赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

武器輸出国とISテロ コラム(81)

2015-11-21 00:00:00 | 政治見解



コラム(81):武器輸出国とISテロ


国連常任理事国の裏の顔

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の2014年度報告では、武器輸出国ランキングは、アメリカ、ロシア、中国、ドイツ、フランス、イギリス、スペイン、イタリア、ウクライナ、イスラエルの順となっています。

上位6カ国はドイツを除き国連の常任理事国が占めています。常任理事国自らが紛争やテロの種をばら撒いていることになります。


複雑な中東情勢

中東情勢が理解しにくいのは、国家同士がイスラム教シーア派とスンニ派で反目し、さらに、国内では細分化された宗派と部族集団が混在し、融合していないことに起因します。その上、石油の権益をめぐる争いとイスラエル問題がかみ、事態を一層複雑化させているのです。


ISを支援する国々

全人口180万人の石油産出国カタールは、スンニ派のISに対し、ドイツ、ロシア、フランスから輸入した武器を積極的に提供しています。また、カタールは反イスラエル勢力のハマス(スンニ派)にも援助しています。

サウジアラビアもIS支援国です。7月には、ISにつながりがある組織のメンバー431人を逮捕したとの報道がありましたが事実ではありません。国内対策のための嘘の報道で、今でもISを援助し続けていることに変わりはありません。

宗教とは無関係にISを支援している国として中国が挙げられます。ISの支配地域の石油を中国が買っています。大量の石油の買い入れが結果的にISへの資金援助につながっていることは紛れもない事実です。密輸ルートはイラン、イラクの国境付近にあるようです。


ISを育てたアメリカ

シリアの現政権は反米親露であることから、アメリカは反政府運動を支援するため、ISなどとも秘かに関係を持っていました。

また、かつてソ連に抵抗するために組織されたイスラム原理主義のアルカイダはCIAとサウジアラビアが支援していました。しかし、アルカイダにしろ、ISにしろ今では反米テロを宣言しているのです。

このような複雑な利害がからんでいる中で、仮に欧米とロシアが手を組んでIS殲滅を計画しても、次々に新しいテロの芽が出て、ますますテロへの脅威が続くことになります。


日本の武器輸出三原則

このようにISテロは、実際には大国のエゴイズムで作り出されたものです。大国が欲望のために、一国を意のままに操ろうと武器や資金を援助したために、結果的に自国へのテロとなって跳ね返ってきたのです。武器輸出国はその厳然たる事実を真摯に受け止めるべきです。

一方、先進国の中で武器の輸出を厳格に規制している国は日本だけです。2014年に武器輸出規制の一部緩和をしましたが、次の三つの条件をつけています。

1.国連安保理決議や国際条約に違反する場合や、紛争当事国へは輸出しない。
2.輸出を認め得る場合として「平和貢献や日本の安全保障に資する場合に限定し、透明性を確保し厳格審査する」。
3.輸出の際に「原則として目的外使用と第三国移転について日本の事前同意を相手国政府に義務付ける」。

現在のテロに翻弄されている国際環境下では、段階的な手法として日本の定めた三原則に準拠した国際条約を締結し、テロや紛争の拡大を阻止することが先決ではないかと思います。

70年もの間、平和を保ってきた日本は、それを国際社会に呼びかけることのできる唯一の国家であると考えています。



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