「もののあはれ」の物語

古き世のうたびとたちへ寄せる思いと折に触れての雑感です。

「かわいい」一考

2006年03月03日 | ああ!日本語
 今朝テレビのスイッチを入れると、耳に飛び込んできた「かわいい」という形容詞の連発にうんざりしたことでした。
 靴もバッグも、喫茶店の建物も、そこで出てきたケーキも、すべて「かわいい」の一言でした。

 今では老若を問わず、対象もきわめて広範囲に使用される表現のようで、世の中のすべての事象を,「かわいい」と,「かわいくない」で片付けようとするかの勢いすら感じます。

 確かに世の中、気に入るか、気に入らないか、から成り立っているのではありますが、いい大人が「ねぇ、これかわいくない?」「まあー、かわいい!」「こっちは?」「うーん、かわいくなぁーい」と、自分の着るものを、友達と品定めしている図は、側で聞いていてこちらが赤面します。

 気に入るものが「かわいい」で、気に入らないものは「かわいくない」のようですが、こと、身につけるものは、文化の一つであってみれば、もっと表現の仕方に多様性があってしかるべきでしょう。
 かといって、「ナウい」や「トレンディ」も手垢にまみれていて、「カッコいい」とはいえません。

 これらは、語彙の貧困以前の問題であって、よく見ていないから、ものの見かた、とらえかたが単純で型通り、したがって評価の表現も「かわいい」か「かわいくない」かの二通りだけとなるのだと考えます。

 先ごろ103歳で亡くなった母も、施設の看護師さんに「かわいい」といわれていました。この「かわいい」は童女のような仕草への、めぐしとする褒め言葉なのかもしれません。
 
 今日は雛祭り。「なにもなにも 小さきものは みなうつくし(かわいい)」ではありますが。・・・・・