ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

大阪府保険医協会: 福島県警本部の産婦人科医師逮捕に関する不当な「表彰」の撤回求め要求書提出

2006年04月20日 | 大野病院事件

http://osaka-hk.org/cgi/topics/s_news.cgi?action=show_detail&txtnumber=log&mynum=159

☆大阪府保険医協会は2006年3月9日、福島県大野病院産婦人科医師の逮捕に関し、「理事会抗議声明」を発表し、関係方面から大きな反響をえました。

☆しかし4月14日、産婦人科医師を逮捕した富岡署を県警本部が表彰したとの驚くべき報道がされました。

☆保険医協会は4月19日付で、福島県警察本部 綿貫茂本部長に対し「表彰」の撤回を求め、また富岡警察署 警察署長に対し「表彰」の辞退を求める以下の「要求書」を送付しました。
 

福島県警本部 綿貫茂本部長 殿

                                                  大阪府保険医協会
                                                     闘争本部委員会
                                                        産婦人科部会
                                                外科・整形外科部会
                                                           皮膚科部会

福島県警本部の不当な「表彰」の撤回を要求する

■日頃は凶悪犯の逮捕や難事件の解決など、福島県民の安心と安全のためにご尽力いただいていることに敬意を表します。

■私たちは、全国10万人余の医師が加入する全国保険医団体連合会に所属し、大阪府下の開業医や勤務医6,300人が加入する医師団体です。国民の医療を守り改善すること、そして安心してよい医療を行えることを願って、さまざまな取り組みを進めているところです。

■さて、平成18年4月14日、福島県警本部は福島県立大野病院の医師を逮捕した事件で、富岡署に本部長賞を授与し栄誉を称えたことが報道されました。

■しかし今回の逮捕は、既に我々大阪府保険医協会や医師会、日本産婦人科学会、産婦人科医会、周産期医療の崩壊をくい止める会など全国の多くの医師団体からの抗議声明で指摘されたごとく、現代医科学の学問的水準においても日本の産科医療水準においても不当なものであり、多くの関係有識者が疑問を表明しているとおり極めて不透明なものです。

■またご承知のように、国会の審議でも、逮捕に疑問の声が上がっているところの現在係争中の事案であり、まだ有罪が確定したわけではない国民注視の問題です。

■しかるに、今後医療崩壊を招く一里塚になりかねないこの事案に対して、いち早く警察内部で表彰を行うことは、この「逮捕」の“正当性”を強弁・誇示しようとするものであり、抗議声明を出した全国の医師団体をはじめとする関係世論に対する恫喝と挑戦に他なりません。

■私たちは、本部長賞をただちに撤回することを要求します。

■あわせて、貴殿のご見解をいただきたく申し入れるものです。


富岡警察署 警察署長殿

                                                  大阪府保険医協会
                                                     闘争本部委員会
                                                        産婦人科部会
                                                外科・整形外科部会
                                                           皮膚科部会

福島県警本部の不当な「表彰」の辞退を要求する

■日頃は凶悪犯の逮捕や難事件の解決など、福島県民の安心と安全のためにご尽力いただいていることに敬意を表します。

■私たちは、全国10万人余の医師が加入する全国保険医団体連合会に所属し、大阪府下の開業医や勤務医6,300人が加入する医師団体です。国民の医療を守り改善すること、そして安心してよい医療を行えることを願って、さまざまな取り組みを進めているところです。

■さて、平成18年4月14日、福島県警本部は福島県立大野病院の医師を逮捕した事件で、富岡署に本部長賞を授与し栄誉を称えたことが報道されました。

■しかし今回の逮捕は、既に我々大阪府保険医協会や医師会、日本産婦人科学会、産婦人科医会、周産期医療の崩壊をくい止める会など全国の多くの医師団体からの抗議声明で指摘されたごとく、現代医科学の学問的水準においても日本の産科医療水準においても不当なものであり、多くの関係有識者が疑問を表明しているとおり極めて不透明なものです。

■またご承知のように、国会の審議でも、逮捕に疑問の声が上がっているところの現在係争中の事案であり、まだ有罪が確定したわけではない国民注視の問題です。
 
■しかるに、今後医療崩壊を招く一里塚になりかねないこの事案に対して、いち早く警察内部で表彰を行うことは、この「逮捕」の“正当性”を強弁・誇示しようとするものであり、抗議声明を出した全国の医師団体をはじめとする関係世論に対する恫喝と挑戦に他なりません。

