「もののあはれ」の物語

古き世のうたびとたちへ寄せる思いと折に触れての雑感です。

「百々世草」の雪佳

2006年02月25日 | 絵とやきもの
 百々世草とは菊の異名であり、神坂雪佳の遺した代表的な図案集の書名でもあります。現代語に置き換えるならデザイン集でしょうか。

 明治30年代から40年代にかけて各分野の一流工芸家たち、特に染織品を中心に種々の工芸品のための図案を提供し、また共同制作にと、京都を中心に幅広く活躍した行動家です。

 私はその名も、作品も知りませんでした。
 琳派を継ぐ人という紹介記事に惹かれて、「銀花」を繰るうちに、その斬新なモダンさのとりこになってしまいました。雪佳もやはりアメリカからの逆輸入でひろく知られるようになった画人のようです。

 昭和40年ごろ細見実氏が発見、評価して蒐集を続けられ、訪問したクリーブランド美術館館長に、細見氏が贈った一幅の掛け軸をきっかけにその作品が次々とアメリカに渡ることになったようです。

 百々世草に登場する図案は、雪月花、謡曲、王朝物語といったモチーフを光悦や宗達を出発点にして、彼独特の趣向と、機智で独創的に表現していて、「和歌における本歌取りの手法」というのにふさわしい誰にもわかる明快な美しさをもっています。

 近年は展覧会も催されたようですが、残念ながら拝見の機会を得ません。くだくだしく述べるより、「百々世草」の作品を掲載します。