赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

超円安時代 1ドル=180円の可能性も

2024-05-02 00:00:00 | 政治見解



超円安時代 1ドル=180円の可能性も :240502情報


円安で損する人と得する人がいます。

個人レベルで見ると、物価は上がるし、旅行にも行きにくくなるし、ガソリンも高くなるし、ただ生きているだけなのにお金がどんどん飛んでいき何にもいいことはない…。メディアはこればかり強調します。

一方、日本の大手企業は、軒並み最高の売上や利益を叩き出しています。「トヨタ43兆円!驚異の売上高」「マツダ、過去最高の営業利益」「任天堂、予想に反し増収増益に」などなど、好調な企業が数多く見られます。この背景には、商品改善やそれに伴う商品の値上げなど企業努力もありますが、その中でも特に大きいのが「円安」による影響です。自動車や電子機器など、モノを輸出する企業にとっては、円安になればなるほど為替益が生まれるからです。

今後の為替動向について、国際経済学者はどうみるか、詳しく解説をそれいただきました。



4月28日の解説

円安ドル高が非常に急テンポで進んでいます。「超円安時代」の到来ということで、詳しく見ていきましょう。

上田日銀総裁のこれまでの発言から、私は1ドル=155円ぐらいを防衛ラインにして財務省日銀当局が介入するかと思っていましたが、やりませんでした。

日銀総裁の会見で繰り返されているのは、極端に、日本の物価高、インフレ率が上がることになったならば、日銀も動くということ。すなわち、金利を上げて円を強くするという動きをとるということを匂わせてきたわけです。実際、これをやると円は弱くなります。

けれども、結局何もやらないということを26日の上田日銀総裁の会見を見た市場参加者が、見切ったわけです。ということで、円安はさらに進み、27日には157円に入り、28日にはもう158円台が定着してしまいました。

こうなると、もう160円の壁はすぐ見えてくるでしょう。私は年内、長く見れば3年ぐらいの間に180円という数字を必ず見ることになると言っておりましたが、もう160円が目の前に迫っています。


◾️トランプ発言を逆読みするとわかること

トランプさんが彼のSNSで面白い発言をしています。「円安ドル高は、アメリカの製造業にとって全面的な大惨事だ」これはその通りで、アメリカにとって、円安・ウォン安は望ましくありません。

また、大統領選挙に向けてトランプさんにとっての非常に大事な地盤は製造業です。バイデンさんと違って、アメリカの製造業をちゃんと保護していく、大事にする、というのがトランプさんのメッセージです。だから、現状に危機を感じるのはもっともなことです。

けれども、アメリカにとって大災害・大惨事とは日本側から見ればどういうことか? 

実は、超幸運の到来ということなのです。トランプさんの発言を裏返しにすると、日本の製造業にとって円安は経済発展のための追い風、素晴らしいニュースです。日本という国は、やはり製造業に基盤を置いている国ですから、これが栄えることは良いことです。

円が安くなると、ドル換算のGDPは減ります。日本のGDPは、今や、チャイナやドイツに抜かれ、やがてインドにも抜かれるかもしれません。けれども、それはどうでもいい、2次的なことです。

見かけのGDPの数字が大きくても日本がデフレ不況で苦しんでいたというのが過去10年以上の歩みです。これからは円が安くなり、日本の中心になる製造業がどんどん儲かり、雇用も良くなる、賃金も上がるという善循環が始まろうとしています。

ですから、日銀も財務省も円安は放っておくといいと思います。これがトランプ発言を逆読みするとわかる、ということなんです。


参考:4月16日時点の解説

1ドル155円となって、明らかに攻防戦の壁があります。

これは為替相場を見られている方は理解できると思いますけど、この壁は必ず破れるのです。日本の当局が介入して守ろうと思っても一時的なことであり、155円当たりまでは来ないだろうと踏んで、オプションの通貨取引が大量に行なわれている壁でもあります。1回破れると円安が更に加速する壁でもあるのです。

155円の壁が破れると180円が視野に入ってくるというのは申し上げておいていいと思います。

しかし、ドルに対する信頼がそれほど揺らいでいるかと言うと、そのようなことはありません。他の通貨との関係を見るとドルも1強体制です。今年に入ってから他の通貨に対してドルは非常に強くなっています。だから、国際通貨としてドルが不安定であるとは言えないし、我が国の円も弱くなっているのです。

円が弱くなっていく理由は、非常に大きな構造が変わったということが言えます。

1970年くらいの1ドル360円の時代から私は50年の円高の時代が終わったと言いたいです。日本が産業国家として競争力・製造業が強いということで物をどんどん輸出して外貨を稼義、日本国が豊かになってくる中で日本国の円がより高く評価されていきました。

