座る

2017年06月26日 03時46分22秒 | マーロックの日記

                                 リリリ

                                                      ザヮヮヮ  ・・・・

                 パチチン

たき火はあったかい・・・

荷台から冷凍のすき焼きうどんを持ってきた。

       パチチ

ハットさんが枝コンロで温めてる。

鍋は必要なく、ただ温めるだけでいいのである。

「・・・・」

たき火から10mくらいの所に、リフとテムとレウと、シャープさんがいる。

最初につくっていた冷凍ラーメンを食べている。

モチモチした麺が、お湯を入れるだけのとはまた違ったおいしさだろう。

蹴る練習をしていたから暑いらしく、あの4人はたき火には近づかない。

どれもおいしそうだけど、私はたべない。

ノロマさん達が起きて来たし、何かつくってくれるだろう。

空腹でたべる。

          

私は崖に向かう。

ポールさんたちと交代するために。

「・・・」

子クマがいるけど、大人しく座ってる。

寝てはいない。

中央の壁の内側部分に置いたランタンの側、座ったレトリバーがいる。

こっちを見てる。

りんごがないか注視しているのかな。

             

私はそっちに向かう。

「・・・・」

ふと空をみたら、流星。

地球が太陽の周りを公転する空間には、とても小さな塵が漂っていて頻繁に地球にぶつかる。

地球の表面には薄っすらと大気が覆っているから、その大気にぶつかる。

高速で突入した塵は、断熱圧縮で高温になって燃える――それが光って見える。

毎日50トン以上の物質がそうして地球に加わる。

あまりにも小さな塵は大気圏とぶつかっても燃えない。

1mmくらいのものは1分に2つくらいぶつかるけど、燃え尽きる。

数cmの大きなになると、燃え残った断片が地上まで落ちてくることもある。

「・・・」

ウロウロしていたシャープネコが横に来た。

暇なんだろうか。

もうシャープさんも寝る時間だし、一緒に戻るだろう。

「♪」

手を伸ばして撫でる。

森から出れば、夜空はよく見える。

雲は少なく、月もいる。

                        

         クゥン

6600万年前、白亜紀の終わりに地球に巨大な隕石が衝突したと考えられている。

それによって1億年以上続いた恐竜の繁栄は終わり、陸の主な生態系を哺乳類が占めるようになる――恐竜のいた頃は、哺乳類は小型で大きくてもネコくらいのサイズだったと思われる。

大量絶滅が起きたと推定されていて、K-Pg境界とかK-T境界と呼ばれる。

白亜紀…Cretaceousと第三紀…Tertiaryの境界に起きたのでK-Tと呼ばれていたけど、第三紀が古第三紀…Paleogeneと呼ばれるようになったのでK-Pgと呼ぶのが正式になった――白亜紀の略号がCでないのは、すでに石炭紀…Carboniferous Periodで使われていたからで、別の言語で白亜…チョークを意味するkretaからKが使われる。

でも、今でもK-Tと呼ばれることは多い。

第三紀は新生代の最初の5つの時代の総称で、使われなくなったのでこの境界は白亜紀・晩新世境界と呼ぶことも多い――古第三紀は最初の3つで、顕生代は古い方から古生代、中生代、新生代に区分されていてその境界で大絶滅が起きている。

この隕石の影響で、後の鳥類をのぞいて恐竜は絶滅する。

他の爬虫類や哺乳類、植物も多くが絶滅するけど、とくに海洋生物の多くが消滅した――おそらく3/4の種と半分の属が絶滅した。

深海の殻を持つ原生生物の有孔虫類は、ほぼ生き残った――地質学者が種の指標に使う。

分かっているだけで5つの大絶滅があったけど、K-Pgは一番新しく、その後私たち哺乳類の繁栄の時代になるので最もよく研究されている。

隕石の衝突以外の影響も考えられるけど、これまでの研究からは6600万年前に大衝突があったのはほぼ確実だと思われる。

―――多くの科学者は、現在6度目の大絶滅が進行中であると考えている。

過去100年の絶滅率が、通常に比べて哺乳類が32倍、両生類が100倍、鳥類が20倍近くになっていて大量絶滅に相当する――通常の背景率を正確に知ることは難しいのだけど。

