元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「恋空」

2007-12-29 07:40:45 | 映画の感想(か行)

  新垣結衣は“女優”の域には達していない。今のところ“単なるアイドル”だ。前回の「恋するマドリ」は一応主演だったものの狂言回し的な役どころで、それほど演技力を要求されることはなかったと思うが、本作のように自分が主役としてドラマを引っ張っていかなければならないシチュエーションに直面すると、途端に実力不足が露見する。

 とにかく彼女は表情に乏しく、内面が全然見えてこないのだ。人気のあるうちに一度厳しい監督に徹底的にしごかれるか、実力者と共演して研鑚を積むかしないと、ただでさえ人材豊富なこの世代の中にあっては、いずれ埋没してしまうだろう。

 さて、大ヒットしたこの映画だが、いくらお子様向きのシャシンとはいえこの出来の悪さは如何ともしがたい。エピソードがあれもこれもと詰め込みすぎで、しかも終盤に近付くほどにその“詰め込み度合い”が増しており、しまいにはストーリーは空中分解の様相を呈している。

 さらにその個々のエピソードは韓流ドラマも顔負けのクサさで、難病ネタを中心とする必然性のない不幸の釣瓶打ち。それらを“ここがこうだから、アタシはこう思って悲しんだ”みたいな説明的セリフを山のように振りかけて粉飾している。無駄なモノローグに寄りかかっているためかキャラクターの描写は限りなく薄く、生活感も実体感も皆無。今井夏木とかいう新人監督の演出は凡庸極まりなく、これだけ見せ場というものが見当たらない映画も珍しいと思う。

 所詮はケータイ小説を土台にしたイロモノか・・・・。“この程度の作品でボロ儲けできるのだから、中高生相手の商売なんてチョロいもんだぜ”という送り手側の高笑いが聞こえてくるようだ(暗然)。

 あまりケナすのも何なので、長所も二つばかりあげておこう。まずは映像の美しさ。大分県でロケした街や郊外の有り様、そして題名通りの空の描写は見事だ。カメラマンの山本英夫はなかなか健闘している。もう一点は新垣の相手役に扮する三浦春馬だ。まだまだ演技は硬いが、不敵な中にナイーヴさを垣間見せる面構えがよろしい。もっと精進すれば将来有望な若手男優となるだろう。次回は違った役柄で見てみたい。

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