弁理士の日々

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従軍慰安婦問題と韓国

2011-12-23 11:21:43 | 歴史・社会
<日韓首脳会談>野田首相、慰安婦問題は「決着済み」
毎日新聞 12月18日(日)19時28分配信
『野田佳彦首相は18日、韓国の(李明博、イ、ミョン、バク)大統領と京都迎賓館(京都市)で約1時間会談した。大統領は旧日本軍の元従軍慰安婦の賠償請求権問題について「両国関係の障害物となっており優先的に解決しなければならない」と解決に向けた首相の政治決断を強く求めた。これに対し、首相は「我が国の法的立場はすでに決まっており決着済みだ」としたうえで、韓国の市民団体がソウルの日本大使館前に設置した元慰安婦を象徴する少女のブロンズ像の撤去を要請した。
李大統領が日本の首相との会談で、慰安婦問題解決を具体的に迫ったのは初めて。韓国国内で元慰安婦の賠償請求問題が再燃していることが背景にある。韓国側の説明によると、会談のうち約40分が慰安婦問題に割かれた。』

4年前の米国での慰安婦問題もそうでしたが、私にとっては、今回もまた“降って湧いたような慰安婦問題”でした。
韓国大統領と日本の首相が首脳会談を行うに際し、私(を含め多分日本人全体)が意表を突かれたように、韓国から突然慰安婦問題が噴出した背景にいったい何があるのでしょうか。

ネットで調べてみると、佐藤優氏は10月はじめからこの問題について危機意識を抱いて発言していたことが分かりました。
【佐藤優の眼光紙背】韓国による慰安婦問題の国際化を阻止することが玄葉光一郎外相の焦眉の課題だ
2011年10月03日 08:08
『韓国が、慰安婦に対する日本政府の補償を人権問題を担当する国連総会第3委員会に提起しようとしている。・・・・・
これ(9月30日asahi.com記事)は9月24日、ニューヨークで行われた日韓外相会談で、韓国政府による元慰安婦の請求権を認めよと要請したのに対して、玄葉外相が日韓基本条約で請求権の問題は解決済みであるという立場を伝えたことに対する韓国の反応だ。慰安婦に対する日本の政府保障を国際圧力によって実現するという韓国の国家意思の表れである。過去にもこのような事例があったが、今月の国連総会第3委員会に慰安婦問題を韓国が提起すれば、日本はかつてなく厳しい状況に追い込まれることになると筆者は見ている。・・・・・
韓国に対して、「死活的利益を共有している」などという過剰なレトリックは避けるべきだ。韓国との関係で、焦眉の課題は、慰安婦問題の国際化を韓国が行わないようにするための方策を考えることだ。なぜなら、慰安婦問題が国連総会第3委員会に提起されると、それがわが国にとって死活的に重要である日米関係に悪影響を与えるからだ。』

『筆者が外務省にいたならば、外相に宛てて以下の意見書を書く。
《日韓外相会談では、先方は元慰安婦に対する日本の政府補償の問題について必ず提起してくる。その場合、当方の発言ポイントは次の通り。
1.貴国の憲法裁判所の決定については承知している。補償問題に関するわが国の基本的立場については貴長官も熟知されていることと思うので、この場では繰り返さない。貴長官の発言については、注意深くお聞きした。その上で、東京に持ち帰り、わが方の条約や法律の専門家と協議した上で然るべきお答えする。
2.本件に関し、マスメディアや記者会見を通じた外交は行わない。お互いの国内的発言で二国間関係に否定的影響を与えることを防ぐために全力を尽くす。
3.本件を国際化(註*韓国側は10月にも慰安婦問題を国連総会第3委員会に提起する動きを見せている)は、問題の解決に資しないということにつき、貴長官と合意したい。》
こうして、まず韓国による慰安婦問題の国連総会第3理事会への提起を断念させることが玄葉外相にとっての焦眉の課題だ。(2011年10月1日脱稿)』

しかし佐藤優氏の危機意識を日本の外務省と官邸とが共有することはできず、日韓首脳会談は最悪の結果を招来することとなりました。この点について佐藤優氏は以下のように述べています。

【佐藤優の眼光紙背】慰安婦問題の国際化を前提に外務省は至急戦略を 構築せよ
2011年12月19日 09:55
『慰安婦問題が日韓関係の「爆弾」になることは、外交専門家にとっては自明のことだった。それにもかかわらず玄葉光一郎外相は、事態を深刻視していなかった。・・・・・
既に韓国は国連総会第3委員会(人権担当)に慰安婦問題を提起した。さらに今回の日韓首脳会談の結果について、韓国政府は第三国メディア(特に欧米)に対して日本を激しく批判するプロパガンダを展開している。このままの流れが続くと、慰安婦問題で日本に対する包囲網が敷かれ、日本の国益を著しく毀損するような状態になる。・・・・・
最も重要なのは、玄葉外相が当事者意識を持つことだ。慰安婦問題に関し、日本政府の基本的立場を毀損せず、知恵を出さなくてはならないという強い要請が首相官邸、民主党政務調査会から外務省に寄せられていた。外務省の事務当局も、腹案を作成したはずだ。その腹案に対して、玄葉外相が「拒否権」を発動した結果、今回の深刻な事態に至ったと筆者は見ている。』

