元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ディアブリィ・悪魔」

2017-04-28 06:37:56 | 映画の感想(た行)
 (原題:DIABLY, DIABLY)91年ポーランド作品。それまで短編ドキュメンタリーを多く手掛けてきたドロタ・ケンジェルザヴスカ監督の長編デビュー作で、これ以降「僕がいない場所」(2005年)や「木洩れ日の家で」(2007年)などでを手掛け、広く知られるようになる。なお、この映画は日本では劇場公開されていない(私は第4回の東京国際映画祭で観ている)。

 60年代初頭のポーランドの小さな村に流浪の旅を続けるジプシーの一団がやって来た。村人は、ジプシー達の存在に恐怖と不安を覚えたが、少女マーラだけはこの不思議な訪問者に魅了される。だが、そのために彼女は村人から迫害されるようになる。封建的な村を舞台に、人種偏見の厚い壁を描きながら、大人になることに憧れるひとりの少女の体験と心の成長を綴った作品。



 とにかく映像の美しさに圧倒される。ショットのひとつひとつが一枚の絵画を思わせる様式美と透明感に満ちていて、約1時間半の間、魅了されっぱなしだった。まさしく映画とは映像の芸術であることを立証している。セリフが必要最小限に抑えられ、登場人物の内面は繊細な映像(極端なクローズアップと自然の風景をとらえる引きのショットとの対比が見事)、そして効果的に挿入される民族音楽のみで語られる。

 舞台挨拶に出てきたケンジェルザヴスカ監督は実に寡黙な人で、“私は饒舌ではないので、映画自体も静かな雰囲気を持ったのでしょう”と語っていたが、監督のキャラクターが作品に反映しているのは面白い。

 マーラ役のエスティーナ・シェムニーは美少女には違いないが、題名通りどこか悪魔的な風貌で強烈な印象を受けた。ところが、監督の話によると素顔の彼女はごくフツーのどこにでもいる女の子だそうで、あらためて映画の持つ魔術を思い知らされた。

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