パンセ(みたいなものを目指して)

好きなものはモーツァルト、ブルックナーとポール・マッカートニー、ヘッセ、サッカー。あとは面倒くさいことを考えること

「戦争まで」加藤陽子(ベストセラーになれば良いのだけれど)

2017年01月09日 09時14分16秒 | 

なかなか興味深い本だった
中高生を前にした講義形式なので、もう少し楽に読めるかと思ったが
内容は濃く、それに関連資料も豊富であまり昭和史に詳しくない自分は
思いの外手こずった
ならばじっくり丁寧に読めば良いのだが、先へ先へと気が急いて
早く読み終えたいという気持ちだけが強くなった

この本は「リットン調査報告書」「三国軍事同盟」そして「日米交渉」の際
行われた判断を(そのような判断に至った経過を)メインに取り上げている

この本を読む限りでは、上記三つの判断をする場合
理想論、在るべき論が優先するのではなくかなり現実的な
妥協案みたいなものがあったという事実に少しばかり驚く
これぞ現実を踏まえた交渉とか政治の現場ということろだ

にも関わらず誰もが戦争をしたくないと思われるような
避けるべき方法をとらなかったのは(取れなかったのは)
現実認識の冷静な把握が出来ていなかったということで
特に軍部の一部の連中の思い込みの楽観的過ぎる発想は
(それだけではないが)
今の時点で客観的に眺めると不思議なくらいだ 

そして、つくづく感じたことは太平洋戦争は
これだけを取り上げて語られるものではなくて、それ以前の
日清戦争や日露戦争に端を発しているということ

人は最終的な判断を誤らないためには歴史から学ばなければならないが
はたして自分が住んでいるこの国は、それを活かす様な状況になっているか
大いに不安を感じるが、こうした不安を解消するためにも
この本は多くの人に読まれるべきと思われる

この本を読んだ人が「多くいる」ということと「いない」
とでは、今後のこの国の選択にきっと大きな違いをもたらす

イギリスのEU離脱の国民投票、アメリカのトランプ氏の大統領就任など
(正確な地域の雰囲気や情報は分からないが)一歩間違えると
ポピュリズムに陥りがちな傾向は、あの時代の日本でも
大衆のなかにも存在した事実はなかなか重い

確かに庶民は視野が狭くて勢いとか風に乗りやすい
しかし、「理想」を掲げて安易に何かを犠牲にして
遮二無二進むことに対しては
同じくらいの危険性を感じてしまう自分がいる

加藤陽子氏の本はこの本の前に
「それでも、日本人は戦争を選んだ」という著作がある
順番は逆になったが、これも読んでおかないと、、
(その前に慌てて呼んだから、読み直すことが先かな、、)

 




 


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