弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

循環冷却で水の放射能除去は必要か

2011-06-18 09:34:22 | サイエンス・パソコン
福島第一原発、高濃度汚染水の処理始まる
読売新聞 6月17日(金)20時22分配信
『福島第一原子力発電所で17日夜、汚染水の浄化処理システムが本格稼働した。
東京電力が発表した。敷地内に約11万トンたまった高濃度汚染水を処理し、放射性物質の濃度を10万分の1以下に下げる。1日1200トン、年内に20万トンの汚染水を処理する。細野豪志首相補佐官は記者会見で「(原子炉の)冷却機能が安定化する可能性がぐっと高まる、大きな一歩だ」と語った。
東電は18日、処理した水を原子炉に送る配管の水漏れなどを確認し、問題がなければ処理水を原子炉への注水に使い始める。原子炉から漏れ出た汚染水を浄化して原子炉に戻す、世界でも例のない「循環注水冷却」が実現する。
一方、処理の過程では、通常の原子炉水の100万倍の放射能を含む汚泥が約2000トン発生し、新たな課題を抱える。』

「溜まった汚染水の量は6万トン」といっていたのが4月はじめ(福島第一原発の現状は?)、それから2ヶ月が経過して現在は11万トンに増えたということになります。
そしてやっとのことで、循環冷却を始めることができるというわけです。本当に待たされました。

ところで、今回完成した浄化装置は、汚染水から放射性物質と塩分と油分を除去するといいます。上記記事のように、もっぱら放射能の除去能力が話題になっています。
しかし、放射能を除去する結果として、上記の記事にあるように、超高濃度の放射能を含む汚泥が2000トン発生するということです。
なぜ、放射能を除去してから原子炉に循環するのでしょうか。
4月17日原発事故最近の推移で私は
『「溜まっている汚染水は塩水だから戻せない」という理屈はわかります。しかしそれを言うなら、現在溜まっている汚染水の塩分濃度実績を公表して欲しいです。そして、「汚染水から塩分を除去する外付けの設備を3月○日にスタートして建造中であり、4月□日に設置予定である」というアナウンスをするべきです。今のニュースを見る限り、現在進行形で準備が進んでいるとはとても思えません。
「汚染水は放射能を持っているから循環できない」という理屈には承伏しかねます。もともと圧力容器から漏れ出た放射性物質なのですから、圧力容器に戻すことに何で問題があるのでしょうか。』
と書きました。

高濃度汚染水を循環冷却水として圧力容器に注入するに際し、高濃度汚染水が含有する塩分と油分のみを除去し、放射能は積極的には除去しない、という方法が正しいように思いますがどうでしょうか。
そうでないと、せっかく浄化装置で放射性物質濃度を10万分の1に下げても、圧力容器に注入してそこから排出されたとたんに元の高濃度汚染水に戻ってしまうのでは、まったく意味がないでしょう。

そして、循環冷却開始によって高濃度汚染水の増大を防ぐことができますが、減らすことはできません。そこで、今回完成した浄化装置で浄化した水については、循環冷却に用いるのではなく、低濃度汚染水タンクに貯蔵すべきでしょう。
塩分と油分を除去する浄化装置のみを通過した高濃度汚染水を圧力容器循環冷却に使用し、塩分と油分のみではなく放射性物質も除去する浄化装置を通過して放射性物質の低減した汚染水を低濃度汚染水タンクに移すことにより、高濃度汚染水貯留量が減少に転じます。

今までは、高濃度汚染水貯留量の増大を抑えるため、圧力容器への水注入量を合計で1日500トンに抑えていました。循環冷却が開始すると、注入量を増大することができます。その結果圧力容器温度が100℃以下に下がれば、「冷温停止」です。管首相退任の花道ができあがりますね。
コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 朝日新聞が入手した東電資料... | トップ | 6月18日東電報告書(1) »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
原子炉冷却には原子炉建屋地階に溜まった汚染水をそのまま使えば? (xls-hashimoto)
2011-06-19 11:30:50
東京電力は「原子炉に穴が開いている」と言っているので、原子炉内に燃料がある限り穴は塞げません。塞げない限り、注入した水は汚染水になり、増え続けます。
注入した水は、原子炉から漏洩してタービン建屋の地下に溜まっているものと考えられていましたが、原子炉建屋の地下にも溜まっていることがわかりました。

タービン建屋地下に溜まった汚染水は、津波で入り込んだ海水が多量に含まれているので、今、やろうとしている浄化設備で塩分を除去して冷却に利用できる様にすれば良い。

原子炉建屋地下に溜まった汚染水は、津波の海水は含まれず、原子炉冷却のために注入した海水が含まれているだけなので、この水をこのまま冷却に利用すれば良いと思います。

ポンプで北西三角コーナーから吸い出し、消火系から即原子炉に入れる。
油分除去や放射能除去・塩分除去も一切しないで、最短ルートで原子炉に戻す。
これが、現実最良のやり方かなと思います。

溶けた燃料を含む汚染水から放射能を取り除くのに、六ヶ所村ではどれだけの設備を準備して取り組もうとしているのか考えてみればわかります。

「原子炉のどこに穴が開いているか?」
福島第一原子力発電所の原子炉建屋の現状の耐震安全性および補強等に 関する検討に係る報告書(その1)(PDF 1.83MB)
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/110528b.pdf
の85ページに原子炉建屋2階のレイアウトの載っています。
この階に、CUWポンプ室と復水器へのブローラインの起点があるCUW熱交換器室が有ります。
これらの部屋の中にあるバルブが閉まりきっていないために、原子炉から漏洩し続けていると、今でも考えています。
東京電力は、バルブの全閉を確認したんでしょうか? 疑問です。

また、2階にはSGTSが設置されている換気空調系の機器が設置されている部屋も東側(図面で上側)にあります。
原子炉建屋側からは入れません。部屋の真ん中右側に縦に2つ並んでいる縦棒がSGTSです。
ベントした排気に含まれた水素ガスがが、この部屋から原子炉建屋内に逆流していったと思われます。
返信する

コメントを投稿

サイエンス・パソコン」カテゴリの最新記事