書く仕事

ご訪問ありがとう!!ミステリー小説の感想を中心に,読書,日々の雑感,映画の感想等を書き散らかしています.

「聖女の救済」東野圭吾

2024年03月27日 11時31分38秒 | 日記

「聖女の救済」東野圭吾

本格推理ものは,もちろんトリックが大事なんだけど,トリックだけでは,よく出来た「なぞなぞ」や「クイズ」と同じで,感心はするけど,心には残らない.
東野圭吾作品の面白いところは,トリックの奇抜さもさることながら,それに溺れることなく,謙虚にかつ丁寧に犯人の心理を描くことで,いつの間にか読者が犯人の心に同調してしまう点にあると思うのです.
気が付くと「どうか捕まらないで,犯人さん」って思ってしまうのね.
東野圭吾作品はそこがすばらしい.

ある資産家でイケメンの会社社長が密室状態で毒殺された.
捜査の結果,容疑者は被害者の妻1人に絞られるが,彼女には犯行当時は北海道旅行中であったという決定的なアリバイがあった.
さらにややこしいことに,その容疑者に,担当刑事の草薙(ドラマでは北村一輝が演じた役ね)が運命的な恋をしてしまうのでした.
草薙としては何とかして,彼女を無罪放免にしたいが,部下の内海薫(ドラマで柴咲コウが演じた役)が執拗にアリバイ崩しに奔走する.
ただ,悲しいかな彼女の力では犯人の鉄壁のアリバイを崩せず...でどうするかといえば,そうあの人に相談に行くのです.
そこから先は説明不要だよね(笑)

私も歳とともに,活字を追うのがつらくなってきていますが,今回は久々に視力の衰えを忘れて,一気読みしてしまった東野作品でした.

ミステリーって本当に楽しいですね.
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「Tの衝撃」安生正

2024年02月19日 15時23分15秒 | 読書
「Tの衝撃」安生正



久しぶりの読書感想文の投稿です.

岐阜県の山奥での地震データを採集に行く地震学専門の八神准教授が途中地滑りに巻き込まれ,九死に一生を得るところから物語はスタートします.
病院で目覚めると,八神は大した怪我でもないことから,すぐに実験所に行こうと思うのですが,どうも,病院内の雰囲気がおかしい.
警察官や中央省庁の課長補佐とかいう,威圧的な態度を取る,怪しげな人物からまるで犯罪者相手のような尋問を受ける.
いったい,何があったのか.

どうも,彼の研究内容や彼が書いた論文に関係しそうということはわかってきたが,それ以上は何が何だかわからない.

さ,どうする八神.

この本の感想を一言でいうなら,タイトルどおり,まさに「衝撃」
日本の平和は,日米安全保障条約によって守られているという事実はあるのでしょうが,それはアメリカ,中国,ロシア,北朝鮮などの危うい軍事バランスの上に奇跡的に成り立っている平和でしかないという現実もある.
てことは,そのバランスが崩れれば,中国や北朝鮮がすぐにでも動き出す可能性があるだけでなく,日本が安保に反するようなことをすれば,同盟国アメリカでさえ,日本に牙を剥きかねないのか.

まあ,実際はそんなことはなくて,この小説が言っているような内容については,本当の意味でのリアリティは無いと思うけどね.

ただ,凄いのは物語の展開のスピードの速さと登場人物の魅力ですね.ぐいぐいと引き込まれます.
登場人物は大学で地震学を研究する八神准教授と,彼以外は,ほぼほぼ自衛官です.こういうキャスティングの小説も珍しい.

自衛官の中で,一人正義のために気を吐くのが,溝口三佐. 彼は情報部門の幹部なんだけど,上記の事故に関るいろいろな状況が自衛隊内部の腐敗に関係していることを感じ取って,いろいろと調査するものの,行く先々で妨害や危険が待ち受けている.
さ,どうする溝口.

彼ら,八神と溝口をダブル主演として,自衛隊内部にはびこる陰謀が徐々に明らかになっていきます.

平和って何だろう.
平和と戦争の分岐点はどこにあるのか?

