弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

訴訟での専門委員

2006-11-05 20:33:28 | 知的財産権
現在、知財高裁の審決取消訴訟に被告訴訟代理人として参画している案件があります。ちょうど弁論準備手続の最中です。この案件で、専門委員が関与することとなりました。

専門委員とは、民事訴訟法で定められた手続きです。
民事訴訟法第92条の2第1項(前半)に、
「裁判所は、争点若しくは証拠の整理又は訴訟手続の進行に関し必要な事項の協議をするに当たり、訴訟関係を明瞭にし、又は訴訟手続の円滑な進行を図るため必要があると認めるときは、当事者の意見を聴いて、決定で、専門的な知見に基づく説明を聴くために専門委員を手続に関与させることができる。」
とあります。

まず裁判所から訴訟代理人に、専門委員が関与することについて意見を聞かれ、次に専門委員候補者の来歴がFAXで送られてきます。3名の候補者で、うちお二人は大学教授を歴任された先生、お一人は弁理士の方でした。いずれも当方にとって利害関係を有する方ではなかったので、了解の返答をしました。

第1回弁論準備手続の期日、受命裁判官が1名、専門委員が3名、それに調査官が1名、コの字形の中央席に着席します。裁判官席に向かって左側が原告席、右側が被告席です。

期日までに、原告第1準備書面、被告答弁書、原告第2準備書面が提出済みです。さらに必要に応じて両当事者が当日の説明のための資料を準備することもあります。
受命裁判官に促されて、まず原告側が所定の説明、次いで被告側が所定の説明を終了すると、3名の専門委員から原告・被告に対し、次々と質問がなされます。裁判官、調査官からも質問があります。
私が経験した期日では、当初1時間の予定であったものが、結局は2時間かかりました。その後、原告被告がそれぞれ次の準備書面を提出することを決め、第2回の準備手続期日が定められました。知財高裁の定形スケジュールによれば、第2回の期日で弁論準備手続が終了する予定です。
第2回の弁論準備手続期日には、専門委員は出席しません。

各専門委員は、事前に原告と被告から提出された準備書面、答弁書を読んできているはずです。さらに期日に原告・被告の説明を聞き、原告・被告に質問してそれに対する回答を得るわけです。その後、どのように裁判に関与するのでしょうか。
聞くところでは、まず専門委員3名でのディスカッションが行われ、その後裁判官に対して専門委員が口頭で説明を行うようです。おそらく、弁論準備手続期日が終了した後、その日のうちにすべてが行われるのでしょう。
上で採り上げた民事訴訟法第92条の2第1項の後半には、
「この場合において、専門委員の説明は、裁判長が書面により又は口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日において口頭でさせなければならない。」
とあります。裁判官に対する専門委員の説明が、原告・被告が出席する弁論準備手続期日でなくても許されるのか、この条文からは不明確です。

数ある知財高裁における審決取消訴訟のうち、専門委員が関与する割合はごく少ないのではないかと予想していました。特別に技術理解が困難な事例に限って専門委員が関与するのではないかと。
今回私が被告側で関わっている事案でなぜ専門委員が任命されたのかよくわかりませんが、折角の機会ですので、ぜひ専門委員の先生方に正しく把握していただき、裁判官の正確な心証形成に役立てていただきたいと思っています。
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