「眠れぬ真珠」石田衣良
石田衣良の珠玉の恋愛小説
普段は恋愛小説はほとんど読まない僕ですが,石田衣良が恋愛小説を書くとどうなるかということにも興味があって読んでみた次第.
面白かったですよ.
ヒロインは45歳の更年期を迎えた版画作家の咲世子(さよこ).
恋人はいるが,終生を共に過ごしたいと思うほどの相手はいない.
才能と仕事に恵まれているが,中年期を迎え,自分の作品の今後に不安を抱えている.
そんな芸術家としての不安定な日常の中に,突然現れた若い映像作家,素樹(もとき)
素樹の新しいドキュメンタリーの素材として咲世子の創作活動が選ばれたことから,急速に接近し,惹かれあう咲世子と素樹.
ま,ここから先は解説しても面白くもなんともないので,省略.
確かにシーンとしては恋愛だし,官能的なシーンもタップリと出てくるが,やはりそこは石田衣良小説.
感情表現というより心理表現と言った方がぴったりくる.
心の動きがある意味クールに文章化されている.
読んでいて,くどさがない.
例えるなら,霜降りのお肉を,ポン酢でさっぱりといただくような感じというか...
ところで,石田衣良さんの小説,いろいろと読んできたのですが,感想をアップしたものをリストアップしてみると...
・池袋ウエストゲートパークシリーズ10冊
・カンタ
・4TEEN
・6ティーン
・チッチと子
・5年3組リョウタ組
・シューカツ
・親指の恋人
・スローグッドバイ
・娼年
へえ~.20冊近く読んでる.
それほど,石田衣良が好きというほどでもないのだけど,定期的に読みたくなる作家ではあるな.
石田衣良の珠玉の恋愛小説
普段は恋愛小説はほとんど読まない僕ですが,石田衣良が恋愛小説を書くとどうなるかということにも興味があって読んでみた次第.
面白かったですよ.
ヒロインは45歳の更年期を迎えた版画作家の咲世子(さよこ).
恋人はいるが,終生を共に過ごしたいと思うほどの相手はいない.
才能と仕事に恵まれているが,中年期を迎え,自分の作品の今後に不安を抱えている.
そんな芸術家としての不安定な日常の中に,突然現れた若い映像作家,素樹(もとき)
素樹の新しいドキュメンタリーの素材として咲世子の創作活動が選ばれたことから,急速に接近し,惹かれあう咲世子と素樹.
ま,ここから先は解説しても面白くもなんともないので,省略.
確かにシーンとしては恋愛だし,官能的なシーンもタップリと出てくるが,やはりそこは石田衣良小説.
感情表現というより心理表現と言った方がぴったりくる.
心の動きがある意味クールに文章化されている.
読んでいて,くどさがない.
例えるなら,霜降りのお肉を,ポン酢でさっぱりといただくような感じというか...
ところで,石田衣良さんの小説,いろいろと読んできたのですが,感想をアップしたものをリストアップしてみると...
・池袋ウエストゲートパークシリーズ10冊
・カンタ
・4TEEN
・6ティーン
・チッチと子
・5年3組リョウタ組
・シューカツ
・親指の恋人
・スローグッドバイ
・娼年
へえ~.20冊近く読んでる.
それほど,石田衣良が好きというほどでもないのだけど,定期的に読みたくなる作家ではあるな.
「呪いの時代」内田樹
私が最も尊敬する知識人の一人,内田樹先生の文庫.
時代の動きのエッセンスを言語で表現すること,その正確さと巧みさはほとんど天才と言ってもいいのではないかと思う.
私のへたな文章で内容を紹介するより,直接読んでもらった方が話は100万倍速い.
私が最も尊敬する知識人の一人,内田樹先生の文庫.
時代の動きのエッセンスを言語で表現すること,その正確さと巧みさはほとんど天才と言ってもいいのではないかと思う.
私のへたな文章で内容を紹介するより,直接読んでもらった方が話は100万倍速い.
熊本のある大学に住んでいる.
名前はジャッキー・ニャン
人を恐れることはない.
というか,人を無視する.
孤高の猫. pic.twitter.com/RqT2ZiYuK6
記念すべき1000ツイートまで,あと87.
これと同じツイートをあと87回つぶやけばいいのか?
龍神の雨 「道尾秀介」
道尾秀介さんの小説としては,「光媒の花」「鬼の足音」に続き,3作目
継父と暮らす兄妹の蓮と楓.
この継父がとんでもないやつで,血の繋がっていない妹の楓にちょっかいを出そうとする.それを必死で守ろうとする蓮.
もう一家族は,継母と暮らす兄弟の辰也と圭介.
無くなった母が未だに忘れられない兄弟は継母を毛嫌いし,殺意さえ抱く.
ねじ曲がった,家族関係の土壌の中に,台風の雨が降り注ぎ,不幸な事件を起こしてしまう.
二つの家族は台風の動きとともに蛇行し,一つの殺人事件で交差する.
本格ミステリーなんだけど,トリック中心の推理小説では全くなくて,登場人物たちの精神世界を丁寧に書き分け,非常に多面的で多彩な物語が同時並行して進んでいく.