■私たちは、本部長賞をただちに辞退することを要求します。

■あわせて、貴殿のご見解をいただきたく申し入れるものです。

                                                  Date: 2006/04/20

****** 参考

大阪府保険医協会の抗議声明

朝日新聞:医師逮捕事件 富岡署を表彰


日本医師会:唐澤会長、木下常任理事記者会見

2006年04月20日 | 大野病院事件

**** 日医白クマ通信、No.371、2006年4月19日(水)
http://www.med.or.jp/shirokuma/no371.html

唐澤会長、木下常任理事記者会見
産婦人科医の逮捕・起訴による医療現場への影響を懸念

 福島県立大野病院の産婦人科医が、医師法第21条違反と業務上過失致死の疑いで逮捕・起訴された問題で、唐澤祥人会長は、4月18日、木下勝之常任理事とともに日医会館で記者会見を行い、この問題に対する日医の考えを改めて説明した。

 唐澤会長は、まず、医師が逮捕・起訴されてしまったことについて、「類似した事例と比較しても、大きな疑問を感じざるを得ない」と捜査当局の対応を疑問視。そのうえで、今回のように医師法第21条が拡大解釈され、捜査機関がいきなり捜査権を行使するような事態が全国各地で起きれば、医療現場に混乱が生じ、国民にも悪影響を及ぼしかねないとその問題点を指摘した。

 また、今回のように医療の経過中に不幸な出来事が起きてしまった場合には、単に責任追及するのではなく、その原因を医療関係者自らが究明していくことが大事になると強調。加えて、どのような場合に届出を行うべきかについて議論を行い、国民の合意を得たうえで、新たな医療事故の届出制度を構築することを求めた。

 今後の日医の具体的な対応については、木下常任理事が、(1)早いうちに会内に委員会を立ち上げ、医師法第21条の問題についての議論を開始すること、(2)委員会のメンバーには医療関係者だけではなく、司法の関係者にも加わってもらうこと―などを説明した。

◆問い合わせ先:日本医師会広報課 TEL:03-3946-2121(代)


産科医不足 お母さんの声を、もっと

2006年04月20日 | 地域周産期医療

最近の分娩施設の減り方は急激だ。地域に分娩施設が一つもないような状況になってしまってからでは、その地域では分娩施設の集約化はできない。その地域では、もうすでに手遅れということになってしまう。いったん産科空白地域となってしまってから、産科医の募集から始めて、産科をゼロから立ち上げるのは至難の業だ。全国各地の産科医療の厳しい状況を見渡して現状を認識し、広域医療圏の全体が手遅れになってしまう前に、今、地域で一致協力して有効な手を打たねばならない。

****** 信濃毎日新聞、2006年4月19日

産科医不足 お母さんの声を、もっと

 産科医不足から、全国で病院や診療所の産科休止が相次いでいる。県内も例外ではない。

 産科がなくなるという問題に直面して、上田市などで母親らがお産の在り方を考える会をつくり、活動している。医師不足解消への特効薬はない。助産師、看護師など、出産にかかわるマンパワーを結び付け、母子を支える仕組みをつくることから、取り組みを始めたい。

 県産婦人科医会が昨年12月に行った調査によると、回答があった107施設のうち、5年間で20施設が産科を休止した。お産を受け入れている施設は53カ所あった。さらに15施設が産科休止や医師減少の可能性があると答えている。出産の場はこれからも減りそうだ。

 産科は、いつ始まるか分からない出産に備えて当直が多く、緊張を強いられる。ほかの診療科に比べて、訴訟が多いという事情もある。厳しい労働環境から、産科をやめて婦人科診療に切り替える医師が増えており、若い医師も産婦人科を敬遠している。

 こうした事態に、厚生労働省は、地域の中核となる病院に医師を集める「集約化」で対応しようとしている。下伊那地域では、主に飯田市立病院が出産を担当し、地域の診療所が妊娠中の健診を行うシステムが今年から始まった。

 「集約化」で医師の労働条件は良くなり、お産の安全性も高まるだろう。同時に、子育ての原点であるお産に「安心」を求める、産む側の視点を忘れないようにしたい。

(中略)

 上田市のグループは、「集約化」した場合でも、身近な場所で、助産師に継続して支援してもらえるシステムが必要だと訴えていた。

(中略)

 まず、お産の当事者が声を上げることだ。そして、医師、助産師、行政関係者らとともに、病院の配置など、地域の実情に合わせた対応策を考えていきたい。

(信濃毎日新聞、2006年4月19日)