風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

七月大歌舞伎~昼の部~ @大阪松竹座(7月15日)

2013-07-20 22:28:56 | 歌舞伎




のぞみで2時間。
行ってしまいました、松竹座の七月大歌舞伎。
一昨年のロンドン以来、人生二度目の観劇遠征です。
仁左衛門さんの生『保名』がど~~~~しても!観たく。。。
代わりに、歌舞伎鑑賞教室の超良席を手放しましたが・・・(すまねぇ、時蔵さん!)
それでも手放したチケット代と遠征費用はまったく釣り合っておりませんが・・・
でも、でも、後悔しておりませんよ!
この七月大歌舞伎、昼も夜も、もっっっのすごく楽しかったのですもの!
思いきって遠征して本当によかったです!


【柳影澤螢火(やなぎかげさわのほたるび)】

宇野信夫作の新作歌舞伎。
「37年ぶりの上演」などと言うから、一体どれだけつまらん演目なのかと思いきや。
面白いじゃないですか!

どの役も一癖も二癖もある役ばかりなので、観ていて実に楽しかったです。

翫雀さんの綱吉。
女の子よりも能と男の子が大好きなマザコン将軍。
もう、お犬様(=すばらしくリアルな動きの狆)を抱っこしてる姿が可愛すぎて!!!
これを見るだけでも大阪まで行く価値がある!

秀太郎さんの桂昌院。
若い美青年が大好き♪なエロいの年増のお役が、これほどまでお似合いとは。
橋之助さんの吉保にねっとりと迫るあの淫靡さ。
にもかかわらず漂う、権威者の気品。
これを見るだけでも大阪まで(以下略)!!
いやほんとに、最高でした。
こういう秀太郎さん、もっと観たい!

扇雀さんの隆光。
立役は初めて拝見しましたが、低くてよく通るいいお声!
吉保との口喧嘩シーンは、聞き惚れながらもニマニマしちゃいました。
最後に明かされた真実に吃驚。

孝太郎さんのお伝の方。
一見大人しげで、綱吉のお気に入りであり続ける強かさ。
けれど茶室で恋人の数馬(薪車さん)とともに殺されるときに見せる弱さ。
その好演に目が釘付けでした。ブラボー!

児太郎くんのお美代の方。
悪意がなくのんびり育ちのいい感じが出ていて、よかったです。


亀蔵さんの権太夫。
酔っ払いぶりがお見事。
花道から落っこちちゃうんじゃないかとハラハラいたしました。

吉弥さんの金吾。
吉保の腹心の家来。
こちらも立役は初めて拝見しましたが、いいですね!
声も姿もすっきりとしていて、素敵でした。

薪車さんの数馬。
この方はたぶん初めて拝見したのですが、とても女性に人気があるのですね!
客席のあちこちから「薪車が・・・」「薪車が・・・」という嬉しげな女性達の囁きが聴こえて面白かったです^^
とっても爽やかな方ですね。
爽やか過ぎて少々物足りない気もいたしましたが、昼も夜も役がそうだったせいかもしれません。
来月の竹三郎の会の四谷怪談で直助を演じられるようなので、楽しみ♪

橋之助さんの吉保。
素晴らしい熱演でした!
この熱演を見るだけでも大阪まで(以下略)!
冷徹な吉保が最後に浮かべた涙にぐっと来た。。。
ちょっと安易に人を殺し過ぎ(=思慮の足らない男)にも見えたけれども^^;

福助さんのおさめの方。
こちらも、橋之助さんに負けない熱演でした!
もっとも、吉保と並ぶ主役なので少し辛めに言わせていただくと、
序幕であれほど可憐だった女の子が綱吉の側室になった後は性格まで悪くなってしまったとしか思われない変わり様(“強か”とは違う、イジワルな感じ)は、いかがなものかと。。
吉保の方は序幕の段階で「桂昌院様に紹介してやる」と言われて喜んでいる様子から既に単なる善人ではないことがわかるので、父親が殺されて綱吉に取り立てられた後の変貌も、まぁさほど不自然には感じないのです。
ですがおさめは、序幕では「お兄さま。さめはお兄さまとこうして一緒にいられるだけで幸せです」とそれは健気な女の子だったはずなのに、その後色々あったとはいえ、茶室でお伝の方に向かって
浮かべる底意地の悪い笑みなど「あの女の子がこんな笑みを浮かべるようになるものかなぁ」と思ってしまいました(あるいは最初から、愛する吉保以外に対してはそれほど健気な子でもなかったということか?)。
ただ、それほどまでに変貌しても、桂昌院と吉保の関係を目の前で見せられそうになると激しく動揺したり、吉保に会ったときに心から嬉しそうに「吉保さま!」と笑ういじらしい姿に、じぃんときた。。。

