弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

特許事務所補助員の問題

2006-11-02 19:56:15 | 弁理士
産業構造審議会知的財産政策部会の第5回弁理士制度小委員会が10月20日に開かれています。そのときの配布資料が特許庁ホームページに掲載されています。

今回は、弁理士業務法人制度の問題、弁理士事務所の補助員の問題などが議題として採り上げられています。ここでは弁理士事務所補助員の問題がどのような方向で採り上げられているかについて確認します。

配付資料の「5.対応の方向」は、配付資料を作成した特許庁が議論の方向付けとして準備している結論です。小委員会において「この方向でいいんじゃないか」の流れができれば、このまま結論とされます。
以下は配付資料の一節です。
「弁理士は、特許庁と出願人との間に立って、権利取得手続等を迅速・円滑に行う役割を担うものであるが、弁理士が補助員に独占業務を実質的に行わせることについては、迅速な審査・事務処理の妨げとなることがあり、実際に審査の現場ではそのような実態が散見されることが指摘されている。また、特許事務所の弁理士1人あたりの特許出願件数(別紙1参照)をみても、最も多い事務所では、弁理士1人あたり453件という実態があり、また1人あたり200件以上という事務所も14事務所あり、これらの事務所においては補正書、意見書などの中間手続も考えると、実質的に補助員に代理業務を行わせていると考えざるを得ない状況にある。」

弁理士一人あたりの特許出願件数が200件を超える大手事務所は、最後通牒を突きつけられた形ですね。上記「別紙1」に具体的な事務所名は記載されていないものの、ちょっと調べればすぐに特定することができるでしょう。

しかしこれら事務所もあわてることはありません。現在は弁理士取得が昔に比べて容易になっているのですから、事務所内の補助員の弁理士資格取得を奨励すればいいのです。もちろん勉強時間が確保できるように勤務の配慮は必要でしょう。
結果として事務所に勤務して実質的に代理業務を行っている補助員が弁理士資格を取得すれば、最も好ましい方向です。弁理士試験を易化している最大の目的もここにあると、私は理解しています。

具体的にどのような力をかけることによって望ましい方向に持っていくのか。
「対応の方針」には以下のように記されています。
「このような弁理士の行為については、弁理士の信用失墜行為として懲戒の対象となりうるものであり、懲戒の運用基準の整備の中で盛り込んでいくことが必要であるが、特許庁がそのような補助員が行う行為について厳格に対応してこなかったことも問題の要因のひとつであると考えられることから、より実効的な対応を図るためには、そのような制裁措置の強化とあわせて、特許庁としてもこれまでの補助員への対応を見直し、ガイドラインを整備することも検討すべきである(別紙2参照)。具体的には、①特許庁審査官、審判官からの内容等についての連絡の応対は弁理士事務所においては弁理士のみができることとすること、また、②面接においては、弁理士事務所の補助員は説明をすることができないこととすることが妥当ではないかと考えられる。」

「無資格者が明細書を書くなど信じられない」という普通の国に、早く日本がなることを期待しています。
コメント
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