goo blog サービス終了のお知らせ 

元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「第5回九州ハイエンドオーディオフェア」リポート(その1)

2008-04-16 21:56:24 | プア・オーディオへの招待

 去る4月11日から13日にわたって福岡市の福岡国際会議場で開催された「第5回九州ハイエンドオーディオフェア」に行ってきたのでリポートしたい。今回は例年になくメーカーや販社のスタッフが多かったように思われ、それぞれが扱う商品のアピールに余念がなかったが、その中で一番興味深かったのが、マニア向けブランド「ローゼンクランツ」を展開するカイザーサウンド有限会社の主宰者のレクチャーである。

 表向きは新製品のスピーカー「The Musicality」のデモということになっていたが、演奏の途中で突然音を絞ると、セッティングについての講義を始めた。彼曰く、会場で使われていたスピーカーは室内全体に同じ音像・音場が行き渡るように配慮されているという。着席していた参加者を立たせて、部屋の中のどこでもいいから、任意のところで聴いて欲しいと要望。実際にスピーカーの向いていない箇所で聴いてみたら・・・・なんと、彼の言うとおり同じ音像・音場を認めることが出来るではないか。さらに、絶妙にバランスが取れているというその状態から、ほんの5,6センチ片方のスピーカーを移動してみたら・・・・驚くことに、完全に定位が崩れて不自然な音になっている。

 彼によれば、いい加減なセッティングをすると音が“逆相”になるそうだ。逆相というのはプラスとマイナスとを間違えて結線すること・・・・だけではなく、音像を上手く捉えることが出来ないセッティングをした際の音も指すのだという。おそらくは「The Musicality」が非常に緻密な設置を必要とする製品だということもあるのだろうが、これだけセッティングの重要性を説いたプレゼンテーションは、今まで足を運んだオーディオ関係のイベントではお目に掛からなかった。

 考えてみれば、スピーカーの配置によって音が変わるなんてことは我々オーディオファンにとって常識以前のことであるはずなのだ。ところが、いざ目の前に機器を並べられると、その機器自体の性能のことばかりに気を取られ、実際に自分が導入してどう使うのか、そのことを失念してしまう。製造側だってそれを承知しているからこそ、機器の宣伝に余念がない。カイザーサウンドの主宰者は、メーカーもディーラーも機器そのものを売り込むことに躍起になっており、使いこなしについての提案を行っていないことを憂慮しているらしい。

 送り手の興味が機器自体になっているのならば、ユーザー側もおのずから興味の対象は“どの機器をどの値段で買うか”ということになってしまう。だから実機を家電量販店などでチラッと見て、あとはネット検索で一番安いところを探して通販で買う・・・・なんていうやり方が罷り通っている。“作り手と売り手と、そして使い手とが互いにソッポを向いて、モノの価格だけが取り沙汰されている。これではオーディオの発展は見込めない!”というような意味のことを、彼は熱っぽく語っていたが、それは納得できる。

 実を言えば「ローゼンクランツ」の製品を導入するのは個人的には二の足を踏む。第一、高価だ。「The Musicality」はペア百万円を超える。確かに良い音だが、その価格の大きな部分をデザインと仕上げが占めていることは明らか。見かけをもっと簡素にすれば半額以下に抑えられ、我々一般ピープルも手が出しやすい価格帯になるかもしれない。同じフルレンジ一発のシステムでは以前SOULNOTEのSS1.0という50万円以下の高性能製品に接したことがあるだけに、余計にそう思った。

 しかし、彼の“オーディオ屋”としての矜持はしっかり伝わっており、こういう場に出てきてポリシーを披露してくれたこと自体は大いに有り難い。単なるモノの売り買いだけで終わらず、使いこなしを含めての総括的なプロポーズをオーディオ機器の送り手は実行するべきだとの彼の言い分は正しい。「ローゼンクランツ」に限らず、独自の商品展開をしている業者はこういったイベントにどんどん顔を出して持論を主張して欲しい。

(この項つづく)

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「突入せよ!『あさま山荘』... | トップ | 「第5回九州ハイエンドオー... »
最新の画像もっと見る

2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

コメント日が  古い順  |   新しい順
大賛成です (Sugar)
2008-04-19 10:28:18
ご無沙汰しております。
フェアで、こういうプロポーザルが近年少なくなりました。
「オーディオは使いこなしだ!」というのは、古くて新しい真実だと私も思います。
私の知人にも驚異的なスピーカーセッティングの達人がおりますが、その方の手に掛かると、なんと生き生きとスピーカーが鳴り出すことか。
何度もこの方のセッティングを体験しておりまして、その手法を盗もうとするのですが、どうも真似だけに終わるようで、なかなかツボにははまらないというのが正直なところです。
PS
カテゴリーにぜひとも「オーディオ」を作ってください。ここにお書きになったことは、十二分に勉強になる話だと思います。<m(__)m>
返信する
コメント有り難うございました。 (元・副会長)
2008-04-19 22:14:58
Sugarさん、お久しぶりです。ブログ、いつも読んでますよ。

今回のカイザーサウンドの主宰者氏のレクチャーを聞いて、以前某ショップのスタッフが「買った機材が気に入らないと言うお客に限って、使いこなしをまったくしていない。すぐに買い替えを検討したり、バカ高いアクセサリーを導入することばかり考えている。たとえば、スピーカーの位置をちょっと調整するだけで解決する場合もあるんだけどね」と言ってたことを思い出しました。

他の分野では「コンサルティング営業」なんて普通のことなのに、なんでオーディオに限っては「店は売りっぱなし。客は価格のことしか考えない」という無味乾燥な図式が罷り通るのか不思議でなりません。店は細かなフォローをし、客もそれを期待するという、ノーマルな状態に持って行くことこそ、オーディオ不況脱出の糸口になるのかな・・・・なんて考えてしまいます。

それでは、今後とも宜しくお願いします。
返信する

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

プア・オーディオへの招待」カテゴリの最新記事