現在の環境の変化が、知られている限り最大の大量絶滅であったペルム紀末期の時に似ている。

こうした変化のほとんどの原因は人の活動によるものだと考えてほぼ間違いなく、そして人は現時点よりも先の事を考える能力を備えているはずである―――

K-Pgの大激変の頃、すでに大陸は現在の配置に近づいていた。

ヨーロッパはアジアとはつながっておらず、大きな島だった。

ヒマラヤ山脈をつくることになる亜大陸もアジアには衝突しておらず、オーストラリア大陸も南極につながっていた。

海水面は今より100mくらい高かったと思われる。

気温も今より高かった――内陸では特に。

隕石衝突の痕跡として最初に発見されたのはメテオ・クレーターで、その調査を行ったダニエル・バリンジャーの功績からバリンジャー・クレーターとも呼ばれる――地球外からの物質によってカルデラの様な地形ができることを証明することになる論文は、バリンジャーとベンジャミン・ティルマンが112年前に発表した。

空から落ちて来た物質には落下地点の管轄郵便局の名をつける習慣があって、メテオ・クレーターも最寄りの急便局「メテオ」の名がつけられた――その郵便局が設立された111年前、バリンジャーがこのクレーターの調査を始めた。

合衆国内では最大のクレーターで、およそ5万年前にできたと思われる――直径1200m、深さ170m、周りの盛り上がったリムの高さが45mある。

この地形をつくった隕石は鉄とニッケルを主成分とし、秒速13kmくらいの速度で衝突して水爆なみの衝撃をもたらしたと思われる。

衝突した隕石自体はほとんどが蒸発していて、断片はわずかしかない。

このため、バリンジャーが調査を始めたときは地質学者はそれが隕石の衝突によるものだとは考えていなかった。

近くに火山帯もあったので、調査開始の15年前に地質調査所が火山だったと判断していた――この判断を下すグローヴ・カール・ギルバードは隕石の衝突によるものだと考えていたけど、クレーター形成に関する知識のない時代で、自らの科学的な判断によって自身の仮説を却下した。

バリンジャーは実際よりも巨大な隕石が衝突したと考えていて、その大部分は蒸発せずに地中にあると思って27年もの間掘り続けた――これによって大金を浪費することにはなるけど、バリンジャーはそれ以前に別の銀鉱でその25倍近い稼ぎを出していた。