戦争は,ダメ,絶対.という気持ちを改めて確認できる小説でした.
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「哲学的な何か,あと科学とか」飲茶

2023年01月05日 10時50分18秒 | 日記
「哲学的な何か,あと科学とか」飲茶


前回投稿した「心はこうして創られる」は,脳と心の関係を,従来の常識を打ち壊す形で解いて見せた本でした.
この本には私自身大きな衝撃を受け,心というものを真に科学的に解き明かすことに強烈な魅力を感じました.
心を科学するという意味では,心理学や精神医学がありますが,門外漢ながら感じるのは,これらの学問では,ブラックボックスである心の動きを現象面から分析し,帰納的に心はこういうものだという説を唱えているような気がします.

しかし,私が知りたいのは,自分自身がいろいろなできごとをどう感じるのか,こう感じている自分はどこから来たのか,死んだら自分という意識はどこに行くのか,というような心の内面というか,自分自身として納得できることなんですね.
心理学や精神医学をどんなに勉強しても,死んだら人間の心はどうなるかはわからないでしょ?

となると,やっぱ「哲学」ですよね.で,この本です.
いや別に死後の世界を詳しく述べてるわけじゃないので誤解されるとまずいのだけど.

人間の意識というものの「実体」が何となく,ふわっとですが,「あ,そういうこと?」となります.「そういうこと」の中身は必ずしも具体的ではなくて,「わかった」とまでは決して言えないんですが,意識というものの様々な側面を,からめ手から解きほぐしてくれるみたいな,というか,ええいもどかしい.

もっとわかりやすく言うと,「人間の心を考える教材を与えてくれる本」というのが近いかな.
結論は書いてないし,著者も解らないのだろうけど,こんな方向で心を考えると,何かが見えてくるかもよ,みたいなね.

科学は,実は科学的・論理的ではないこと,が良くわかります.科学は本当は哲学の上に成り立っているんだということ.

それでなるほどと思ったのは,博士あるいは博士号取得者のことを英語で「Ph.D」(Doctor of Philosophy)っていいますよね.どうして"Philosophy"なんだろうと思ってましたが,この本を読んで,ストンと「心」に落ちました.
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「心はこうして創られる 即興する脳の心理学」ニック・チェイター著 高橋達二・長谷川珈 訳

2022年12月08日 09時36分55秒 | 読書
「心はこうして創られる 即興する脳の心理学」ニック・チェイター著 高橋達二・長谷川珈 訳


人の「心」に関する従来の常識を打ち砕く書籍です.
心理学・哲学で打ち立てられた様々な理論や仮設を見事なまで粉砕しちゃってます.

フロイトなどは単なる否定ではなく,「相手にもしない感」があって,ある意味清々しいんです.

一時期,今となっては大昔になったけど,人間の脳はノイマン型コンピューターと同じように,中央処理装置(演算装置),記憶装置,入出力装置などから構成され,入出力装置である目や耳から視聴覚情報を入力し,記憶装置の脳の一部で記憶し,中央処理装置である脳の別の一部で判断した結果によって手足を動かしたり,口で言葉を発したりする自動機械と考えた時期もありました.
マシンの処理さえもっと速くなれば,人間の脳を機械で実現可能と当時の研究者は考えたわけね.
しかし,その手法では,とてもコンピュータを人間に近づけることはできないことが明らかになったので1990年代です.
その後,機械学習,特にニューラルネットワークの進歩とともに,認識や判断には中央処理装置をアルゴリズム(人間が作ったプログラム)で駆動して判断させるのではなくて,データをネットワークに通して自動学習させ,未知のデータに対処するテクニックが急速に進歩しました.
その結果,人間に追いつくどころか,人間の能力をはるかに凌駕するシステムが次々に実現されてきた.アルファGoやワトソンなんかですな.

このような状況を知っているので,AIやICT関係の研究者・技術者で人間の脳をアルゴリズム機械と考える人は一人もいないものと思いますが,心理学者・哲学者にはまだまだそういう人がいるらしい.
この本が話題になること自体,そういうことなんじゃないかな.