大詰。
夕暮の六義園の庭に咲く萩。おさめの衣装の青紅葉に交じる赤紅葉。一転して暗闇の中、柳の間を飛び交う蛍。
最初から最後まで吉保を心から愛し、吉保のために生きて、そんなおさめの最後の決着のつけ方に泣きました。。。


今回の発見。
東&西成駒屋ご兄弟、とてもいいですね!!

そうそう。
関西の劇場で、関西弁の方々に囲まれて、「駒込」とか「六義園」とか聞き慣れすぎた地名を聞くのは、なんだか妙な感覚でした^^;
せっかくなら関西が舞台の演目が見たかったなぁとも思いましたが、逆に杮落しであの素晴らしい吉田屋が観られたのは東京で関西の演目をやってくれたおかげですから、勝手なことばかり言ってはダメですね。


【保名】

真っ暗な世界に、ゆっくりと浮かび上がる春の野辺。
一面に咲き乱れる菜の花と満開の桜の木。
やがて花道に登場する保名。
その立ち姿に、やっぱり思い切って一階席をとってよかった!と思いました。
今回は前から4列目中央の席だったので、それはそれは贅沢な時間を過ごさせていただきました♪

仁左衛門さんの保名は、観る前はナヨナヨふわふわした雰囲気なのかと勝手に想像していたのですが、美しいなかにも意外な男性らしさも感じさせる保名でした。
さばき髪で亡き恋人の形見の小袖を肩に掛け、花道をさ迷い歩く保名。その目を見ただけで、正気を失っていることがわかります。
基本的に踊りの間は悲しみをたたえながらもどこかに心を置いてきたような表情なのですが、花道の七三で、二匹の蝶を扇子ではらうような戯れるような踊りのなか、一瞬、蝶を見て浮かべた微笑にどきっとしました。
これが見られただけでも大阪来てよかった!と本日数回目にして最も強く感じた、綺麗な綺麗な微笑。

まるで天国のような春の野で、かつて恋人と過ごした時間を踊る保名。
清元がやんで無音になると、急に落ち着かなげに辺りを見まわし、何かを探すような仕草を見せ、床に落ちた小袖を見つけて、清元とともに踊りを再開します。
そして最後は、再び訪れた喪失感のなか、小袖を抱き締め蹲って泣き沈む保名の姿で幕。

保名が深く悲しめば悲しむほど、その美しさは増していく、そんな踊りでした。
25分間は本当にあっという間で。
幕が切れた後は、まるで美しい白昼夢を見ていたような心地がいたしました。
ずっとずっと、あの世界に浸っていたかったなぁ。。。

しかし仁左衛門さんは、想像していたとおり、保名にぴったりですね。
高貴な品と、儚さと、美しさと、でも凛とした男性らしさと。
乱れた長い黒髪に、薄水色薄ピンクのパステルカラー&
グラデーションの入ったの衣装が恐ろしいほど似合う69歳。
途中、客席から扇子で顔が陰になるような振りのとき、扇子越しに見えた目を伏せた横顔が色っぽいのなんのって。
ほんと奇跡のようなお人だ。。。
保名の唯一の台詞「なんじゃ恋人がそこへいた どれ どれどれ エゝまた嘘云うか わけも無い事云うは ヤーイ」も、仁左衛門さんのはんなりとした柔らかな声にぴったりでした。

観られてよかった!!

そうそう。この日はロビーに仁左衛門さんの奥様がいらっしゃいました^^


七月大歌舞伎~夜の部~


《インタビュー》
仁左衛門が語る「七月大歌舞伎」
・歌舞伎俳優・片岡秀太郎()(

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