返しの鮮やかさもさることながら,物語全体を覆う暗い影のようなものが,僕が求める小説世界にピッタリくる気がしている.

映画やドラマはどちらかというと明るさを求めるけど,小説は暗い方が好きです.

それはさておき,この「水の柩」,暗さに関してはピカ一.妙な褒め方ですが.
主人公は中学生の男の子,逸夫くん.
壮絶ないじめにあっている同級生の「敦子」と,つらい過去がある逸夫のおばあちゃん「いく」らに振り回されつつ,少しづつ成長していくお話.

ただ,ミステリーとしては×.
どんでん返しの鮮やかさはない.
あえて言うなら,叙述トリック的な...
いや,それは黙ってましょう.
それにしても長編ながら飽きさせない文章力は,さすが,直木賞作家,道尾秀介さん.