元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「アジョシ」

2011-10-03 06:31:11 | 映画の感想(あ行)

 (英題:The Man From Nowhere)主役のウォンビンを見る映画だろう(笑)。いかにもワケありの態度と容貌で、古いビルの片隅で質屋を営むナゾの男。しかし、暗くてニヒルに思える彼の中にチラチラと年少者に対する心優しい本性が垣間見える。中盤、彼が鍛え上げた上半身を曝しながら鬱陶しい長髪を切り、端正な素顔が露わになるところでは、客席を埋めた韓流ファンのオバさま方のタメ息が聞こえてくるようだ(爆)。

 くだんの質屋は、同じアパートに住む小学生の女の子と親しくなる。彼女には父親はおらず、母親はいかがわしいクラブのダンサーとして生計を立てているようなのだが、そこの従業員の男が取引するドラッグを横取りしたことから、マフィアに狙われるようになる。やがて犯罪組織はこの母娘を誘拐。ナゾの質屋は彼女達を助けようとするが失敗する。それどころか警察に拘束されてしまう。

 当局側はこの男の素性を調べようとするものの、プロフィールが抹消されていることが分かる。実は彼は国家の秘密エージェントだということが明らかになってくるが、彼は容易く警察署を脱出してマフィアに殴り込みを掛ける。

 イ・ジョンボムの演出は中盤までは冗長で、主人公の悲しい過去や敵役の紹介などのくだりが必要以上に引き延ばされている。特に彼が幼い女の子に対して思い入れを持つ理由が示される箇所は、典型的な韓流の泣かせのパターンが前面に出てきてウンザリするのも事実。しかし、主人公がその秘められた力を解放させ、大立ち回りを演じる後半部分になってくるとそれなりに盛り上がってくる。

 映像面でも健闘しており、特に窓をぶち破って敵を追う姿をワンショットで捉えた映像には驚いた。ウォンビンの身体能力はかなりのもので、少々のダメージを負ってもそれを屁とも思わず、派手に悪者退治に専念する姿はアクション映画としての興趣が大きい。もっともそれは特殊工作員としてのスキルを活かした“暴力の過剰行使”でもある。徹底した容赦のなさでスクリーン上が血だらけになり、これではR15になるのも当然だ(苦笑)。

 子役のキム・セロンは実に達者。「冬の小鳥」での演技も良かったが、本作では心に傷を負いながらも必死に主人公を慕う姿が観る者の共感を呼ぶ。それにしても、これだけの大暴れをした主人公は罪に問われないのかどうか気になった。ひょっとして作者は続編も想定しているのではないかと思ってしまう(笑)。

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