この本は,従来の学説にとらわれている心理学者・哲学者だけでなく,AI・機械学習の研究者や技術派にも大いに参考になる内容も含まれています.
いえ,そう書いてあるわけじゃなくて,私が勝手に想像しただけなんですが,AI・機械学習はディープラーニング全盛で,CNNやRNNを論じないと未来はないみたいな雰囲気があるけど,いや待てよと,

この本で,アルゴリズムに相当する心の内側世界は完璧に否定され,心には表面しかないと強調されていますが,心の表面では過去の前例から即興的に浮かび上がる認識をこころが掬い取る「思考のサイクル」があると述べられています.
「思考のサイクル」ということはそこに繰り返し処理があるということで,微視的には小さなアルゴリズムが回っているという気もします.
この辺が新しいAIにつながらないかな,と埒もないことを妄想している今日この頃です.

それにしても近年まれにみるエキサイティングは本でしたね.
代金の2000円の百倍の価値があるかもしれません.
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「たおやかに輪をえがいて」窪美澄

2022年11月14日 22時38分36秒 | 読書
「たおやかに輪をえがいて」窪美澄


『夜に星を放つ』で直木賞を受賞した窪美澄さんの長編小説.

夫の裏切りや娘の危険な恋愛に呆れつつも,家族のために奉仕し続けるだけの自分の空虚な人生に嫌気がさしてきた絵里子.
そんなとき,同窓会で昔の友人・詩織に再開する.
詩織は主婦臭さの全くないキャリアウーマン風で,美しい容貌とファッションはひときわ目だつ存在だったが,話を聞いてみると,驚愕の人生を送っていた.

平凡な人生は,平凡なだけなら決して悪い人生だとは思わないし,むしろ平凡に生きれることは稀有な幸運に恵まれたことだとさえ思う.
平凡なのに,不幸な出来事が同居するから不幸なのだ.原因は平凡ではなく,不幸な出来事にある.
しかし,なぜか他人に自分の人生を嘆くときは,「私って本当に平凡なの」と嘆く.
そうじゃないだろ,夫が浮気をし,娘が非行に走るから嘆きたいんだろう.

中年を過ぎた主婦の心の襞を丁寧に描いた,文学の香りがする長編小説.
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「ファミリー・レス」奥田亜希子

2022年10月24日 13時42分29秒 | 読書
「ファミリー・レス」奥田亜希子


図書館で奥田英朗さんの小説を探していたら,「奥田」だけを認識して手に取ったのがこの本.
「ファミリー・レス」というタイトルも奥田英朗さんらしさが感じられるので,別の人の作品ということに気付くのが遅れたというわけ.

離れ離れになった家族との再会という基本軸のもとに,その後の自分の人生に起きた不幸や悲しみを経て,家族との再会で見いだされた一筋の光が感じられる,短編小説集.
女性作家ならではの細やかな感情表現が美しい.
同時に,文章の力をも感じさせる小説だ.

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「我が家のヒミツ」奥田英朗

2022年10月06日 11時37分03秒 | 読書
「我が家のヒミツ」奥田英朗


先日「コロナと潜水服」の感想をアップしたら,奥田英朗の他の本も読みたくなって,図書館で手にしたのがこの本.
6編からなる短編集.

どこにでもある普通の家庭が舞台.
普通の家庭でも何かしら,人に言えない秘密や悩みはあるもの.
そんな秘密を抱えた主人公は,なぜか皆,生真面目な性格で,抱えた秘密を持て余しつつ,日々の生活をやりくりしているわけ.
しかし,秘密がだんだん大きくなり,手に余るようになると...

6編はいずれも個性的で面白い作品ばかりだが,個人的には4作目の「手紙に乗せて」が好きだ.
若いサラリーマン,亨君が主人公で,最近母を病気で亡くしたのだけども,妻を亡くした父の憔悴ぶりが気になっている.
ただ,父にどんな言葉をかけてよいかもわからず,だまって見守るしかない亨だった.
ところが,意外な人が助っ人を買って出る.....

