弁理士の日々

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6月18日東電報告書(1)

2011-06-19 13:45:21 | サイエンス・パソコン
東電が、6月18日に「地震発生当初の福島第一原子力発電所における対応状況について」を公表しましたね。
この公表、朝日新聞6月16日夕刊の1面トップで『ベント・注水難航~水素爆発で設備破損/弁開放に1時間~福島第一 東電資料に詳細』としてスクープした記事が直接的な契機になっているのでしょうね。朝日記事については6月17日に「朝日新聞が入手した東電資料(ベント・注水難航)」として紹介したとおりです。

東電が今回公表した資料は41ページというボリュームです(福島第一原子力発電所 被災直後の対応状況について(PDF 661KB))。印刷して読み始めました。

まずは最初の5ページ(「被災直後の対応状況について」)の内容から、印象に残った部分を紹介します。

《電源車の手配》
津波でディーゼル発電機を含めて「全交流電源喪失」に陥った後、近隣から電源車を調達する努力をしましたが、交通渋滞などで現地に到着するのが遅れました。このとき、「なぜ東電は自衛隊のヘリコプターでの運搬をしなかったのか」という指摘がマスコミでなされていました。
この点について、今回資料の3ページ<電源車の確保>に「自衛隊による高・低圧電源車の空輸を検討するも、重量オーバーにより自衛隊・米軍による空輸を断念。」との記述が見つかりました。
初期の段階で自衛隊・米軍による電源車空輸を検討していたことが分かりました。
一方、自衛隊・米軍のヘリコプターでは重量オーバー、という点は理解できません。戦車も運べるヘリコプターが存在する中、電源車を空輸できないとはどういうことでしょうか。

《2号機への電源車のつなぎ込み努力》
タービン建屋に電源盤(M/C、P/C)というのがあるようです。津波の結果、1、3号機はM/C、P/Cともに全滅、2号機はM/Cは使用不可で一部のP/Cが使用可能であることが分かりました。そこで、2号機P/Cに電源車をつないで動力を確保する努力を開始しました。
電源車を2号機タービン建屋脇に配置し、タービン建屋大物搬入口から同建屋1階北側にあるP/Cまでケーブル200メートルを敷設することとしました。
建屋内のケーブルは太さ十数センチ、長さ200メートルで重量は1トン以上。通常なら機械を使用して相当の日数をかけて敷設するものを、社員約40名の人力にて急ピッチで敷設作業を4、5時間で実施した、とあります。
12日の15時30分頃、ケーブルのつなぎ込みと高圧電源車の接続が完了し、ホウ酸水注水系SLCポンプ手前まで送電したのですが、15時36分、1号機の水素爆発が起こりました。爆発による飛散物により敷設したケーブルが損傷、高圧電源車は自動停止です。

4、5時間の人海戦術による努力が無駄に終わったとわかったとき、社員たちの落胆はいかばかりだったでしょう。
この間の東電社員の奮闘努力、読んでいて感動しました。私も製鐵所現場の技術部門に長いこと勤務していましたから、事故対応時の現場の努力にはいつも頭が下がる思いでした。今回、昔経験した現場を思い出しました。

《1号機の圧力容器注水状況》
津波直後、直流電源で操作可能である非常用復水器について、弁開閉表示が確認できない状況がわかりました。15時50分には計装用電源が喪失し、原子炉水位が不明となります。
その後、一時的に直流電源が復活したためか、非常用復水器の弁開閉を示すランプが点灯し、MO-3A・MO-2Aが「閉」であることがわかったので、11日18時18分「開」操作を実施し、ランプが閉から開となるのを確認するとともに、蒸気発生を確認しました。
さらに18時25分に弁MO-3Aを閉とし、21時30分に弁MO-3Aを開とし、蒸気発生を確認しました。
東電が5月23日に公表したシミュレーション(5月23日東電報告書(2)1号機)では、11日18時過ぎにおける非常用復水器の上記弁操作については、「状況が定かではない」として採用されず、津波到達以降は非常用復水器が全く機能していなかったという前提で解析を行っています。
しかし、今回の報告によれば、一時的に弁開閉ランプが点灯し、弁操作を行ったらランプが「開」に変わった、というのですから、結構信頼のおける情報であるようにも思われます。

《2号機の隔離時冷却系(RCIC)作動状況》
津波直後、2号機隔離時冷却系の起動状況が不明となりました。
12日未明、当直院が運転状況について現場確認を実施しました。空気ボンベを含む完全装備のために手間がかかり、通常10分程度のところを1時間要しました。
隔離時冷却系の部屋は水が溜まり、長靴に水が入るので進めません。その結果、運転状態を確認できませんでしたが、計器ラックで原子炉圧力と隔離時冷却系吐出圧力を確認し、ポンプ吐出圧力が高かったことから隔離時冷却系は運転していると判断しました。
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1 コメント

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1号機1階床からわき出る湯気、この湯気は線量を持ています(推測)。 (xls-hashimoto)
2011-06-21 23:22:19
報道配布 写真・動画ダウンロード
http://www.tepco.co.jp/tepconews/pressroom/110311/index-j.html

2011年6月4日
福島第一原子力発電所1号機の原子炉建屋1階における湯気確認状況(ZIP 5.55MB)
(2011年6月3日撮影)

床に開いた穴から湯気がわき出ています。
この下はトーラス室(サプレッションチャンバー、圧力抑制室が収まった部屋)です。
トーラス室の溜まり水は、湯気をこれほど出すほど温度が高い・・・・・・
そりゃそうです、たった今、原子炉圧力容器から出てきたばかりですから。
と言うことは、この湯気は線量を持ています。

どれほど線量を持っているかというと
記者会見配布資料
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/index-j.html
2011年6月4日 福島第一原子力発電所1号機 原子炉建屋内調査結果(22.0KB)
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_110604_01-j.pdf
「11.6.3 16時過ぎ 湯気発見場所」
「機器ファンネル 直上3~4000」
となっていますので、この周りの線量は全てこの湯気がもたらした物だと思います。

こんな湯気の中で全面マスク(最高で99.9%の効率しかでません。3桁しか落ちません)で作業したら、人間は線源になります。

この推測が外れます様に!!
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