書く仕事

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「病弱探偵」岡崎琢磨

2022年02月17日 15時44分10秒 | 読書
「病弱探偵」岡崎琢磨


病気がちでベッドから離れられない女子高生マイが名探偵役を務める推理小説.
ワトソン役は彼女の幼馴染で同級生のゲンキ.
学校で起きたちょっと不思議な出来事や,友達から受けた相談事を,見舞いのついでにマイに話して聞かせると,マイがベッドの上で見事に解決して見せるという仕掛けね.
ベッド・ディテクティヴ (bed detective)とかいうジャンルであり,広義の安楽椅子探偵ものというわけだ.
マイは,ゲンキが見舞いに来ると,のどが痛い,頭が痛い,お腹がいたいと訴え,ゲンキが「大丈夫だよ.のどが痛くて死んだ人はいない」などと慰めようものなら,「あなたに夏風邪の何がわかるの?熱が出るわのどが痛いわ視野はかすむわで最悪よ.この辛さを知らないやつから『死なない』なんて言われても楽にはならないの.」と食って掛かる.まあ,八つ当たりに間違いないのだが,ゲンキが「実は今日学校で不思議なことがあってね」と話を持ち掛けると,マイは目の色を変えて「それを先に言いなさい」とくる.
6つの短編からなる連作だが,お話の舞台は夏祭りだったり,体育祭だったり,クリスマスパーティだったりするが,いずれもクラスメートたちの恋愛事情がベースにあり,その発展形として起きた事件なので,殺人事件や傷害事件は出てこない.
ある意味安心して入っていけるお話になっているのがありがたい.

近頃は年のせいか,人を殺したり傷つけたりする場面や,精神的に追い詰めるようなお話は受け付けない体質になってきているようだ.
ゲンキとマイの恋の行方も,もどかしくも微笑ましい.
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「通夜女(つやめ)」大山淳子

2022年02月01日 13時54分55秒 | 読書
「通夜女(つやめ)」大山淳子


女子大生の小夜子は就職活動にことごとく失敗し,心が折れてしまう.
そんな時,ふらりと訪れた通夜の会場で,線香の香りとお経のリズムに心が癒されることに衝撃を受ける.

それ以後,見ず知らずの人の通夜を渡り歩くことが生きがいとなってしまった小夜子.
肝心の就職活動はどうなるのか.
それよりも,何事にも自信が持てない彼女に未来はあるのか.
遠回りしたのちに小夜子が見つけたもう一つの人生とは.

なかなか深いテーマのお話でした.
「君の夢は何?」
と聞かれて,滔々と未来を語れることが素晴らしいとされる現代社会.
「夢」,「自己実現」,「目標」この3語を使って,800字以内であなたの未来を語りなさい.

そんな社会に息苦しさを感じている若者は多いんじゃないかな.

取り立てて,やりたいことなんてないし,命令された仕事だけ手を抜かずに一生懸命やり,夜になったらビールとおいしい料理を食べて,風呂に入って寝る.そんな生活ができれば幸せです.

もし面接でそんなことを言ったら,採用してくれる企業は1社もないだろうな.

人の生き方に関する指南書はいろいろと出版されているけれど,それらはいずれも,「こうしなさい」という内容だろう.
「こんな考え方もある」という本はなかなか無いよね.
そんな立場で書かれた(作者が意図したとは思わないけど)人生の指南書ともなりうる小説でした.
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