「もののあはれ」の物語

古き世のうたびとたちへ寄せる思いと折に触れての雑感です。

椿

2005年01月21日 | 季節のうつろい
 木偏に春でツバキ。いかにも春を代表する木であるかのようです。季語でも春に入っています。
 いつもの年だと今頃からボタリと落ちた花を掃き集め、何かに使えないものかと思案したものですが今年は花の着きが悪いようです。
 奈良に住む妹が染物に使うと教えてくれました。そういえば談山神社の境内で、椿の花を煮ていたのを思い出しました。
 冬と木をあわせてヒイラギ、夏の木はエノキ、秋に木は?まさか秋だけない筈は無いと、IMEで検索するとヒサギと、ちゃんと出ていました。「楸」、古くはアカメガシワを言ったそうですが、女学生の頃、暗誦させられた歌の中に、山部赤人の「久木生ふる清き川原に千鳥しば啼く」というのがありました。
 襲(かさね)の色目の「椿襲ね」は、表が蘇芳で裏が赤のあでやかな取り合わせで、その名の通りの色合わせですが、冬のものです。私は「椿」は日本製の字と思っていましたが、本家の中国にちゃんとありました。ただし、これは日本でいう栴檀をさしていました。中国の「椿」の字は「長く久しい」の意味もあり、長命のことを椿寿といっています。
 わが国でも、万葉の昔から「巨勢山のつらつらつばきつらつらに」と歌われていますが、かの山頭火も「笠へぽっとり椿だった」の有名な句のほかにも椿を詠んだ句はいくつもあります。
 藪椿は好んで画材に選ぶ私の好きな花です。