メテオ・クレーターの採掘が終わってしばらくしてバリンジャーは亡くなるけど、クレーターの起源についてはすでに立証されていた。

そして57年前、ユージン・マール・シューメーカーによるある形態のシリカの発見によって、最終的にメテオ・クレーターが隕石の衝突によるものだと確認された。

そのシリカは強い圧力を受けた石英を含む石からしか生じないもので、核爆発以外には考えられない――核爆発クレータ―との類似性を明らかにした。

5万年前なので核爆発は考慮されない。

シューメーカーの分析によって、衝突クレーターの概念は正式に認められることになった。

高速で落ちて来た隕石は、衝突の際にすさまじいエネルギーを出す。

それによる衝撃波が円形のクレーターを生む――衝突自体によってできるくぼみなら、進行方向を反映する傾きがあるだろう。

落下した隕石によって地面は急激に押し下げられ、圧縮された部分がその圧力を解放するために押し返す。

物質が跳ね返された衝撃が爆発となってクレーターを生む。

衝突するのが彗星でなければ、一般的に衝突体のぶつかるときの速度は秒速20~25kmくらいだと思われる。

衝突時の爆発によって、衝突体自体はほとんど蒸発する――隕石自体が重ければ、ぶつかられた場所も蒸発する。

強い衝撃によって、希少な構造のシリカができる。

同様に、シャッターコーンと呼ばれる石もできる。

これも核爆発か隕石衝突によってできるもので、尖った石の先端が衝突地点を差す――数mmから数mまでサイズは幅広い。

このほか、高温で形成されるテクタイトとスフェリュールも特徴的な痕跡として残る。

これらは融解した石からできるガラス質のもので、高い圧力がなくてもいい。

火山との区別としては、衝突による場合はニッケル、プラチナ、イリジウム、コバルトなど地表面では少ない物資を含んでいる。

衝突体自体の化学組成も識別に使えるけど、ほとんどは蒸発するので残った欠けらにのみ使える。

ほかに角礫岩も識別に使える。

これは大きな石が小さな粒子でつながっているもので、衝突の衝撃で最初にあった石が粉砕されたことを示唆する。

衝撃溶融ガラスも、高い圧力と高温を必要とするので識別に役立つ――衝突では高密度になる。

クレーターの底にある岩脈やガラス粒子で形成された岩床などは衝突の決定的な証拠になるけど、溶融しているし見つけるのは難しい。

火山の場合はだいたい周囲より高いのに対して、衝突によるクレーターは周囲よりくぼんでいる。

また、衝突の場合周りの盛り上がった部分…リムの地層が逆転している。

これは衝突に後に跳ね返された放出物がひっくり返ったためで、これが確認されれば衝突によるものでほぼ間違いない。

衝突によって地面が圧縮され、その解放から衝撃波の通過までは0.01~0.1秒くらいで起こる。

その後もぶつかられた地面の方は動いていて、リムができ、重力によって収縮する。

クレーターが小さいと、リムが一部崩れて底に堆積する。

そしてその後、角礫岩や溶融物質が穴を埋めていく。

巨大な隕石の衝突だと、ぶつかられた部分も蒸発するので、それらが遠くまで飛んでキノコ雲ができると思われる――荒い粒子はクレーターの周辺に落ちるけど、細かなものは地球全体を覆うように拡散する。

衝突体の直径が1kmを超えるような場合、大気圏に突入してから落下地点までの大気に穴をあけるので、放出物はその真空部分に舞い上がる――クレーターのサイズは20km以上になる。

これらの物質は広範囲に散り、火球が拡散することもあると考えられている――K-Pgの場合、これによってイリジウムを豊富に含む堆積層ができた。

大隕石によるクレーター形成は、中央が盛り上がる――盛り上がった部分とリムの間に、崩れたリムなどが堆積する。

これは衝撃波が伝わる際に不均一な石によってできた別の波が衝撃波を薄めるためで、地中深くの物質が引っ張り上げられる――なので、クレーターの下の地殻が薄くなる。

数秒でくぼんだ地面が、数分で盛り返すと思われる。

大衝突によるものは複雑クレーターと呼ばれ、形成された地面が堆積岩なら2km、火成作用を受けた場所なら4km以上の直径のものであれば、一般的に中央が突出しておりそこは平たん。

そして周囲が階段状になっている。

直径が12kmを超える場合、中央部分が台地になっていたりリング状になっているのもある。

                        

衝突によるクレーターは、ほとんどがこの半世紀の間に発見された――形のほぼ崩れたものは隕石痕と呼ばれる。

見つかるのは地質時代で比較的新しいもので、古いのは痕跡が残っていない――地球の活動で消されるためで、月など活動の活発でない天体には今も古いクレーターが残ってる。

白亜紀と古第三紀の境界にあるイリジウムを含む粘土層付近に、スフェリュールやテクタイトが見つかる――そしてしの下からは生命の名残が豊富に見つかるけど、その上ではまばらになる。