佐藤氏の見立てでは、玄葉外務大臣がこの問題について当事者意識を持たず、対応を誤ったことが最大の要因としています。
いずれにしろ、私の目には「突然降って湧いたような問題」でしたが、佐藤氏の目にはすでに10月はじめから重要な外交課題として認識されていたのです。それでは、日本の外交当局はどうだったのでしょうか。佐藤氏によると、外務官僚は問題を把握していたのに対し、玄葉外相が官僚からの問題提起を握りつぶした、ということです。


しかし、問題はすでにこじれてしまいました。佐藤氏によると、「既に韓国は国連総会第3委員会(人権担当)に慰安婦問題を提起した」ということです。

従軍慰安婦問題では、被害当事国が攻勢に出たら、日本がこれを反撃阻止することはとうてい不可能でしょう。話を聞けば聞くほど、被害を受けた方々があまりにも悲劇的で、加害側である日本国が何を言っても言い逃れにしか聞こえないからです。

4年前にアメリカで慰安婦問題が噴出した際に、私もいろいろ調べてここで記事にしました。
従軍慰安婦問題
河野談話
慰安婦問題とアメリカ
従軍慰安婦問題

4年前のアメリカでの問題は、静観して問題が沈静化するのを待つのが正しい対応だったのですが、ときの安倍首相が「日本の軍部が強制徴用した証拠はない」と発言したことで、アメリカ議会が激昂し、さらには日本の超党派国会議員らが米紙に「旧日本軍が強制的に慰安婦にさせたとする歴史的文書は見つかっていない」との全面広告を出したことで火に油を注ぎ、最終的にはホンダ議員の決議案が可決されるに至ってしまいました。

今回は、第三者であるアメリカでの問題ではなく、被害当事国である韓国からの攻勢ですから、問題はより深刻です。

従軍慰安婦という問題そのものが、現代の感覚で考えたら許すことのできないおぞましい事実であることは間違いありません。ですから、まずそのような事実があり、多くの女性、それも他国(植民地)の女性を犠牲にしたことについて、真摯な態度を表明することは絶対に必要です。

朝鮮の地から連れてこられて従軍慰安婦にさせられた女性の中に、正式の軍命令による強制徴用ではなかったにしても、騙されたりして無理矢理連れてこられた人が多かっただろうことは理解できます。
軍医として従軍慰安婦の健康を管理していた医師の記録が、「昭和陸軍の研究」にも登場します。日本人9人、朝鮮人4人、中国人2人の女性を診た医師によると、女性の大半は仕事の内容を承知しているが、朝鮮人2人は、このような仕事とは思わずに連れてこられたと話しています。そうしたケースは、軍による強制連行か、女衒によるものかははっきりとはわかりません。また、中国に送られた婦女子百余名(朝鮮人女性と日本人女性)の健康診断を行った別の軍医によると、朝鮮や北九州で募集された女性であり、日本人女性はその筋の職業に従事した者が多かったのに対し、朝鮮人女性には肉体的には無垢を思わせる者がたくさんいた、ということです。
たとえ日本軍の軍命令で強制連行されたものではないとしても、騙されて連れてこられた朝鮮人女性が多いことを、現地日本軍は把握していたはずです。知っていながら続けたという点では、責任を逃れることはできません。そこは日本政府としてしっかりと受け止めるべきでしょう。

問題が顕在化した以上、今後、日本にとって良好な着地点など存在しないと覚悟すべきでしょう。できるかぎり日本の不利益を軽減することに努力するのみです。

とりあえずは、日韓首脳会談の直後に金正日死去のビッグニュースが飛び出し、この問題は一時休戦の状況ではありますが。

なお、以下の記事も参照しました。
「従軍慰安婦問題で日本が政治的に勝利することはない」マイケル・グリーン氏の4年前の忠告
慰安婦問題が迫る我が国の戦後体制の総決算
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2 コメント

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Unknown (きよてる)
2011-12-23 22:58:18
従軍慰安婦問題は韓国と日本国内のサヨク集団による捏造に過ぎません。

当時は売春は違法ではなく、日本にも娼館が存在していました。
当時の日本軍は、民間業者に委託して軍人用の娼館を経営させてい­­ました。
慰安婦は、自由意志でそこで働いていた民間人(従軍=軍属ではな­­い)の売春婦であって、軍に強制された犯罪被害者ではありませ­ん­。
慰安婦となった経緯において、親・斡旋業者に騙されたり、借金の­­為に不本意ながら慰安婦になったこともあるでしょうが、それは­軍­の責任ではありません。
当時の軍は、待遇・職種を偽って募集する事をしないように通達もしています。

1965年の日韓基本条約で、条約以前の問題は解決されたものと­­し、国家や個人等いかなる集団も訴訟・請求はできないという合意を­し­ています。
条約交渉時に、日本は正統な要求については清算をする用意がある­­ので、証拠と資料を出して欲しいと言っています。
ところが、その重要な交渉の場で、韓国は従軍慰安婦は問題どころ­­か存在にさえ言及していません。
朝鮮人の言うとおり、公然と強制連行が大規模に行われていたのだ­­としたら、朝鮮の国民全てが知っているはずで、これを政府が問題化しない事を許すはずがありません。
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特種慰安施設協会 (rumichan)
2014-04-29 05:45:07
終戦直後、日本政府は特種慰安施設協会を作り、タバコ1箱か2箱程度の値段で、アメリカ兵に慰安婦を提供しました.
その事実をねじ曲げて、アメリカの要求により日本は慰安施設を作ったと全面広告に載せたので、アメリカは怒りました.
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