なかなか面白かったし,その助っ人と父との間の手紙を通した心の交流に胸が熱くなる.
ああ,小説っていいなあ,と思うのはこんな本を読んだ時だ.
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「コロナと潜水服」奥田英朗

2022年09月25日 11時55分05秒 | 読書
「コロナと潜水服」奥田英朗


ちょっと不思議で,大いにホッコリする大人のファンタジー5編.
奥田英朗さんの小説は,仕事や人間関係に頑張り過ぎちゃう人が,ちょっとした出来事から自分の欠点に気付いて,生き方を変えてみるという趣旨のお話が多いですが,その,「ちょっとした出来事」ってのが,この小説ではかなりオカルトチックです.
昔,心残りを抱いたまま不本意な理由で亡くなった人が,主人公に対して何らかの働きかけをして想いを遂げるという趣向のお話です.
ただ,その「想い」というのが,「恨みつらみ」じゃなくて,残された家族を心配する想いとか,生前にあと少しのところで果たせなかった夢とかの切なさに満ちた「想い」なわけですね.
その「想い」と,主人公が抱える現状の問題というか苦しみとを巧みにリンクさせ,ファンタジックにかつユーモラスにアレンジする手腕はさすが奥田さん,見事なものです.
5つの全く異なるお話からなる短編集です.
私的には,最後の「パンダに乗って」が一番よかった.最後はグッときました.
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「夢をかなえるゾウ」水野敬也

2022年09月11日 22時31分01秒 | 読書
「夢をかなえるゾウ」水野敬也


先日紹介した「人生はニャンとかなる! ―明日に幸福をまねく68の方法」の著者の作品.

カテゴリのタグとしては一応「小説」に分類したけど,啓発本的な性格が強いね.

人生の成功者になりたいと思いながら,平凡な毎日に埋没してしまっている主人公(僕)が,摩訶不思議なゾウ(ガネーシャという神さま)に出合い,教えを受けることで夢に向かってガンバルお話.

人生の成功者になるためというより,今の「僕」の日常の何がまずいのかを一つ一つ取り上げ,毎日1つの「課題」が提供される.
その課題は「靴を磨く」だの,「募金をする」だの,「会った人を笑わせる」だの,「成功」とどう関るのかよくわからないものばかり.
これらの真意は,やがて種明かしがされるが,なるほど,確かに成功者なら必ず意識していることだろうなと思わせる説得力あるものばかり.

この本のタイトルに「夢をかなえる」というキーワードが入っているが,「人生はニャンとかなる! ―明日に幸福をまねく68の方法」には「幸福をまねく」が含まれている.
この2つは同じではないし,違いは結構大きいと思う.やるべきことも違うような気がするなあと思っていたら,本書の最後の10ページくらいに,ようやくその種明かしがされて,僕としてはフムフムと納得した次第.

人生に成功したい方はぜひ,お読みください.
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「炎上フェニックス」石田衣良

2022年09月06日 14時01分46秒 | 読書
「炎上フェニックス」石田衣良


おなじみの池袋ウエストゲートパークシリーズ.第17巻.
1998年に第1巻が出版されてから,途中数年のお休みがあったものの,年1巻のペースで刊行されてきています.
若者文化というか,日常生活で私がなかなか体験できない社会風俗を学ぶには最適な教科書となっています.

今回も「パパ活」や「ネット炎上」で苦悩する若者たちのトラブルを,マコトとタカシのコンビが痛快に解決します.

それにしても,このシリーズ,いつまで続くかな.

と思いつつ,出ると必ず読んでしまう私でした.
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「人生はニャンとかなる! ―明日に幸福をまねく68の方法」水野 敬也 , 長沼 直樹

2022年08月30日 09時27分41秒 | 読書
「人生はニャンとかなる! ―明日に幸福をまねく68の方法」水野 敬也 , 長沼 直樹


人が幸せに生きるための指標となる偉人たちの名言集.
机の隅に置いて,いつも手に取って,読み返したい1冊です.

猫の表情やしぐさが名言とマッチして微笑ましいです.

それにしても,書店に行くたびに苦い思いに駆られるビジネス書コーナーです.
ビジネスで成功する方法とか,部下の上手なしかり方とか,いわゆるビジネスハウツー本が溢れていますね.
また,嫌いな人との付き合い方とか,一瞬で人から好かれる自己紹介法とか,より個人的な人間関係を良くする本もたくさん見つかります.