そして,ある時,2つの物語が「何となく」つながるんだけど,実は肝心なところで抜けがある.ミッシングリングね.
そして,失われたピースが見つかってみると,ちょうど,オセロゲームの最後の逆転のように,盤面の色が一気に白黒反転してしまう.
あっと驚く物語の展開は,本当に素晴らしい.
道尾秀介さんの小説としては,「光媒の花」「鬼の足音」に続き,3作目
継父と暮らす兄妹の蓮と楓.
この継父がとんでもないやつで,血の繋がっていない妹の楓にちょっかいを出そうとする.それを必死で守ろうとする蓮.
もう一家族は,継母と暮らす兄弟の辰也と圭介.
無くなった母が未だに忘れられない兄弟は継母を毛嫌いし,殺意さえ抱く.
ねじ曲がった,家族関係の土壌の中に,台風の雨が降り注ぎ,不幸な事件を起こしてしまう.
二つの家族は台風の動きとともに蛇行し,一つの殺人事件で交差する.
本格ミステリーなんだけど,トリック中心の推理小説では全くなくて,登場人物たちの精神世界を丁寧に書き分け,非常に多面的で多彩な物語が同時並行して進んでいく.
そして,ある時,2つの物語が「何となく」つながるんだけど,実は肝心なところで抜けがある.ミッシングリングね.
そして,失われたピースが見つかってみると,ちょうど,オセロゲームの最後の逆転のように,盤面の色が一気に白黒反転してしまう.
あっと驚く物語の展開は,本当に素晴らしい.
「ボックス!」百田尚樹
面白い!
高校ボクシング部の若者たちの,インターハイ・国体にかける青春.
私には,ボクシングを面白いと思う感性があるとは思わなのですよ.
しかし,それにも関わらず,力技で引き込まれてしまった感じ.
百田さんの筆力に脱帽です.
ページをめくる手が止まらない.
アマチュアとプロのボクシングの違いも分かりやすく物語に組み込まれていて,人気が低迷気味のボクシングにとって啓蒙小説にもなっているかな.
とにかく,エンタテーメントとしては超一級の面白さ.
素晴らしいのひとこと.
面白い!
高校ボクシング部の若者たちの,インターハイ・国体にかける青春.
私には,ボクシングを面白いと思う感性があるとは思わなのですよ.
しかし,それにも関わらず,力技で引き込まれてしまった感じ.
百田さんの筆力に脱帽です.
ページをめくる手が止まらない.
アマチュアとプロのボクシングの違いも分かりやすく物語に組み込まれていて,人気が低迷気味のボクシングにとって啓蒙小説にもなっているかな.
とにかく,エンタテーメントとしては超一級の面白さ.
素晴らしいのひとこと.
「硝子の葦」桜木紫乃
ホテルローヤルで直木賞を取った桜木紫乃さんの長編小説.
全体的にはミステリーなんですが,小説のテイストは完全に純文学.
逆に謎解きの要素がなければ,そのまま芥川賞の候補になれそう.
捻じれた男女の関係が縦糸,愛憎交わる親子の関係が横糸となり,複雑に編み込まれた物語を形成している.
トリックそのものは単純で,裏表紙の解説短文にある「驚愕の結末を迎える傑作ミステリー」は大ウソ.ミステリーファンを馬鹿にしている?
アホな編集者は無視するとして,この小説そのものは非常に優れた文学作品だと思うのです.
文章の味わいは深く,極めて薫り高い.
再三,男女のシーンが出てくるが,官能とは程遠い,非常に乾燥した哀しみにあふれた描写となっている.こんなに乾いた男女関係がありうるのかとも思う.
幼少期に虐待を受けた子が,何とか自分の気持ちに折り合いを付けながら,世の中を生きていくには,ねじ曲がった心の容器に合うように,自分の人生を歪めながら生きていくしかないのかと思わせる.
さらに言うと,生きることと死ぬことは実は同じことではないかとも.
こうなったら,「ホテルローヤル」も,読むしかないね.
ホテルローヤルで直木賞を取った桜木紫乃さんの長編小説.
全体的にはミステリーなんですが,小説のテイストは完全に純文学.
逆に謎解きの要素がなければ,そのまま芥川賞の候補になれそう.
捻じれた男女の関係が縦糸,愛憎交わる親子の関係が横糸となり,複雑に編み込まれた物語を形成している.
トリックそのものは単純で,裏表紙の解説短文にある「驚愕の結末を迎える傑作ミステリー」は大ウソ.ミステリーファンを馬鹿にしている?
アホな編集者は無視するとして,この小説そのものは非常に優れた文学作品だと思うのです.
文章の味わいは深く,極めて薫り高い.
再三,男女のシーンが出てくるが,官能とは程遠い,非常に乾燥した哀しみにあふれた描写となっている.こんなに乾いた男女関係がありうるのかとも思う.
幼少期に虐待を受けた子が,何とか自分の気持ちに折り合いを付けながら,世の中を生きていくには,ねじ曲がった心の容器に合うように,自分の人生を歪めながら生きていくしかないのかと思わせる.
さらに言うと,生きることと死ぬことは実は同じことではないかとも.
こうなったら,「ホテルローヤル」も,読むしかないね.