多くの生物に、深刻な影響を与えたと推定できる。

地球の素になった物質も、その周辺の小天体の素になった物質も、基本的には同じだったはずである。

ただ地球のイリジウムは、はるか昔に鉄と一緒に地球の中心に沈んでいったと思われる。

地表面にあるイリジウムは、ほとんどが地球外からのものだと考えられる。

K-Pg境界の薄い粘土層の形成にはそれほど長い時間は必要ないはずだけど、イリジウムの濃度から、これが宇宙から大気内に侵入したものが雨で落とされたと仮定した場合、300万年以上かかると思われる。

50万トン近いイリジウムの体積を説明するには、巨大な隕石が落ちて来たと考えるほかない――超新星による場合も考慮されたけど、この場合に見つかると思われるプルトニウム244は見つからなかった。

さらに精査され、オスミウムとパラジウムの濃度も他の部分より1000倍高いことが分かる――相対的な比率は、推定される地球外物質の存在度と一致した。

イリジウムの含有量などから、白亜紀末期に衝突した隕石は直径が10~15kmという大きさだったと思われる。

さらにダイアモンドも発見され、大きさや炭素同位体比から衝突時に地球で形成されたものだと思われる――隕石が運んだだけの可能性もある。

ある境界層ではアミノ酸も見つかっていて、衝突したのが彗星であったと解釈できる特徴もある。

またスピネルという結晶も見つかっていて、恒温で融解した後に急速に固体化するとできる。

これ自体は火山でもできるけど、主成分に差が出る。

また酸素の量でスピネルのできた場所の推定が可能で、K-Pg境界の場合は20km以下だと思われる――これは薄い層にしか見つからず、大激変が短期間で終わったことを示唆している。

様々な証拠が、白亜紀末期に隕石の大衝突があったことを示唆している。

おそらくエベレストよりも高さのある石のかたまりが、秒速20km以上、彗星なら一般的にもっと速い速度で衝突した。

原爆の10億倍以上のエネルギーが放出され、マグニチュード10の地震が起きたと推定され、衝突地点の地球の反対側でも津波が発生したと思われる。

そして、この衝突でできたと思われる巨大なクレーターが見つかる。

中心部分の真上にあった漁港近くの村から、チクシュルーブ・クレーターと名付けられた。

年代測定の技術は向上しており、現在ではイリジウム層の年代とクレーターの年代測定が3万年の誤差で一致している――6600万年前の年代測定で、これほどの誤差はたんなる偶然だとは考えにくい。

したがってK-Pgの絶滅の主因は巨大隕石の衝突だと考えてほぼ間違いないと思われる。

                                             ――  ・・・

               

「・・・」

途中からついて来たレトリバーが座った。

私がとまったから。

「夜はほとんど寝ているみたいだな」

ポールさんが来た。

「そうですか」

見張りは数人、起きているだろう。

崖の下から来るかもしれないし、油断はできない。

「もう寝てください」

「そうする」

        

そう言ってポールさんは去った。

キッチンに寄って、食事をして寝るだろう。

左右をみる。

右の奥、グリがいる。

今夜も、私たちより先に起きて来ている。

まだノッポさんもいるけど、彼ももう寝る。

左側、橋付近の壁から離れた場所にある小壁に、マッチョさんがいる。

L字の壁の内側に、薄っすら灯りを点けて向こうを注視している様。

おそらくあの明るさだと、向こうからは見えていないだろう。

私は左側の壁にいる。

手すり倒木に乗らないと、向こうは見えない。

木箱テーブルには、昼間太陽光で充電したバッテリーがいくつかと、タブレット。

監視カメラの映像は、あれで確認できる。

「・・・・」

私を見るレトリバーをみる。

りんごは、まだあとで。

「・・・」

すると、足元をみた。

理解しただろうか。

それとも私のポケットから何も出てこなくて、がっかりしたのかな。

木箱イスに向かう・・・・

              ・・・

                                             ヒュルルル   ・・・・・

                      リリリリ リ