ただ,こういう本を読んで,ビジネスに成功したとか,売り上げを劇的に伸ばしたとかいう話は聞いたことがない.でしょ?

なぜだと思います?

答えは簡単.ビジネスに成功するために必要なものは「方法(ハウツー)」ではないからです.

「方法」ではないのなら,何なのか?それは「資質」と「情熱」です.
どちらもある程度生まれ持って身についているものと後天的に獲得する部分と両方あるとは思いますが,この二つを差し置いて「方法」だけ伝えても何にもなりません.
資質も情熱も,本を読むことで身に付くものではないことは明らかですよね.

一方,「方法」はどう関係するのか.

ある程度の資質をもった人が,情熱をもって何かに打ち込めば,最初のうちはうまく行く.
ビジネスだけではなく,スポーツでも.楽器でも,英会話でも同じです.
最初の2~3か月は,とんとん拍子で上達します.
ゼロからスタートするわけですから当然ですね.
しかし,必ず,挫折がやってきます.

あるところで急にうまく行かなくなる.
ビジネスでいえば,売り上げが伸びないとか,チーム内に意見の相違が生じて雰囲気が悪くなるとか...
その困難をいかに乗り越えるかが,その後の上達や成功のために重要なわけですが,ここで「方法」が必要となります.
しかしながら,その「方法」はビジネスの内容とか,チームの構成メンバーと各自の資質,マーケットの傾向,財源,等々,千差万別,まさにケースバイケースであり,とても1冊の本で表せるようなものではないのです.

要約すると,ビジネスのハウツー本は役に立たない.なぜなら成功に必要な「資質」と「情熱」は本からは得られない.さらに困難な状況に際して必要となる「方法(ハウツー)」はケースバイケースであり,1冊の本で表現できない.

ということですね.
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「声の網」星新一

2022年08月16日 11時06分43秒 | 読書
「声の網」星新一


私見ですが,日本のSF界の巨匠を3人上げるなら,小松左京,筒井康隆,星新一ですかね.
小松左京は,「日本沈没」「さよならジュピター」「神への長い道」など,SFというより,人類の進化と地球の運命を題材とした未来社会派小説の巨匠といえる気がします.
筒井康隆は「家族八景」3部作等,超能力を持つ新人類の苦しみを描いた作品が素晴らしいのですが,パロディや実験小説など新しい分野を次々に切り開いてきた新ジャンル開拓者でもあります.
蛇足ながら,筒井は,「日本以外全部沈没」というとんでもない短編も書いています.こんな小説が書けるのも,小松左京氏との良好な友人関係があればこそ?
星新一は知る人ぞ知るショートショーの巨匠.この分野を切り開いたパイオニアであり,ショートショートを専門とする唯一の作家と言っても良いでしょう.

そんな星新一が,長編小説を書くとどんなお話になるのか.誰しも興味あるところでしょう.
詳細は差し控えますが,ヒントを示すなら,
「電話機」「ネットワーク」「AI」
なんとなく想像できますか?

長編小説ではありますが,同じテーマによる12個のエピソードから構成されています.
1970年に,このような題材で小説を書いたとは,氏の先見性に驚くほかありません.
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「70歳が老化の分かれ道」和田秀樹

2022年08月03日 11時57分57秒 | 読書
「70歳が老化の分かれ道」和田秀樹


著名な精神科医であり多くの著作を送り出している和田秀樹氏の新書.
刺激的なタイトルに見えるが,内容は極めて,実践的かつ説得力ある内容になっています.

