「自由への手紙」オードリー・タン
話題の台湾のIT担当大臣の本.
「自由への手紙」というタイトルに含まれる「自由」という言葉はどういう意味だろう.
我々は,自由に生きているだろうか?
そもそも自由に生きることが本当に幸せなことなのだろうか?
社会から法や慣習をなくしてしまうことが自由なのだろうか?
犯罪者は自由に生きている人なのか?
そんな懸念をもってこの本を開いたのだが,しょっぱなから私の較量の狭さを思い知らされた一冊だった.
まず,自由と言っても2種類があり,一つは過去の慣習や常識に捕らわれてことから自分が解放されること.
もう一方は,自分だけでなく他人を束縛から解放してあげることだ.
つまり,自分だけでなく,他の人を自由にしてあげることが重要だということを最初に述べている.
自分が自由にふるまうことが他人の自由を奪うことになっては,自由の本質に反することになる.という立場を明確にして出発する.
具体例で説明しよう.
例えば,夫婦別姓を強烈に反対する議員さんがいらっしゃる.
反対することは自由だが,反対することで,世の中の共働き夫婦の妻の女性が,キャリアにとって不利に働くあるいは不便さを増長する社会的不合理を押し付けることになっていることに対する配慮がない.
議員さん自身が夫婦別姓にしないのは自由である.しかし,それを他人に強制するのは他人の自由を奪っていることに気付かなければならないのだ.
このように自分自身がどうかということと他人をも束縛から解放するという立場で「自由」を見つめてみると一気に視野が広がるのである.
社会を取り巻く様々な束縛を17の視点から整理し,それらを一つ一つ見直していくという手法で「自由」考察している.
17の視点のうち,「不安から自由になる」では,新型コロナ拡大時にマスク不足が懸念された時,オードリー得意のIT技術を駆使して「マスク配給アプリ」を3日間で開発したことが一時期マスコミを賑わせたが,その経緯が興味深く描かれている.
システム自体もブロックチェーンを応用した巧妙なものだが,各担当省庁との良好な連携が成功の一因だ.
根回しのうまさも天才的なものがありそうだ.
また,「ジェンダーから自由になる」では,オードリーという名前からもわかるように,男性として産まれたものの,今は女性として振る舞っているが,「自由」というコンセプトから実に明快にジェンダーの問題を描いており,いったい,世の中は(特に日本の政治家は)同性婚を法的に認めることに,なぜ,ごちゃごちゃ反対するのか?という気になってくる.
とにかく万事明快であり,さわやかであり,読んでいて生きる意欲が沸いてくる本である.
話題の台湾のIT担当大臣の本.
「自由への手紙」というタイトルに含まれる「自由」という言葉はどういう意味だろう.
我々は,自由に生きているだろうか?
そもそも自由に生きることが本当に幸せなことなのだろうか?
社会から法や慣習をなくしてしまうことが自由なのだろうか?
犯罪者は自由に生きている人なのか?
そんな懸念をもってこの本を開いたのだが,しょっぱなから私の較量の狭さを思い知らされた一冊だった.
まず,自由と言っても2種類があり,一つは過去の慣習や常識に捕らわれてことから自分が解放されること.
もう一方は,自分だけでなく他人を束縛から解放してあげることだ.
つまり,自分だけでなく,他の人を自由にしてあげることが重要だということを最初に述べている.
自分が自由にふるまうことが他人の自由を奪うことになっては,自由の本質に反することになる.という立場を明確にして出発する.
具体例で説明しよう.
例えば,夫婦別姓を強烈に反対する議員さんがいらっしゃる.
反対することは自由だが,反対することで,世の中の共働き夫婦の妻の女性が,キャリアにとって不利に働くあるいは不便さを増長する社会的不合理を押し付けることになっていることに対する配慮がない.
議員さん自身が夫婦別姓にしないのは自由である.しかし,それを他人に強制するのは他人の自由を奪っていることに気付かなければならないのだ.
このように自分自身がどうかということと他人をも束縛から解放するという立場で「自由」を見つめてみると一気に視野が広がるのである.
社会を取り巻く様々な束縛を17の視点から整理し,それらを一つ一つ見直していくという手法で「自由」考察している.
17の視点のうち,「不安から自由になる」では,新型コロナ拡大時にマスク不足が懸念された時,オードリー得意のIT技術を駆使して「マスク配給アプリ」を3日間で開発したことが一時期マスコミを賑わせたが,その経緯が興味深く描かれている.
システム自体もブロックチェーンを応用した巧妙なものだが,各担当省庁との良好な連携が成功の一因だ.
根回しのうまさも天才的なものがありそうだ.
また,「ジェンダーから自由になる」では,オードリーという名前からもわかるように,男性として産まれたものの,今は女性として振る舞っているが,「自由」というコンセプトから実に明快にジェンダーの問題を描いており,いったい,世の中は(特に日本の政治家は)同性婚を法的に認めることに,なぜ,ごちゃごちゃ反対するのか?という気になってくる.
とにかく万事明快であり,さわやかであり,読んでいて生きる意欲が沸いてくる本である.