弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

日本少年サッカーの現実(2)

2008-04-08 21:46:44 | サッカー
日本サッカーと「世界基準」 (祥伝社新書 (046))
セルジオ越後
祥伝社

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この本は1年前にも取り上げました
セルジオは1972年に日本にやってきて、藤和不動産で2年間プレーしたあと、1974年頃から日本全国で「セルジオ越後さわやかサッカー教室」の開催を始めたそうです。セルジオがサッカー教室で出合った子どもたちの数は50万人を超えているということです。

セルジオ氏は、サッカー教室の前夜には町に入ります。そこでサッカー好きの大人たちが懇親会を開いてくれるのです。そこで地元の人たちが「せめて大会でもあれば、子どもも球蹴りすると思うけど」と発言すると、セルジオ氏は「ここに集まっている30人はお酒を飲むために1万円払っているじゃないですか。2万円出せば60万円集められる。これでちょっとした大会を開くことは可能ですよ」と提言します。日本人は自分が飲むお酒にはお金を出しますが、スポーツをするためにお金を払う感覚がないというのです。
この提言に乗り、あちこちの大人たちが自分たちの手でサッカー大会を作り始めます。草の根から生まれた「セルジオ越後杯」が、いまでも各地で続いているそうです。

補欠という名の人材損失
「日本サッカー界最大の課題とは何か。わたしは迷わず補欠の撤廃を挙げます。」
1972年にセルジオ氏がはじめて日本に来たとき、強豪といわれる高校の練習では、ボールを使って練習している生徒より、ゴール裏で大声を張り上げたり球拾いに勤しむ生徒の方が圧倒的に多かったことに唖然とします。
ブラジルには補欠が存在しません。自分の実力に適したところで、自由にプレーすることができます。
ところが日本では、大会に出られるのは1校につき1チームだけ。2005年の高校選手権に出場した高校は平均で77人も部員を抱えています。
一番の問題は日本サッカー協会の登録制度です。選手はふたつ以上のチームに重複登録することは許されないのです。
日本の選手登録数は、05年度に89万人近くになるそうです。

ブラジルのように、子ども達はいくつものクラブに所属し、自分の力に見合ったクラブで試合経験を積むようにすべき、との提言です。


このように、先日紹介した日本はバルサを超えられるサイトで村松尚登さんが掲げる日本サッカーの問題について、セルジオ氏も共通した問題意識を持たれていることがわかります。

ところで、日本の登録選手数89万人が、松村さんが唱えるように1チーム18人のチームに所属するとすると、チーム数は5万チーム(=89万/18)となります。これらのチームのすべてが、16チーム一組でリーグ戦を組み、毎週末にホーム&アウェイで試合を行うというわけです。グラウンドの数はチーム数の半分だけ必要ですから、2万5千のグラウンドが必要と言うことです。この辺がネックになるでしょうね。また、大会を世話する大人の人数を確保することも大変です。

一方、グラウンドなどは人から与えられるものではなく、子ども達自らが作り出せるものかもしれません。セルジオ氏が子どもの頃、自分たちで近所の空き地を開墾し、自分たちのサッカーグラウンドを作ったということです。空き地がない都会では無理ですが、地方の子ども達であればこのような方法でグラウンドを作り出すことも可能かもしれません。

セルジオ氏の著書の中に、日本の子ども達の特質が書かれています。
「マイボールを持つ日本の多くの子どもたちは、いつでも個人練習ができるのでリフティングなどはとても上手い。日本に教えに来る外国のコーチも驚くほどです。しかし、リフティングを見て目を丸くした外国人は、試合を見るとたいてい首を傾げます。“あんなに技術があるのに、試合になるとまるでダメじゃないか”」
セルジオ氏のこの指摘も、村松さんの指摘と通じるところがあります。
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2 コメント

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Unknown (k)
2009-01-20 23:50:11
いやぁ実は僕もこの村松さんのサイト知ってました。おんなじ考えを持つ人間は似たようなところにたどり着くんでしょうねぇ。

全員がある程度の公式試合に参加できるようになる。確かに人、費用、場所いろいろクリアしなければならないものがあります。ただ問題がある、課題がわかっているのに改良できない。
これが企業なら大問題です。潰れてます。とっくに。

前向きに見れば、補欠問題は何十年も手付かずの問題です。ですがトップのA代表はこの何十年である程度世界のトップに近づけたと思います。補欠問題が解決すればもうちょっと進歩できるという発想が協会の人に無いのでしょうか?

ちなみに僕もセルジオさんの教え子です。いわばセルジオ・チルドレンです。(あぁ、ずいぶん時代に後れた表現でしょうか。)
補欠の問題 (ボンゴレ)
2009-01-21 22:01:26
kさんはセルジオチルドレンだったのですか。
私は、セルジオ自身が著書の中でいっている「全国津々浦々のサッカー教室で教え、その数は50万人になる」しか読んでいないので、その実態についてはわかりません。たぶん嘘ではないのだろう、と思ってはいますが。

私がサッカーをやっていたのは今から45年ほど前、高校の2年間です。蹴球部に属していました。当時は部員の数が少なく、高校で始めた私のような下手くそでもレギュラーになれました。中学からやっていたらもう大いばりです。ですから、「1年生は1年間球拾いと声出しだけ」という話を聞いてもピンと来ません。

サッカー人気だけは上昇してサッカー人口は急増したが、インフラ整備は全く追いついていない、というのが現状でしょうか。
サッカー先進国のような恵まれたインフラが実現するのは、まだ何十年も先かも知れませんね。

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