この本全体を通じて感じることは高齢者に対する暖かい眼差しです.
歳をとるとこうなるんだから,高齢者はこうしなさいという書き方ではなくて,幸せな老後を生きるためにこうやろう,という内容・ノウハウ集になっています.
また,高齢者に対する誤った認識に基づく国の政策に対して,痛烈な批判を浴びせています.
特に印象に残ったのは,p.57 「運転免許は返納してはいけない」の章.
まず前提となるデータですが,警察庁交通局が発表する「平成30年度の交通事故状況」によると,人口10万人当たりの年代別事故件数をみると,最も事故を起こしているのは16~19歳で約1500件,ついで20~24歳で900件,70歳台は500件前後,80歳台は600件前後とむしろ,事故件数自体は若者の起こす事故がずっと多い.
確かに高齢者によりペダルの踏み違いによる事故は事実としてあったが,多くの若者が引き起こす悲惨な死亡事故こそ早く対策を打つべきという主張です.
別の調査では,免許を返納した高齢者群と免許を返納せず運転し続けた高齢者群とで,10年後の認知症の発症数が,運転をやめた人はそうでない人の2.1倍だったという.
車の運転という,一種の認知機能のトレーニング習慣が認知症の発症を遅らせるという疫学的なデータが得られているそうな.
つまり,運転免許の返納をする人が増えるほど,認知症による介護認定者が増えるという実に皮肉な結果を引き起こすのね.
本当に国のことを考えるなら,高齢者を家に閉じ込めてしまうのではなく世の中との関りを促進するような政策が必要なんじゃないか,という主張です.

コレステロール降下剤の安易な使用に対する痛烈な批判も興味深いので興味ある方は本書をお読みください.

私は,今年の秋に69歳になり,来年には古希を迎えますが,そんな私に元気をくれた一冊でした.
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「老虎残夢」桃野雑派

2022年07月01日 11時07分32秒 | 読書
「老虎残夢」桃野雑派


中国の宋の時代,宋の力が落ち,金や元に国境を脅かされる時代の武侠たちの物語.

ヒロインは若き女武闘家,紫苑.
紫苑には「恋華」という恋人がいるのだが,その恋華は,紫苑の武術の師匠である梁泰隆の娘で,道ならぬ恋であり,決して誰にも知られてはならない秘密であった.

ある時,梁泰隆が遠方から客人を招き,その宴会や宿泊の世話をするよう紫苑と恋華に言いつける.

しかし,その宴の終わった夜遅く,梁泰隆が毒を飲み,鎌首で腹を刺して死亡するという事件が起きる.
自殺か殺人か,それとも...

トリックや動機うんぬん以前に,物語の背景が斬新だ.

宋の時代背景や金・元等との攻防も絡み,意外にも大きな話になってくるあたりが,ありゃりゃという感じだ.

面白いとか,面白くないとかいうレベルを超えた奇想天外なミステリーといえる.
中国の歴史が好きな方には,別の楽しみ方があるかもしれないね.

令和3年の江戸川乱歩省受賞作.
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「北緯43度のコールドケース」伏尾美紀

2022年06月09日 21時08分37秒 | 読書
「北緯43度のコールドケース」伏尾美紀


社会科学系の博士号を持ち,大学教授を目指して研究をしていた沢村依理子がヒロイン.
同僚の研究者の自殺が原因で大学内のパワハラに嫌気がさし,遅まきながら大学を辞めることを決意し,就職活動を始める.
しかし,学位が逆に邪魔をして,ことごとく就活に失敗.

やむを得ず,偶然見つけたノンキャリア警察官の公募試験を受けたところ,トップで合格.
30歳にして,北海道警察初のノンキャリ博士警察官となった.

警察内では,頭の良さを活かして活躍し,順調に出世していくが,それを快く思わない古参幹部もいて,様々な嫌がらせを受ける.

ある日、5年前に未解決となっていた誘拐事件の被害者、島崎陽菜の遺体が発見される。
犯人と思われた男はすでに死亡……まさか共犯者が……? 捜査本部が設置されるも、再び未解決のまま解散。
しばらくのち、5年前の誘拐事件の捜査資料が漏洩する。なんと沢村依理子は漏洩犯としての疑いをかけられることに。
果たして彼女の運命は、そして一連の事件の真相とは.

女であることで,様々な理不尽な扱いを受けるヒロインだが,彼女を暖かく見守り,陰で支援する人物もいることが救いだ.

結局,彼女がどんなパワハラを受けたかということも重要だが,彼女自身がどのように生きたいのかが,より重要なんだというメッセージが伝わってくる.
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