一時的には1ドル2桁台になって、1ドル70円台をつけたことが2回くらいあり、瞬間最大風速ですけど1ドル70円を切ったこともあるのです。69円台をついたこともあるのですが、それほど長い時間ではありませんでした。

実は1990年から日本のバブル崩壊が始まって、この30年間は日本の経済は目を見張るものがなかった時代です。特に1994年〜1995年くらいから、明らかにデフレ不況の色が濃くなり、日本経済は辛い思いをしてきました。その間が円高不況です。

日本が実力以上に円が高くなってしまい、製造業の国ですから円を安くして物を海外に売りたいけど売れないということで円高不況に苦しみました。特に黒田元総裁の日銀になってからは「円を安くしたい」という気持ちがあったでしょう。

しかし、安くするには金利を低くすればいいという間違った考え方を持ったので、金利を下げれば下げるほど円はどんどん強くなってしまって、我々の産業経済が苦しむことをやってきたわけです。それが底を打って変わってきたのですが、日本はこの間で高齢化しています。

長い間、日本は世界最大の対外純資産保有国だったわけですが、そろそろ対外資産を切り崩さないといけない時代になってきているのも、高齢化ということが大きいです。

そして、日本の経済の競争力がそれほど強くなくなりました。海外に積み上げてきた資産を徐々に売り払って日本国内に戻すという成熟国家としての、若くてどんどん伸びてきた時代から人口自体の高齢化も始まったのです。

更に日本では既に人口ボーナスがマイナスになって、人口オーナス状況となって働く人より働かない若い人とご老人の数が増えています。当然そうなると、産業界の活力も競争力も衰える国になってきて、これだけでも本来は円安が進むわけです。

特に今まで、海外に積み上げてきた対外純資産は増えてきたのですけど、それを売り払って国内へ徐々に戻していかないといけません。貿易赤字が経常化しています。かつての日本から見たら信じられないような状況です。大昔の日本で、東京オリンピックの前くらいまでは貿易赤字でした。それから超貿易黒字国になって、あとは経常収支も黒字になっていたのです。

昨今は貿易赤字が大きいですから、経常収支も赤字という時代にだんだんなってくると思います。こうなると、稼ぐお金よりも海外に出ていくお金が多いということですから当然、円通貨は弱くなっていくでしょう。ここには非常に大きな流れがあるわけです。


中国は日本が悪かった30年間良かったのですけど、高齢化は日本以上のスピードで進んでいます。中国は正確な人口統計がないのですけど、2010年くらいから人口ボーナスから人口オーナスに転じていたのではないでしょうか。

しかし、日本もこれからは円安が構造的に続くと思います。でも円安になると、製造業の国ですから海外へ物を売りやすくなりますので、そしたら少しは稼げるようになるかもしれません。そうなったら極端な国内の不況は避けられるということです。

それでも輸入インフレの問題などもありますから、高度成長時代のようになるということは言えませんが、円が安くなることによって製造業の輸出が順調になるということで日本経済は一息も二息もつけるでしょう。

だから、国内において円建てでもらう我々のお給料は、これから増えていく時代になるから問題ありません。ところが現在の植田日銀は金利を正常化するために上げてきます。日銀の思惑としては、通貨をあまり安くしたくないし、自国の通貨の価値は高い方がいいという考えがありますから、円高にしたいと思っているのです。

円高にするためには金利を上げたらいいと思っています。金利が高い通貨は強くなるという天動説のようなものを信じているのです。

これを通常に戻していって、円を強くするために金利を上げると言っているうちに、円はどんどん弱くなっていきます。これは債券相場を中心にお金が動くと、そういうことになるのです。

かつては金利をどんどん下げたら円が弱くなるはずだと思っていて、下げ続けても弱くならず逆に強くなってくるから疑問を持ち続けながらやっていました。そのようなことを考えていたら、日本が長期の不況に陥ってしまったわけですが、この逆現象が起きます。日銀は金利を上げてくるのだから円は強くなると思ったら、おかしいと言っているうちに円がどんどん弱くなっていくという状況です。

しかし、かつての円高不況と逆ですから、今度は円安好況になります。日本経済を助けてくれるプラスの効果の方が遥かに大きいですから今回は心配いりません。しかし、日銀の思惑とは逆に円安が進むということになると思います。これがまさに長期的に円安が進んでいく理由ということです。

そうすると他のところで、いろんなことが起きると思いますけど、今の1ドル155円の手前から1ドル180円になると言うと、皆さんは「まさか」と思われるかもしれませんが、この値動きを見ていてください。1ドル180円をつける日がやがて来るでしょう。

すぐに180円つけなかったとしても、180円くらいまで行くということを皆さんが思われるタイミングがもうすぐ来ると思います。それだけ大きく為替は動くのです。だからこそアメリカ株への投資など、ドル建ての資産は日本人にとって大事になってくると思います。



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